【業としての権利の譲受と実行の禁止(弁護士法73条の全体像)】
1 業としての権利の譲受と実行の禁止(弁護士法73条)
弁護士法73条は権利の譲り受けと実行を業としてすることを禁止しています。
これは、弁護士法72条(非弁護士の法律事務)と並ぶ、(弁護士以外の)一般の方を対象とする規制です。
本記事では、業としての権利の譲受と実行の禁止の規定の基本的な内容や全体像を説明します。
2 業としての権利の譲受と実行の禁止の規定
まず、弁護士法73条の条文の規定を押さえておきます。
また、違反については刑事罰があります。つまりこの規定違反は犯罪となるのです。
業としての権利の譲受と実行の禁止の規定
あ 条文規定
何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。
※弁護士法73条
い 違反への罰則
ア 構成要件弁護士法73条の規定に違反した
イ 法定刑懲役2年以下or罰金300万円以下
※弁護士法77条4号
う 特別法による適用除外
サービサー法による適用除外がある
弁護士法72条、73条の特例である
※サービサー法1条
3 業としての権利の譲受と実行の禁止の趣旨
弁護士法73条の規定の趣旨を大雑把にいうと、訴訟や紛争が過剰に増えないようにするというものです。
弁護士法72条と似ているところもありますが、別の目的(趣旨)です。
業としての権利の譲受と実行の禁止の趣旨
あ 禁止の趣旨(目的)
弁護士でない者が、権利の譲渡を受けることによって
みだりに訴訟を誘発したり、紛議を助長したりするほか、弁護士法72条本文の禁止を潜脱する行為をして
国民の法律生活上の弊害が生ずることを禁止する目的である
※最高裁平成14年1月22日
※東京高裁平成3年6月27日;同趣旨
い 沿革(過去の規定)
(旧)法律事務取扱取締法2条をそのまま踏襲した
→解釈は弁護士法73条と共通する
本記事の裁判例は法律事務取扱取締法2条についてのものも含む
う 弁護士法72条本文の禁止(参考)
弁護士でない者が法律事務などを取り扱うことは禁止されている
詳しくはこちら|非弁護士の法律事務の取扱禁止(非弁行為)の基本(弁護士法72条)
この趣旨を示したのは、最判平成14年1月22日です。この判決が何をどう判断したのかは、別の記事で説明しています。
最判平成14年1月22日|ゴルフ会員権の預託金返還請求と弁護士法73条
4 弁護士法73条と28条との関係(比較)
ところで、弁護士法73条と似ている規定として弁護士法28条があります。
弁護士法28条は係争物を弁護士が譲り受けることを禁止する規定です。
この2つは勘違いしやすいところですので、違い(比較)を整理しておきます。
弁護士法73条と28条との関係(比較)
あ 弁護士法28条の規定(概要)
弁護士は係争権利・係争の目的物を譲り受けることはできない
※弁護士法28条
詳しくはこちら|弁護士が『係争物を譲り受ける』のは原則禁止・特殊事情で適法
い 弁護士法73条との違い
| 比較項目 | 弁護士法28条 | 弁護士法73条 |
| 対象者 | 弁護士のみ | 限定なし |
| 紛争性 | 紛争性が必要 | 条文上では不要(※1) |
| 業として | 『業』は不要 | 『業』のみが禁止 |
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第5版』弘文堂2019年p677
※1 弁護士法73条における紛争性の要否は別の記事で説明している
詳しくはこちら|弁護士法73条の各要件(文言)の解釈(成立するかどうか)
5 弁護士法73条違反の行為の効力
弁護士法73条に違反すること自体で、罰則の対象となります(前記)。
これとは別に、該当する譲渡(売買)や権利行使(金銭の請求行為など)の効力がどうなるか、という問題もあります。
現在では、私法上も無効となるという見解が一般的です。
弁護士法73条違反の行為の効力
あ 見解の分布
有効と無効の両方の裁判例がある
有効とする裁判例は法律事務取扱取締法に関する古いもののみである
現在では無効という解釈が一般的である
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第5版』弘文堂2019年p686
い 無効とした裁判例
鹿児島地裁昭和38年10月10日;賃借権の譲受
福岡高裁宮崎支部昭和60年9月4日;土地の譲受
東京高裁平成3年6月27日;債権の譲受
う 有効とした古い裁判例
広島区判昭和11年5月14日
東京区判昭和11年7月30日
6 弁護士法73条の各要件(文言)の解釈(概要)
いろいろな財産(権利)を購入した後に、購入した物に関するトラブルを解決するということは実際によくあります。
そのため実際には弁護士法73条に該当して違法となるかどうかがはっきりしない状況は多くあるのです。
そこで、弁護士法73条の要件(条文の文言)に関する解釈にはいろいろなものがあります。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|弁護士法73条の各要件(文言)の解釈(成立するかどうか)
7 弁護士法73条違反が判断された裁判例(概要)
弁護士法73条に該当するかどうかに関する要件にはいろいろな解釈があります(前記)。
しかし解釈はある程度抽象的なので、結局、具体的事案について明確に判断できるとは限りません。
実際に裁判所が判断した具体的事例を把握する方が分かりやすいです。
実例については別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|弁護士法73条違反の判断をした裁判例の集約
8 民事的トラブルにおける弁護士法73条の活用
弁護士法73条の規定本体は、違反する行為に刑事罰が適用されるというものです。
法律的な効果として活用しやすいのは、刑事罰ではなく民事的(私法上の)効果です。
前記のように、弁護士法73条に該当する行為は民事的に無効となるのです。
請求を受けた側としては、相手(請求者)の背景によって、請求を無効化するという主張がありえるのです。
最終的に裁判所が認めるかどうかとは別に、交渉や訴訟上の主張の攻防で有利に働くことがあります。
本記事では、弁護士法73条に関する全体的な説明をしました。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


