【後遺症の損害賠償;損害の内容,症状固定,診断書,治療費の扱い】

人身事故で後遺障害が残りました。
被害者が請求できる損害賠償にはどのようなものがありますか。
治療における注意点はありますか。
「後遺症」が残った場合の損害の内容については類型化されています。
治療の際は「症状固定」,「診断書の記載」が重要です。
不十分な判断,記載がなされると,後から修正,訂正することが困難です。

1 後遺症が生じた事故における損害の内容
2 後遺症の事故においては症状固定の判断,後遺障害診断書の作成が非常に重要
3 症状固定の状態を正確に後遺障害診断書に記載してもらうことが重要
4 症状固定後は治療費としてカウントされない

1 後遺症が生じた事故における損害の内容

後遺症が生じた事故においては損害の内容が重要です。
また,請求する手続のやり方によって最終的な交渉や訴訟の結果に影響が生じることもあります。
後遺症が生じた場合の損害の大まかな内容は次のとおりです。

<後遺症に関する損害の内容>

あ 財産的損害賠償

・治療費
・付添人費用
・通院交通費
・休業損害
・逸失利益

い 精神的損害賠償

・入院・通院慰謝料
 →入院や通院を余儀なくされたことによる精神的な苦痛に対する責任
・後遺症慰謝料
 →後遺障害を負ったことによる精神的な苦痛に対する責任

2 後遺症の事故においては症状固定の判断,後遺障害診断書の作成が非常に重要

症状固定とは>

治療を施しても現在よりも良くならない状態

症状固定は,いわゆる完治とは違います。
被害者がまだ治っていないと感じる場合でも症状固定になる場合があります。

もちろん,症状固定は医師が最終的に判断します。
しかし実際には,医師から患者本人から事実上ヒアリングします。
協議する,というような実態です。
例えば『もう状況が一定になっている感じなので症状固定にしましょうか?』というような会話です。

実際に,さらに悪化する状態=治療継続が望まれる,という状態で,症状固定ということにしてしまうケースもあります。
いずれ治るだろうと思って,症状固定を前倒しすれば,交渉(示談)は早く進むでしょう。
しかし,治療,賠償の範囲,が不十分なまま,となってしまうリスクがあります。
この場合,後からさらに症状が悪化したとしても,交渉のやり直しができなくなる可能性があります。

症状固定の判断についていい加減に考えたり,焦ったりすることは避けるべきです。

3 症状固定の状態を正確に後遺障害診断書に記載してもらうことが重要

症状固定の際は,診断書には固定した症状をしっかりと記載してもらうことも重要です。
後遺障害診断書と呼ぶこともあります。

「症状固定」とは,文字どおり一定の症状が固定した=今後も継続するという意味です。
どのような状態(症状)が固定した=今後も後遺症として残る,のか,という固定した内容が重要です。

これにより,後遺障害等級の認定において,きちんと適正な等級が認定されるかどうかが違ってくるのです。
逆に言えば,多少軽い内容で記載されてしまった場合には,後から修正することが困難になります。

認定された等級が適正ではなかった場合の対処は別に説明しています。
<→別項目;後遺障害等級認定

4 症状固定後は治療費としてカウントされない

治療費としてカウントされるのは,一般的には完治までです。
当然,「症状固定」は完治ではありません。
後遺症という言葉どおり,後に残るのです。

その後も通院なり,治療が必要であることもあります。
しかし,症状固定時に損害を確定させる,という基本的な考え方があります。
そこで,治療費としては,症状固定時で終了,という扱いが一般的です。

この場合,症状固定後の出費,負担は治療費としてではなく,後遺障害慰謝料・逸失利益という損害に含めることが可能です。

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