1 無利息での金銭貸借は課税リスクがある
2 無利息での金銭貸借×課税;(貸,借)=(個人,個人)
3 無利息での金銭貸借×課税;(貸,借)=(個人,法人)
4 無利息での金銭貸借×課税;(貸,借)=(法人,個人)
5 無利息での金銭貸借×課税;(貸,借)=(法人,法人)

1 無利息での金銭貸借は課税リスクがある

金銭の貸借で生じた金利については利子所得として所得税が課せられます。
当然,無利息の場合は利子所得は生じません。
しかし,『本来であれば生じたはずの適正水準の金利』を想定し,この金利相当額が無償で移転した,として税務上扱われることがあります。
その場合,贈与税所得税法人税の対象となりことがあります。
具体的には,貸主や借主が個人なのか,法人なのか,ということにより扱いが異なります。
結論としての対応関係だけ示しておきます。

<無利息での金銭貸借×課税;まとめ>

↓貸主|借主→ 個人 法人
個人 ←(連帯納付義務)|贈与税↑ なし
法人 ←法人税|所得税↑ ←法人税|法人税↑

2 無利息での金銭貸借×課税;(貸,借)=(個人,個人)

<結論>

『みなし贈与』として,贈与税の課税対象となる
ただし非課税とする扱いも多い

税務上は,本来であれば渡されるべき適正水準の利息相当の金銭が無償で移転したという考え方がとられます(みなし贈与;相続税法9条)。
いわば,一旦利息が支払われ,その後,その利息を,貸主が借主に贈与した,という構図です。
このように,個人間の贈与,とみなされるわけです。
具体的には,借主に贈与税が生じ,借主はこの連帯納付義務を負う,ということになります。

ただ,親族・知人間で一時的に金銭の貸し借りが行われる,ということは常識的に合理的ということも多いです。
そこで,通達上でも非課税とすることを許容する方向性であることが明記されています(相続税基本通達9−10)。
実務上は,金利相当額が少額であったり,また,貸付から返済までの期間が短い,などの小規模の場合は,非課税と認めることが多いです。

3 無利息での金銭貸借×課税;(貸,借)=(個人,法人)

<結論>

課税関係は生じない

本来であれば渡されるべき適正水準の金利相当の金銭について無償で移転したと税務上扱う一般論があります。
そうすると,何らかの課税関係が生じるのが一般です。
しかし,まず,貸主(個人)については,課税関係が生じません。
みなし贈与,と同じ利益関係なのですが,贈与税は個人同士のみ,です。
贈与税は生じようがないのです。従って,贈与税の連帯納付義務も生じません。

次に,借主(法人)は,無償で金利相当分の利益を受け取ったという利益関係です。
法人税法上,無償による役務の『提供』は,益金の1つとして規定されています(法人税法22条2項)。
しかし,『もらう側』は規定がありません。
いわば無償による役務の『譲受』ということになるはずですが,条文上,このような規定はありません。
結局,借主(法人)にも課税関係が生じない,ということになります。

4 無利息での金銭貸借×課税;(貸,借)=(法人,個人)

<結論>

貸主→法人税(益金)
借主→所得税

税務上,本来であれば渡されるべき適正水準の金利相当の金銭について無償で移転したと扱う一般論があります。
いわば,一旦利息が支払われ,その後,その利息を,貸主が借主に贈与した,という構図です。

まず,貸主(法人)については,(最初に)利息を受け取ったという部分で課税関係が生じます。
具体的には,法人税法上の益金としてカウントされます。
結果的に,法人税の課税対象となります。

次に,借主(個人)については,利息相当分の金銭が貸主から贈与されたということになります。
ここで,贈与税は個人同士だけでしか適用されません。
結局,所得の1つとしてカウントされます。
通常は雑所得となります。
借主(個人)が貸主(法人)の従業員,という特殊なケースでは,給与所得となります。
いずれにしても,借主(個人)については,利息相当分について所得税の対象となるのです。

5 無利息での金銭貸借×課税;(貸,借)=(法人,法人)

<結論>

貸主,借主ともに,法人税法上の益金として扱われる

税務上,本来であれば渡されるべき適正水準の金利相当の金銭について無償で移転したと扱う一般論があります。
いわば,一旦利息が支払われ,その後,その利息を,貸主が借主に贈与した,という構図です。

まず,貸主(法人)については,(最初に)利息を受け取ったという部分で課税関係が生じます。
具体的には,法人税法上の益金としてカウントされます。
結果的に,法人税の課税対象となります。

次に,借主(法人)については,利息相当分の免除を受けた(金利相当分の金銭の贈与を受けた)という部分について課税関係が生じます。
貸主と同様に,法人税法上の益金としてカウントされるのです。

条文

[相続税法]
第九条  第五条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。

[法人税法]
(各事業年度の所得の金額の計算)
第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2  内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3~5(略)

判例・参考情報

[相続税基本通達]
(無利子の金銭貸与等)
9-10 夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、無利子の金銭の貸与等があった場合には、それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式をとったものであるかどうかについて念査を要するのであるが、これらの特殊関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。