【非弁護士との提携(非弁提携)の禁止(弁護士法27条)】

1 非弁護士との提携の禁止(弁護士法27条)
2 非弁提携の禁止の規定
3 『周旋』の解釈
4 周旋を『受ける』行為の内容(解釈)
5 弁護士法27条違反行為の効力
6 弁護士法27条違反が適用された実例

1 非弁護士との提携の禁止(弁護士法27条)

弁護士法72〜74条違反をした者には刑事罰が適用されます。
詳しくはこちら|非弁護士の法律事務の取扱禁止(非弁行為)の基本(弁護士法72条)
さらに,このような行為を撲滅するために,重ねて,関与する弁護士の側も刑罰をもって抑止するというルールがあります。
これが,弁護士法27条の非弁提携の禁止です。
本記事では,この規定について説明します。

2 非弁提携の禁止の規定

まず,非弁提携を禁止する弁護士法27条の条文と,違反した弁護士に適用される罰則をまとめます。

<非弁提携の禁止の規定>

あ 条文規定

(非弁護士との提携の禁止)
弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
※弁護士法27条

い 弁護士法人への準用

『あ』の規定は,弁護士法人にも準用されている
※弁護士法30条の21

う 違反に対する罰則

法定刑=懲役2年以下or罰金300万円以下
※弁護士法77条1号

3 『周旋』の解釈

非弁提携として禁止される行為の具体的内容(構成要件)は,非弁行為などをする者から周旋を受けることと規定されています。
この周旋は,主に紹介ですが,詳しい解釈論をまとめます。

<『周旋』の解釈>

あ 弁護士法72条の解釈の流用

弁護士法27条の『周旋』について
→弁護士法72条の『周旋』と同様と考えられる
※日本弁護士連合会調査室編『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p223

い 弁護士法72条の『周旋』(概要)

依頼を受けて,訴訟事件などの当事者と鑑定,代理,仲裁,和解などをなす者との間に介在し,両者間における委任関係その他の関係成立のための便宜を図り,その成立を容易ならしめる行為をいう
※名古屋高裁金沢支部昭和34年2月19日

4 周旋を『受ける』行為の内容(解釈)

禁止される行為は,周旋を受けることです。
これは,受諾する意思表示のことです。逆に,紹介(周旋)を受けることだけを承諾しただけで違反が成立します。

<周旋を『受ける』行為の内容(解釈)>

あ 基本的な解釈

周旋を『受け』の意味について
受諾する意思表示をすることである
明示・黙示を問わない
受諾の意思表示がないと違反に該当しない

い 関連する事項の解釈

現実に,委任契約などの契約関係が成立するに至らなくても該当する
弁護士側から『周旋』を依頼していなくてもよい
弁護士側には『弁護士法72〜74に違反している(者の周旋がある)』という認識があれば該当する
※日本弁護士連合会調査室編『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p223

5 弁護士法27条違反行為の効力

弁護士が,非弁行為をする者から案件の紹介を受けると非弁提携の禁止に違反することになります。
刑事罰(前記)が適用されるのとは別に,弁護士が行った行為の効力の問題もあります。
交渉や訴訟の効果のことです。
相手方や裁判所などの関係者は実際の弁護士による行為なので,信用します。つまり,依頼に至った経緯に不正があったかどうかをいちいち疑うようなことはしません。
このような信頼を保護するために,私法上や訴訟法上の効果は,有効とする傾向が強いです。

<弁護士法27条違反行為の効力>

あ 私法行為の効力

弁護士法72条に違反する行為について
相手方の信頼を保護する必要がある
→私法上の効力は生じる(有効)と考える

い 訴訟行為の効力

弁護士法72条に違反する行為について
訴訟手続の安定が要請される
→訴訟法上の効力は生じる(有効)と考える
※日本弁護士連合会調査室編『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p225

6 弁護士法27条違反が適用された実例

実際に弁護士法27条違反に該当すると判断(公表)されるケースは少ないです。
裁判例として示されている実例を紹介します。
違反となったポイントは,そのエリアで有名な事件屋であったというところです。
逆にいえば,このような特殊な事情がないケースでは実際に弁護士法27条違反として検挙される(または懲戒処分がなされる)ことは少ないといえるでしょう。

<弁護士法27条違反が適用された実例>

あ 事件の紹介と訴訟の委任

農地解放により農地の売り渡しが行われた
その登記の際誤った者の所有名義に登記がなされた
そこで,A・Bは,その抹消登記手続をする必要があった
Aの関係者はCに過去に工場敷地の登記関係の仕事を依頼していた
A・BはCに対し弁護士の斡旋を依頼した
A・Bは,Cの推薦によりCを通じて弁護士Dに訴訟代理を委任した
弁護士Dは所有権移転登記抹消手続等請求の訴を提起した

い 紹介者の弁護士法72条違反該当性

Cは弁護士でないのに報酬を得る目的で法律事務を取扱いまたは周旋することを業としていた
当該エリア(高岡方面)ではいわゆる三百として風評ある人物であった
弁護士Dは,以前よりCと面識があり,Cがいわゆる事件屋であることを知っていた

う 弁護士の弁護士法27条違反該当性

弁護士Dの行為は弁護士法27条の非弁護士との提携禁止違反に該当する

え 懲戒処分の内容

(他の事由も含めて)
業務停止1年間
(の結論を維持した)
※東京高裁昭和38年1月31日

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