小保方氏の依願退職→退職金はないが調査は続く|STAP問題
1 理研の退職金|『任期制』は退職金制度自体がない
(1)理研の任期制職員には退職金が出ない
小保方さんが自主的に『退職』するということが報道されています。
正式には『依願退職』と言います。
一般的に退職した時に『退職金(退職手当)』が支給されることがあります。
具体的には、就業規則や労働契約による設定で決まります。
『有期雇用』(後述)『年俸制』などの類型とは関係なく、就業規則や労働契約で決められます。
小保方氏の場合、理研の『任期制職員就業規程』が適用されます。
理研|任期制職員就業規程
(依願退職)
39条 任期制職員が退職を希望するときは、退職しようとする日から1ヶ月前までに所属長に退職願を提出しなければならない。
(退職金)
41条 任期制職員が退職するとき、退職金その他一時金は支給しない。(略)
外部サイト|理研|任期制職員就業規定
結局、退職金のルール自体が適用されません。
『退職の仕方』、具体的には懲戒解雇・通常解雇・諭旨解雇・依願退職などの種類とは関係なく退職金は支給されないのです。
(2)『任期制職員』とは『有期雇用』のことである
『任期制職員』は『有期雇用』のことです。
なお『有期雇用』は労働基準法でしっかりした『上限』が設定されています。
有期雇用の『上限』ルール
原則=上限3年
『博士号ホルダー』など=上限5年
小保方氏は『博士号(学位)』の存在の有無自体が『未確定』という状態です。
これは法的な理論として不安定な状態です。
有期労働契約|上限3年/5年|無期転換・雇い止め規制・無期との差別禁止
早稲田大学が小保方氏に『猶予付き博士学位取消』の決定|STAP問題関連
2 参考|一般的な『退職金ルール』ではフォルトがあると『支給対象外』となる
以下、参考として一般的な退職金ルールを説明します。
ちょうど、理研の場合『定年制職員』についてのルールがごく平均的な設定となっています。
小保方氏の件では適用されませんが、一般的なルールとして説明を加えます。
『定年制』の場合は『退職金』の制度自体はあります。
ただし、退職に一定の『フォルト』がある場合は例外的に『支給しない』ことになります。
仮に支給後に『フォルト』が発覚した場合でも『返納』が必要になります。
理研|定年制職員退職金規程
(退職手当の支給基準)
2条 退職手当は、職員が退職した場合には、その者に(略)支給する。ただし、職員が次の各号の1に該当する場合には退職手当は支給しない。
(1)勤続6月未満の退職
(2)定年制職員就業規程による懲戒解雇
(3)禁錮以上の刑に処せられたことによる退職
(略)
(退職手当の支給の一時差止め)
6条(略)
2 退職をした者に対しまだ退職手当が支給されていない場合において、次の各号のいずれかに該当するときは退職手当の支給を一時差し止めることができる。
(略)
(2)当該退職者の基礎在職期間中の行為に関し、懲戒解雇を受ける事由に相当する行為があったことを疑うに足る相当な理由があったとき。
(退職手当の返納)
6条の4第
(略)
2 退職をした者に対し退職手当の支給をした後において、その者が基礎在職期間中に懲戒解雇又は諭旨退職を受ける事由に相当する行為があったことが明らかになったときは、当該退職者の生計の状況を勘案して退職手当の全部又は一部を返納させることができる。
理研|定年制職員退職金規程
3 『退職金』の関係では『懲戒事由』の調査は不要→社会的には必要
小保方氏の退職については、『退職金』の有無の判断は必要ありません。
『退職金』という個別的な問題としては、『懲戒事由』の調査は不要ということです。
しかし、『研究の不正』に関しては理研の責任、今後の改善に関わる重要な事項です。
この点、下村文部科学大臣も、論文の不正についての今後の調査を促す趣旨のコメントをしています。
『退職金』とは関係なく研究・論文内容の調査は継続するはずです。
ただ、小保方氏は既に理研を退職しています。
小保方氏自身の雇用契約に関わる地位や権利に影響がない状態です。
『見解の相違→交渉・裁判』ということに発展することはありません。
4 STAP論文・研究不正の全体を振り返って|組織として止められたはず
STAP論文の疑惑発覚後の動きを振り返ってみます。
理研の研究不正の判断に対して小保方氏が『不服申立』をしたところがターニングポイントでした。
結局、不服申立に対する理研の判断は『研究不正』という判断を維持するものでした。
その後、懲戒解雇となれば、改めて裁判で『解雇の有効性≒研究不正の有無』が判断されるに至ったはずです。
しかし、依願退職がなされたので、『司法判断』自体が回避された状態です。
結局『何もしなかった方が良かった』とも考えられます。
不服申立を中心として『争う行為』をしたことによる効果は『大規模な報道→話題性を大きくした』というものです。
悔やまれる笹井氏の事件もそうですが、それ以外にショックを受けている方も多いでしょう。
小保方氏自身もとてつもないショックを受けている1人です。
実験ノートを始めとした多くの事情・資料からは、疑惑の発覚の当初から『予想できたこと』は多いです。
研究・論文作成は1人だけで行ったわけではありません。
多くの優秀な方が関わっていたので、『研究・論文の発表・公表』は『回避可能であった』はずです。
さらに、疑惑発覚後も『実益のない騒動を最小限に抑える』ことは可能であったはずです。
もちろん『研究の体制・ルール作り→将来に活かす』ということは重要ですし、現在も行なわれています。
過去のことは変えられませんが、各段階で『組織として』ベターな対応があったはず、という悔いが残ります。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


