【特商法による連鎖販売取引(マルチ商法)の規制の全体像(行政規制・民事規制)】
1 特商法による連鎖販売取引の規制の全体像
2 行政規制の内容(種類)
3 行政規制の効果(違反の効果)
4 民事規制
5 無限連鎖講(ねずみ講)との違い(概要)
1 特商法による連鎖販売取引の規制の全体像
ピラミッド型の会員組織によって商品の販売が行われるシステムが普及しています。マルチ商法とかMLMとか呼ばれています。このような販売手法は特商法の規制を受けます。規制を受ける取引は連鎖販売取引として特商法で細かく規定(定義)されています。
詳しくはこちら|マルチ商法=連鎖販売取引=適法だが規制あり|ねずみ講=無限連鎖講=違法
連鎖販売取引に該当する取引には,いろいろな規制が適用されます。なお,許認可が必要(参入規制)というわけではありません。
本記事では,連鎖販売取引に適用される規制の全体像を説明します。
2 行政規制の内容(種類)
連鎖販売取引に適用される規制を大きく分けると,ルールを破ると行政的なペナルティを受けるもの(行政規制)と,買主(取引相手)を保護するために,一定の状況で取引が解消されるもの(民事規制)に分けられます。
このうち,行政規制は,さらに広告規制,開示規制,行為規制の3つに分けられます。
<行政規制の内容(種類)>
あ 広告規制
広告の表示義務 | 特商法35条 |
誇大広告などの禁止 | 特商法36条 |
電子メール広告規制 | 特商法36条の3 |
い 開示規制
書面の交付 | 特商法37条 |
う 行為規制
氏名などの明示 | 特商法33条の2 |
禁止行為 | 特商法34条 |
指示対象行為 | 特商法38条,規則31条 |
3 行政規制の効果(違反の効果)
前記のような,いろいろな行政規制の違反がある場合には,いろいろなペナルティ(違反の効果)が発生します。
基本的には行政処分が主なものです。行政処分に従わないような悪質なケースでは,刑事罰が課せられます。また,書面交付義務を守らないケースでは,結果的にはクーリング・オフ期間が終了しないということになります。実質的なペナルティともいえます。
<行政規制の効果(違反の効果)>
あ 行政処分
指示 | 特商法38条 |
業務停止命令 | 特商法39条 |
い 刑事罰
懲役・罰金・過料が規定されている
※特商法70条,70条の3,71条,72条
う 民事規制との関係
書面の交付義務の不履行について
→クーリング・オフの権利行使期間が進行しない(後記)
4 民事規制
連鎖販売取引の規制のうち,民事規制の内容をまとめます。要するに取引を解消(キャンセル)する制度のことです。
<民事規制>
時期or要件 | 解消の手段 | 根拠 |
書面受領日から20日以内 | 申込撤回・契約解除(クーリング・オフ) | 特商法40条 |
書面受領日から20日経過後 | 中途解約 | 特商法40条の2 |
不実告知・重要事項の不告知 | 意思表示の取消 | 特商法40条の3 |
5 無限連鎖講(ねずみ講)との違い(概要)
ところで,ピラミッド型の会員組織で,取引自体が違法(犯罪)となるものもあります。金銭(財産)の配当を目的とする組織です。法律上は無限連鎖講といいますが,いわゆるねずみ講のことです。
無限連鎖講と連鎖販売取引は,会員組織があるという点で共通していますが,商品の販売が含まれるか含まれないかが違います。
詳しくはこちら|マルチ商法=連鎖販売取引=適法だが規制あり|ねずみ講=無限連鎖講=違法
本記事では,連鎖販売取引の規制の全体像を説明しました。
実際には,いろいろな規制の適用があるかどうか,ということで対立(トラブル)が生じることが多いです。
実際に商品の販売に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。