1 弁護士法72条の『法律事務』
2 条文規定における『法律事務』の例示
3 『法律事務』の解釈
4 『法律事務』に該当する行為の具体例

1 弁護士法72条の『法律事務』

弁護士法72条では,弁護士以外の者が法律事件に関する法律事務を行うことが禁止されています。
詳しくはこちら|非弁護士の法律事務の取扱禁止(非弁行為)の基本(弁護士法72条)
禁止される行為である『法律事務』の意味については,細かい解釈が分かれています。
本記事では,弁護士法72条の『法律事務』の解釈論について説明します。
なお,法律事件法律事務とは別の意味(解釈論)です。
詳しくはこちら|弁護士法72条の『法律事件』の解釈(事件性必要性と不要説)

2 条文規定における『法律事務』の例示

まず,条文の中に『法律事務』の具体例が示されています。

<条文規定における『法律事務』の例示>

鑑定・代理・仲裁・和解(その他の法律事務)
※弁護士法72条

3 『法律事務』の解釈

『法律事務』として条文に示されている文言の最後に『その他の法律事務』と記載されています(前記)。
結局,どこまでが『法律事務』といえるのか,という明確な基準は示されていないのです。
そこで,いくつかの見解があります。

<『法律事務』の解釈>

あ 裁判例による解釈

弁護士法72条の『(その他の)法律事務』について
→法律上の効果を発生,変更する事項の処理をいう
※東京高裁昭和39年9月29日
※東京地裁昭和38年12月16日

い 日弁連の見解

『あ』に加えて
法律上の効果を保全,明確化する事項の処理も含む
例=確定した事項を契約書にする行為
※日本弁護士連合会調査室編『条解弁護士法 第4版』光文堂2007年p621

4 『法律事務』に該当する行為の具体例

ここまでの説明はちょっと抽象的なので分かりにくいと思います。実際に『法律事務』に該当すると判断された具体例をまとめて紹介します。

<『法律事務』に該当する行為の具体例>

あ 債権回収

債権取立の委任を受けて行う請求・弁済の受領・債務の免除
※福岡高裁昭和28年3月30日
※最高裁昭和37年10月4日

い 自賠責保険の請求

自動車損害賠償責任保険金の請求,受領の行為
※東京高裁昭和39年9月29日

う 損害賠償に関する交渉

交通事故の相手方との示談交渉
※札幌高裁昭和46年11月30日
※串本簡裁昭和63年11月22日

え 建物明渡と地目変更手続

建物立退交渉・実現,地目の転用・変更手続など
※横浜地裁昭和59年10月24日

お 賃貸建物の立退交渉

建物賃貸借契約の解除・賃借人の立退交渉
※広島高裁平成4年3月6日

か 登記手続

真正な登記名義を回復する登記手続
※東京地裁平成6年4月20日

以上の実例は,前記の見解のいずれでも『法律事務』に該当すると判断されやすいものです。
日弁連の見解は,これらの実例よりも広い範囲を禁止することになります。