【仮想通貨交換業者が超えねばならない登録審査のハードルと不透明なICOの法規制(セミナー用資料)】

1 仮想通貨交換業者登録が必要なサービス
2 仮想通貨交換業者登録の申請(ハードル)
3 ICO(新規コイン発行)に関する日本の法規制
4 ICO(新規コイン発行)に関する交換業者登録制の適用
5 その他(予備的なテーマ)
6 資料(登録審査に関するガイドライン)

1 仮想通貨交換業者登録が必要なサービス

(1)仮想通貨交換所の規制の全体像

<仮想通貨の交換所の法規制の新設(概要)>

あ 法改正

平成28年6月に資金決済法が改正された
仮想通貨交換業の登録制度が作られた

い 施行日と特例期間

平成29年4月1日に施行された
平成29年10月1日までは特例期間が設定されている
一定条件のもと,登録なしで仮想通貨交換業が行える

<仮想通貨交換業の登録制度>

あ 登録制度

内閣総理大臣への登録が必要である
※資金決済法2条7項,63条の2

い 違反への罰則

登録を受けないで仮想通貨交換業を行った
法定刑=懲役3年以下or罰金300万円以下
併科あり
※資金決済法107条5号

<仮想通貨交換業の主要な行為規制>

あ 情報の安全管理措置

※仮想通貨交換業者に関する内閣府令12条〜

い 利用者財産管理(分別管理・区分管理)

ア 金銭の管理方法 次のいずれかにより保管する
・銀行への預金
・信託銀行への金銭信託
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令20条1項
イ 仮想通貨の管理方法 交換業者(or管理する第三者)と利用者の仮想通貨の明確な分離
仮想通貨と帰属する利用者が判別できる状態にする
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令20条2項

う 分別管理監査

毎年1回以上,会計士or監査法人による監査を受ける
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令23条

え 利用者財産の管理に関する報告書

3か月ごとに金融庁長官に提出する
残高証明書などを添付する
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令30条

<内閣総理大臣の調査権限>

あ 基本的事項

内閣総理大臣は次の調査を行うことができる

い 仮想通貨交換業者

仮想通貨交換業者に対する次の調査
ア 報告or資料の提出の命令イ 職員による営業所その他の施設への立ち入り調査ウ 職員による質問エ 職員による帳簿書類その他の物件の検査 ※資金決済法63条の15第1項

う 外部委託業者

仮想通貨交換業者から業務の委託を受けた者に対する
『い』と同様の調査
※資金決済法63条の15第2項

<監督処分>

あ 基本的事項

処分する機関=内閣総理大臣
仮想通貨交換業者に対して『い〜え』の処分をすることができる

い 業務改善命令

※資金決済法63条の16

う 登録取消・業務停止

ア 登録の取消イ 6か月以内の業務停止 ※資金決済法63条の17

え 登録の抹消

※資金決済法63条の18

お 監督処分の公告

一定の監督処分については公表(公告)する
※資金決済法63条の19

<犯罪収益移転防止法の義務>

あ 『特定事業者』の定義への追加

『特定事業者』の定義について
仮想通貨交換事業者が追加された
※犯罪収益移転防止法2条31号

い 主な特定事業者の義務

マネーロンダリング対策の具体的内容が適用される
ア 口座開設時の本人確認義務 ※犯罪収益移転防止法4条
イ 疑わしい取引の行政庁への届出義務 ※犯罪収益移転防止法8条

(2)仮想通貨の定義と該当性判断の方法

<1号仮想通貨の定義(決済機能)>

あ 定義本体

『い〜え』のすべてに該当するもの
→1号仮想通貨に該当する

い 不特定の者への決済機能(※4)

物品を購入するor借り受けるor役務の提供を受ける場合に,これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる

う 不特定の者との売買の可能性(※5)

不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(※2)である

え オンラインでの移転可能性

電子情報処理組織を用いて移転することができる

お 『財産的価値』の補足説明

『財産的価値』(前記※2,後記※3)について
電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限る
本邦通貨・外国通貨・通貨建資産を除く
※資金決済法2条5項1号

<2号仮想通貨の定義(1号仮想通貨への代替性)>

あ 定義本体

『い・う』の両方に該当するもの
→2号仮想通貨に該当する

い 1号仮想通貨との交換可能性

不特定の者を相手方として1号仮想通貨(前記※1)と相互に交換を行うことができる財産的価値(※3)である

う オンラインでの移転可能性

電子情報処理組織を用いて移転することができる
※資金決済法2条5項2号

<仮想通貨該当性判断の個別性>

あ 急速な変動

情報通信技術は急速に進展しており,日々,変化するものである

い 判断の個別性

仮想通貨の該当性については
その利用形態に応じ,最終的には個別具体的に判断する
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−1』・p4

<1号仮想通貨の代価の弁済の機能の判断方法>

あ 代価の弁済の機能

1号仮想通貨の該当性に関して
『代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる』ことを判断するに当たり
例えば『い』の事情を考慮する(申請者から詳細な説明を求める)

い 考慮する事情の例

『発行者と店舗等との間の契約等により,代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか』
『発行者が使用可能な店舗等を管理していないか』
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−1『1』』・p4

<1号仮想通貨の不特定の者との売買可能性の判断方法>

あ 不特定の者との購入・売買の可能性

1号仮想通貨の該当性に関して
『不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる』ことを判断するに当たり
例えば『い』の事情を考慮する(申請者から詳細な説明を求める)

い 考慮する事情の例

『発行者による制限なく,本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができるか』
『本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在するか』
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−1『2』』・p4

<プリペイドカード・ポイントの仮想通貨該当性(否定)>

あ 仮想通貨該当性(否定)

『い』に該当するものについて
→これらの発行者と店舗などとの関係では『ア・イ』の要件を満たさない
→仮想通貨には該当しない。
ア 代価の弁済の機能(前記※4イ 不特定の者との購入・売買の可能性(前記※5

い 該当しないサービス形態

ア プリペイドカード 前払式支払手段発行者が発行するいわゆる『プリペイドカード』
イ ポイント・サービスにおける『ポイント』 財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービス
来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービスなど
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−1『2(注)』』・p4

<2号仮想通貨の不特定の者との交換可能性の判断方法>

あ 不特定の者との相互交換可能性

2号仮想通貨の該当性について
『不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる』ことを判断するに当たり
例えば『い』の事情を考慮する(申請者から詳細な説明を求める)

い 考慮する事情

『発行者による制限なく,1号仮想通貨との交換を行うことができるか』
『1号仮想通貨との交換市場が存在するか』
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−1『3』』・p4

(3)仮想通貨交換業の定義と判断の方法

<仮想通貨交換業の定義>

あ 定義本体

『仮想通貨交換業』とは,『い』のうちいずれかを業として行う(※1)ことをいう

い 仮想通貨交換業の内容

ア 仮想通貨の売買or他の仮想通貨との交換イ 『ア』の行為の媒介or取次ぎor代理ウ 『ア・イ』の行為に関して,利用者の金銭or仮想通貨の管理をすること ※資金決済法2条7項

<『業』の解釈>

あ 『業』の基本的解釈

『業として行うこと』(前記※1)とは
『対公衆性』のある行為で『反復継続性』をもって行うことをいうものと解される

い 反復継続の意思の該当性(肯定)

『対公衆性』や『反復継続性』が想定されている場合も『業として行う』に含まれる
現実に『対公衆性』のある行為が反復継続して行われている場合に限らない
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2(注1)』・p5

<差金決済取引の『交換』該当性(否定)>

あ 先物取引の種類

仮想通貨を用いた先物取引などの取引においては『い・う』の取引が存在する

い 現物取引

決済時に取引の目的となっている仮想通貨の現物の受渡を行う取引

う 差金決済取引

取引の目的となっている仮想通貨の現物の受渡を行わない
金銭or取引において決済手段とされている仮想通貨の授受のみによって決済することができる取引
反対売買を行うことなどにより実行する

え 差金決済取引と仮想通貨の『交換』(否定)

差金決済取引(う)については
『仮想通貨の交換等』には該当しない
=資金決済法の規制が適用されない

お 個別的な事情の判断

法の適用を受ける取引かどうかについては, 個別具体的に取引の内容を確認する必要がある
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2』・p5

<仮想通貨の取引と資金移動業該当性の関係>

あ 為替取引への該当性

『い』の行為は,為替取引に該当する
→資金移動業者の登録が必要となり得る
※資金決済法37条

い 為替取引に該当する行為の例

ア 仮想通貨の交換を行う者が,金銭の移動を行うことを内容とする依頼を受けて,これを引き受けることイ 『ア』を引き受けて遂行すること ※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2(注2)』・p5

<仮想通貨交換業と貸金業の関係>

あ 貸付を伴うサービス

仮想通貨を用いた信用取引などを行うに際して
仮想通貨交換業者が利用者に対する金銭の貸付けを行うサービス

い 貸金業該当性

『あ』のサービスは『貸金業』に該当する
→貸金業の登録を受ける必要がある
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2(注5)』・p5

(4)登録制度の施行日と特例期間(みなし登録)

<仮想通貨交換業の制度を新設する法令>

あ 改正する法令

資金決済法(の改正)

い 改正を定めた法令

情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律
平成28年法律62号
本講義では『情報通信技術環境変化対応改正法』という

う 公布日

平成28年6月4日

え 施行日

ア 附則 公布日から1年を超えない範囲内で政令で定める日
※平成28年改正附則1条
イ 政令 平成29年4月1日(に施行する)

<改正資金決済法施行に伴う特例期間(※1)

あ 登録不要の特例期間(通常)

改正資金決済法の施行日(平成29年4月1日)において
現に仮想通貨交換業を行っている者は
施行日から6か月間は仮想通貨交換業を行うことができる
=登録を必要とする規定(資金決済法63条の2)は適用されない
※情報通信技術環境変化対応改正法附則8条1項

い 登録不要の特例期間(登録申請中)

『ア・イ』の両方に該当する者は
登録or登録拒否の処分があるまでの間は
仮想通貨交換業を行うことができる
=登録を必要とする規定(資金決済法63条の2)の適用はない
ア 施行日において現に仮想通貨交換業を行っているイ 施行日から6か月以内に仮想通貨交換業の登録申請をした ※情報通信技術環境変化対応改正法附則8条1項

<特例期間中の仮想通貨交換業者みなし>

特例期間内に仮想通貨交換業を行う登録未了の者について
→仮想通貨交換業者とみなす
=資金決済法の規定を適用する
※情報通信技術環境変化対応改正法附則8条2項

<登録不要の特例期間の終了>

『ア・イ』のいずれかに該当した場合
→その時点で登録不要の特定期間(前記※1)は終了する
ア 仮想通貨交換業の登録の拒否の処分イ (登録後に)業務停止命令がなされた ※資金決済法63条の17第1項
※情報通信技術環境変化対応改正法附則8条1項

2 仮想通貨交換業者登録の申請(ハードル)

(1)登録の要件(基準)

<登録の審査(基本)>

次の『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→登録は拒否される
ア 登録拒否要件 登録拒否要件(後記※1)のいずれかに該当する
イ 虚偽の記載・記載附則 登録申請書・添付書類の重要な事項について
虚偽の記載があるor重要な事実の記載が欠けている
※資金決済法63条の4第1項

<登録の拒否要件(※1)

あ 日本に所在する会社

株式会社or外国仮想通貨交換業者のいずれでもない
外国会社は日本国内に営業所を有するものに限る

い 国内の代表者

外国仮想通貨交換業者の場合
国内における代表者がない
代表者は国内に住所を有する者に限る

う 財産的基盤

仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する財産的基盤を有しない
基準は内閣府令で定める

え 事務遂行体制

仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない

お ルール遵守体制の整備

仮想通貨に関する資金決済法の規定を遵守するために必要な体制の整備が行われていない

か 商号の類似・誤認

『ア・イ』のいずれかの商号・名称を用いている
ア 他の仮想通貨交換業者が現に用いている商号・名称と同一イ 他の仮想通貨交換業者と誤認されるおそれがある

き 資金決済法に関する登録取消の処分歴

『ア・イ』のいずれかの処分から5年を経過していない
ア 資金決済法に基づく仮想通貨交換業の登録を取り消さたイ 資金決済法に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の登録を取り消された 登録に類する許可その他の行政処分を含む

く 資金決済法などに関する罰金の処分歴

資金決済法,出資法,これらに相当する外国の法令の規定に違反し,罰金の刑に処せられた
その刑の執行を終わりorその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない

け 他事業の反社会性

他に行う事業が公益に反する

こ 役員の欠格要件

『ア〜オ』のいずれかに該当する役員がいる
役員=取締役・監査役・会計参与・外国仮想通貨交換業者の国内の代表者
ア 成年被後見人,被保佐人イ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者ウ 外国の法令上『ア・イ』のいずれかに相当する者エ 禁固以上の刑に処せられ,その刑の執行を終わりorその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者オ 資金決済法,出資法,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律,これらに相当する外国の法令の規定に違反し,罰金の刑に処せられ,その刑の執行を終わりorその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者カ 仮想通貨交換業者が資金決済法に基づく仮想通貨交換業の登録を取り消された場合or法人が資金決済法に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の登録を取り消された場合において,その取消日前30日以内にその法人の役員であった者で,当該取消日から5年を経過しない者 ※資金決済法63条の5

(2)登録申請の全体像

<仮想通貨交換業の登録申請書>

あ 登録制度(前提)

仮想通貨交換業を行うには
内閣総理大臣の登録を受けることが必要である
※資金決済法63条の2

い 登録申請

『あ』の登録を受けようとする者は
登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない
申請書の記載事項は定められている(後記※1
※資金決済法63条の3第1項

<仮想通貨交換業の登録申請書の記載事項(※1)

あ 商号・住所
い 資本金の額
う 仮想通貨交換業に係る営業所の名称・所在地
え 取締役・監査役の氏名

監査等委員会設置会社にあっては取締役とする
指名委員会等設置会社にあっては取締役・執行役とする
外国仮想通貨交換業者にあっては外国の法令上これらに相当する者とする

お 会計参与の氏名or名称

会計参与設置会社のみ

か 国内における代表者の氏名

外国仮想通貨交換業者のみ

き 取り扱う仮想通貨の名称
く 仮想通貨交換業の内容・方法
け 第三者に委託する業務の内容・委託先の氏名or商号or名称・住所

仮想通貨交換業の一部を第三者に委託する場合のみ

こ 他の事業の種類

他に事業を行っている場合のみ

さ 取り扱う仮想通貨の概要
し 利用者の財産の管理の方法
す 苦情・相談の窓口

仮想通貨交換業の利用者からの苦情or相談に応ずる営業所の所在地・連絡先

せ 加入する認定資金決済事業者協会の名称

仮想通貨交換業者を主要な協会員or会員とするものに限る
※資金決済法63条の3第1項
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令5条

<登録申請書の添付書類(法律指定)>

あ 誓約書

登録拒否要件に該当しないことを誓約する書面(※2)
登録拒否要件=資金決済法63条の5第1項

い 財務に関する書類
う 業務遂行体制整備書類

仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備に関する事項を記載した書類

え 内閣府令指定書類

その他の内閣府令で定める書類(後記※3
※資金決済法63条の2第2項

<登録申請書の添付書類(内閣府令指定・※3)>

あ 宣誓書の要式

前記※2の宣誓書について様式が定められている
※別紙様式3号

い 取締役などの住民票の抄本

取締役などが外国人である場合は『ア〜ウ』のいずれか
ア 在留カードの写しイ 特別永住者証明書の写しウ 住民票の抄本

う 取締役などの婚姻前の氏名を証する書面

婚姻前の氏名を登録申請書に記載した場合において
『い』の書類が婚姻前の氏名を証するものでない場合のみ

え 制限能力者・破産者でない証明書

取締役などが『ア〜ウ』に該当しない旨の官公署の証明書
ア 成年被後見人イ 成年被保佐人ウ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

お 取締役などの履歴書or沿革

様式が定められている
※別紙様式5号,6号

か 株主名簿・定款・登記事項証明書

様式が定められている
※別紙様式7号

き 外国における仮想通貨交換業の登録証明書

外国において日本の仮想通貨交換業登録と同種類の登録を受けた証明書
外国仮想通貨交換業者である場合のみ

く 最終の貸借対照表・損益計算書

登録の申請日を含む事業年度に設立された法人の場合
→法人成立の日における貸借対照表

け 前事業年度の会計監査報告書

会計監査人設置会社である場合のみ

こ 収支計画書面

事業開始3事業年度における
仮想通貨交換業に係る収支の見込みを記載した書面

さ 取り扱う仮想通貨の概要を説明した書類

ア 仮想通貨交換業の概要図 仮想通貨交換業の内容毎に仮想通貨交換業者,利用者その他関係者の契約関係や債権・債務関係がわかるように簡略に図示する
イ 仮想通貨の名称,単位,仕組み 仕組みは発行者の有無,取り扱う仮想通貨が有するリスクその他の利用者が認識すべき当該仮想通貨の特性について簡潔に記載する
※別紙様式第1号第7面記載上の注意より

し 仮想通貨交換業に関する組織図

内部管理に関する業務を行う組織を含む

す 仮想通貨交換業を管理する責任者の履歴書
せ 仮想通貨交換業に関する社内規則など

社内規則その他これに準ずるもの

そ 利用者との間の契約書類

仮想通貨交換業の利用者と仮想通貨交換業に係る取引を行う際に使用する契約書類

た 業務委託契約書

仮想通貨交換業の一部を第三者に委託する場合のみ
記載事項が定められている(後記※4

ち 紛争解決機関に関する書面

『ア・イ』のうち該当する方の事項を記載した書面
ア 指定仮想通貨交換業務紛争解決機関が存在する場合 手続実施基本契約の相手方である指定仮想通貨交換業務紛争解決機関の商号or名称
イ 指定仮想通貨交換業務紛争解決機関が存在しない場合 仮想通貨交換業者の苦情処理措置・紛争解決措置の内容

つ その他参考となる事項を記載した書面
て 官公署が証明する書類の有効期限

申請日の前3か月以内に発行されたものに限る
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令第6条

<業務委託契約書記載事項(※4)

あ 業務委託契約書の添付

仮想通貨交換業の一部を第三者に委託する場合
登録申請書に業務委託契約書を添付する
業務委託契約書には『い』の事項が記載されている必要がある

い 記載事項

ア 資金決済法などを遵守する旨の文書イ 委託業務の範囲に関する事項ウ 委託手数料の決定・支払いに関する事項エ 委託業務の取扱いに必要な経費の分担に関する事項オ 営業用の施設・設備の設置主体など ※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(1)①ハ』・p48

<内閣府令により定められた書面様式>

あ 内閣府令別紙の様式
様式第1号 登録申請書(一般)
様式第2号 登録申請書(外国登録業者)
様式第3号 宣誓書(一般)
様式第4号 宣誓書(外国登録業者)
様式第5号 履歴書
様式第6号 沿革
様式第7号 株主の名簿
様式第8号 仮想通貨交換業者の登録について(※5)
様式第9号 登録の拒否について(※5)
様式第10号 変更届出書
様式第11号 事業報告書
様式第12号 事業報告書
様式第13号 利用者財産の管理に関する報告書
様式第14号 仮想通貨交換業の廃止等届出書
様式第15号 仮想通貨交換業廃止公告届出書
様式第16号 法令違反行為等届出書

※5 財務局長の作成する書面である(申請者・事業者が用いるものではない)

い 情報ソース(申請書ひな形)

金融庁のサイト(仮想通貨交換業者に関する内閣府令(p44〜))

う 書式に関する他の公式情報

申請書の記載事項・添付書類について
『あ』以外に公式の情報はない
例=通達・関連団体による出版物
※平成29年8月関東財務局金融監督第6課ヒアリング

(3)登録申請の手続の流れ

<金融庁仮想通貨モニタリングチームへの連絡(第1段階)>

あ 登録に関する事前相談

仮想通貨交換業者登録を予定・検討していることについて
→事業者の所在地を管轄する財務局の窓口に連絡する

い 関東エリアを管轄する窓口

東京都その他近県の所在する事業者について
(関東財務局)金融庁監督局総務課 仮想通貨モニタリングチーム

(事前面談に必要な書類・資料を揃える(第2段階))

<登録申請書への記入>

あ 申請書・添付書類のひな形

内閣府令の中でひな形が示されている

い 申請書の記載項目(概要)

ア 仮想通貨交換業の業務運営態勢イ 犯罪収益移転防止法の規制の遵守体制 取引時の本人確認・疑わしい取引の届出を行うための態勢
疑わしい取引の検出基準
ウ 障害時対応 システム障害やサイバーセキュリティ事案への対応
エ 内部管理体制

う 金融庁のガイドラインの参照

申請書の作成の際は,金融庁のガイドラインが参考になる

<審査事項のチェックリストの作成>

あ チェックリストの交付

仮想通貨交換業者登録申請の予定者に対して
金融庁がエクセルの表によるチェックリストを交付している

い リストの内容

166項目が示されている
基本的に申請書・添付書類の記載事項を詳しくした内容である
その中には社内規則・マニュアル(を作ること)も含まれている(後記※1
(作るべき)社内規則は金融庁のガイドラインで示されている

<作成する主な社内規則・マニュアルの種類(※1)

社内規則・マニュアルの種類 ガイドラインの項目
倫理規程,コンプライアンス・マニュアル II-2−1−1
取引時確認の措置マニュアル II-2-1-2-2(1)
疑わしい顧客や取引の検出・監視・分析のマニュアル II-2-1-2-2(2)
利用者保護措置の規則 II−2−2-1
反社会的勢力への対応マニュアル II-2-1-3
金銭・仮想通貨の分別管理に関する社内規則 II-2-2-2
帳簿書類に関する社内規則 II-2−2−3
利用者の情報管理に関する社内規則 II-2-2−4
苦情への対処に関する社内規則 II-2-2-5−2
金融ADR制度への対応に関する社内規則 II-2−2−5-3
システムリスク管理に関する社内規則 II-2-3-1
外部委託に関する社内規則 II-2-3−3

<仮想通貨の該当性・適切性についての説明>

あ 取り扱う仮想通貨の特定(前提)

取り扱う仮想通貨は登録事項の1つである
→登録申請では取り扱う予定の仮想通貨を特定する必要がある

い 仮想通貨の『認可』ハードル

取り扱う仮想通貨は『ア・イ』の2つに該当する必要がある
俗に『認可』と呼ばれるものである
ア 仮想通貨の定義に該当するイ 適切性が認められる

う 仮想通貨の説明書への記載

『い』の見解(仮想通貨の定義に該当する+適切性が認められる)を書面に記載する

え ホワイトリストとの関係

『認可』済みのトークン(ホワイトリストに含まれる)であれば問題はない
『認可』未了のトークン(ホワイトリストに含まれない)については,詳細な説明が必要となり,審査に時間を要する

<財産的基礎についての説明>

あ 収支計画書面の作成

3事業年度の収支見込を書面に記載する

い 収支見込の判断の内容

環境の悪化(競合者の参入,システムの陳腐化)に伴う対応方策が確立している
その場合でも一定の収益を見込めるような計画となっている
仮想通貨交換業における損失が生じた場合に,それ以外の事業の収益によって補填がなされることによる仮想通貨交換業の継続の可能性も考慮する
※仮想通貨交換業ガイドライン『III-2-1(2)①ハ』

<金銭・仮想通貨の分別管理についての説明>

あ 分別管理義務(前提)

仮想通貨交換業者は,利用者から預かる金銭・仮想通貨を,自社の金銭・仮想通貨を分別して管理する義務がある

い 申請書への記載

分別管理の具体的な方法・内容を申請書に記載する

う 分別管理の方法の典型例

残高を営業日ごとに確認する
秘密鍵の保管場所を明確に区分する
可能な限り暗号鍵を外部ネットワークに接続されていない環境で管理する(コールドウォレット)
※仮想通貨交換業ガイドライン『II-2-2-2』

<苦情処理・紛争解決の対処についての説明>

あ 苦情処理・紛争解決の措置の義務(前提)

仮想通貨交換業者は,利用者からの苦情と紛争について適切な態勢を整備することが必要である

い 申請書への記載

利用者からの苦情・相談の窓口や紛争解決の方法を申請書に記載する
※仮想通貨交換業ガイドライン『II-2-2-5』

<金融庁担当者との事前面談(第3段階)>

あ 面談実施の準備

事前に書類や資料(前記)を提出する
申請書のドラフト(下書き)として扱う
面談実施日時の予約を取る

い 面談の内容と所要時間

提出済の書類・資料を元にして質問・確認がなされる
質問事項は登録審査の内容(項目)が中心となる(う)
平均的に2〜3時間程度を要する

う 主な質問事項

仮想通貨交換業を始める(参入する)経緯や理由
組織の内容(内部管理・内部監査を行う部署や部門)
外部監査の具体的な方法・内容
金銭・仮想通貨の分別管理の方法
反社会的勢力のチェックの方法
取引時の本人確認・疑わしい取引の検査の方法
苦情処理や紛争解決の具体的な方法(苦情受付からの処理フロー)

<ドラフト書面の事前審査(第4段階)>

あ ドラフト書面の審査開始

事前面談の前に提出したドラフト書面について
金融庁(財務局)で審査が行われる

い 金融庁からの質問の連絡

金融庁から質問・確認事項についてメールなどで連絡がくる

う 質問・回答の所要期間

質問と回答が複数回繰り返されることが多い
短くても3か月以上を要する傾向がある
ドラフト書面の完成度や質問への回答のスピードによって大きく変わる

<正式な登録申請書の提出(第5段階)>

あ 事前審査の終了

ドラフト書面の審査が完了した時点で
→正式な登録申請書の提出(本申請)ができる

い 本審査の所要期間

平均的に3〜6か月程度を要する
申請内容や申請の混み具合によって大きく異なる
ホワイトリスト外のコインが入っていると長くなる傾向が強い
最近は審査の所要期間が全体的に長くなる傾向がある

(4)犯罪収益移転防止法による本人確認

<通常の取引時確認の要件>

あ 特定事業者に該当する

仮想通貨交換業者も特定事業者の1つである
※犯罪収益移転防止法2条2項31号

い 取引の相手方が顧客等である
う 特定業務に関する取引である
え 取引が『特定取引』(後記※1)に該当する
お 『行うに際して』(は取引時確認が必要となる)
か ハイリスク取引に該当しない
き 確認済顧客の例外を利用しない

※犯罪収益移転防止法4条1項

<『特定取引』の意味(※1)

あ 『特定取引』の意味(定義)

『特定取引』とは,『い・う』の両方に該当する取引のことである

い 『対象取引の類型』

『対象取引の類型』のいずれかに該当する
取引の種類ごとに規定されている(後記※2
※犯罪収益移転防止法施行令7条1項各号,9条

う 簡素取引(例外)への非該当

『簡素な顧客管理の許容される取引』に該当しない
※犯罪収益移転防止法施行規則4条1項各号

<仮想通貨交換業に関する対象取引の内容(※2)

あ 基本契約

仮想通貨の交換等(資金決済法2条7項に規定する仮想通貨の交換等をいう)
を継続的に若しくは反復して行うこと
具体例=アカウント作成などのための基本契約の締結
※中崎隆ほか著『詳説 犯罪収益移転防止法・外為法 第2版』中央経済社2017年p48
※犯罪収益移転防止法施行令7条1項ヨ

い 付随的なウォレットサービスの契約

仮想通貨の交換等(あ)に付随して,金銭or仮想通貨の管理をすること

う 仮想通貨の交換契約

仮想通貨の交換等であって,当該仮想通貨の交換等に係る仮想通貨の価額が200万円を超えるもの
※犯罪収益移転防止法施行令7条1項タ

(5)本人確認方法の内容

<本人確認書類のランク分類>

あ 高レベル書類(※1)

顔写真付きの公的身分証明書

い 中レベル書類(※2)

各種健康保険証
国民年金手帳
母子健康手帳
使用印鑑に係る印鑑証明書

う 低レベル書類(※3)

使用印鑑なしの印鑑証明書
戸籍謄本・抄本(附票つき)
住民票の写し

<対面での本人確認の主な方法>

あ 高レベル書類使用

高レベル書類(前記※1)の提示を受ける

い 中レベル書類使用

中レベル書類(前記※2)の提示を受ける+『ア〜ウ』のいずれかの方法
ア 転送不要の書留郵便で,取引関係文書を送付するイ 中or低レベル書類(前記※2,※3)のうちもう1つの提示を受けるウ 提示を受けたもの以外の補完書類の送付を受ける

う 低レベル書類使用

低レベル書類(前記※3)の提示を受ける+次の方法
・転送不要の書留郵便で,取引関係文書を送付する
※犯罪収益移転防止法4条,施行規則6条,7条

<非対面での本人確認の主な方法>

あ 受理+送付法

『ア・イ』の方法の両方を履行する
ア 受理 顧客等の本人確認書類またはその写しの送付を受ける
当該本人確認書類またはその写しを確認記録に添付する
※犯罪収益移転防止法施行規則19条1項2号
イ 送付 『ア』の本人確認書類または写しに記載されている住居に宛てて,取引関係文書を,書留郵便等により,転送不要郵便等として送付する
※犯罪収益移転防止法施行規則6条1号ホ

い 認定事業者の電子証明書

電子署名法に基づく認定認証事業者発行の電子証明書を用いる
※犯罪収益移転防止法施行規則6条1号ト

う 公的個人認証サービスの電子証明書

公的個人認証サービスの電子証明書を用いる
※犯罪収益移転防止法施行規則6条1号チ

え 認定署名検証者による電子証明書

認定署名検証者が発行した電子証明書を用いる
公的個人認証法17条1項5号に基づく認定を受けた署名検証者が発行する必要がある
※犯罪収益移転防止法施行規則6条1号リ

(6)本人確認の時期(『行うに際して』の解釈)

<取引時確認を行うタイミング>

あ 条文規定

(特定取引を)行うに際しては取引時確認を行わなければならない
※犯罪収益移転防止法4条

い 『行うに際しては』の意味

『行うに際しては』とは『あらかじめ』『までの間に』などのように取引が完了する前に必ず本人確認が終了していなければならないという趣旨ではない
取引の性質に応じて合理的な期間内(後記※1)に本人確認を完了すべきという趣旨である

う 取引時確認未了による取引中断

合理的な期間内に完了しない場合は,通常,免責規定により取引を中断することになる
※犯罪収益移転防止法5条
※犯罪収益移転防止制度研究会編著『逐条解説 犯罪収益移転防止法』2009年p69,70

<取引の性質による取引時確認を行う合理的な期間(※1)

あ 即時現物取引における合理的な期間

ア 一般的基準 外貨両替や貴金属の即時現物取引においては
顧客との次回の接触が想定し難いorいつになるか分からない
→取引(財産移転)を終了した後で本人確認ができない事態が想定できる
→取引に先立ちその場で本人確認をしておく必要性は高い
イ クレジットカードの例(参考) クレジットカードが交付される時点までに取引時確認が実施されていること
が要請されている
※経済産業省『割賦販売法(後払分野)に基づく監督の基本方針』
※中崎隆ほか著『詳説 犯罪収益移転防止法・外為法 第2版』中央経済社2017年p76

い 継続的取引

預貯金契約のような継続的取引を構築する場合においては
取引開始後,犯罪収益移転防止法規則に定められた方法をとる合理的な期間内で本人確認を行うことは可能である
※犯罪収益移転防止制度研究会編著『逐条解説 犯罪収益移転防止法』2009年p69,70

(7)疑わしい取引の届出義務

<犯罪収益移転防止法の『特定事業者』(抜粋)>

仮想通貨交換業者は犯罪収益移転防止法の『特定事業者』に該当する
※犯罪収益移転防止法2条31号

<疑わしい取引の判断と届出の義務>

あ 判断義務

特定事業者は,特定業務に係る取引について
当該取引において収受した財産が犯罪による収益である疑いがあるかどうかを判断しなければならない

い 届出義務

疑いがあると認められる場合は,速やかに行政庁に届け出なければならない
※犯罪収益移転防止法8条1項

う ステルス義務

特定事業者は,疑わしい取引の届出行おうとすることor行ったことを,顧客その者の関係者に漏らしてはならない
※犯罪収益移転防止法8条3項

え 行政庁→国家公安委員会への通知

疑わしい取引の届出を受けた場合
行政庁は速やかに主務大臣に通知する
→主務大臣は速やかに国家公安委員会に通知する
※犯罪収益移転防止法8条4項,5項

<『犯罪による収益』の定義>

組織的犯罪処罰法2条4項に規定する犯罪収益等or麻薬特例法2条5項に規定する薬物犯罪収益等をいう
※犯罪収益移転防止法2条1項

<『犯罪収益等』の定義>

犯罪収益,犯罪収益に由来する財産orこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産
※組織的犯罪処罰法2条4項

<『犯罪収益』の定義の抜粋>

あ 『犯罪収益』の定義の本体

財産上の不正な利益を得る目的で犯した次に掲げる罪の犯罪行為により生じたor当該犯罪行為により得た財産or当該犯罪行為の報酬として得た財産
(日本国外でした行為であって,当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり,かつ,当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)
※組織的犯罪処罰法2条2項1号本文

い 法定刑の大きさによる限定

(『あ』の次に掲げる罪の1つとして)
死刑or無期or長期4年以上の懲役or禁錮の刑が定められている罪
※組織的犯罪処罰法2条2項1号イ

<ハッキングによる財産取得の罪名・処断刑(概要)>

あ 対象行為

ネットワーク経由で不正にサーバーにアクセスした
これにより不正に財産上の利益を得た

い 成立する罪名と罪数処理

電子計算機使用詐欺罪+不正アクセス禁止法違反
→法定刑の重いもの(処断刑)=懲役10年以下

<『犯罪収益に由来する財産』の定義>

犯罪収益の果実として得た財産,犯罪収益の対価として得た財産,これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有or処分に基づき得た財産
※組織的犯罪処罰法2条3項

(8)登録の申請件数や所要期間の実情

<登録申請の状況(平成29年8月・9月時点)>

あ 平成29年8月末時点の状況

仮想通貨交換業の登録を完了した件数はゼロであった

い 平成29年9月29日時点の状況

11件(業者)が登録完了となった
継続審査中は17件である

う 平成30年8月時点の状況

16件(業者)が登録完了となった
継続審査中は約100件である
みなし業者(申請済・審査中)は9件である
(みなし業者は16件であったが7社が申請を取り下げた)

<登録手続の所要期間>

あ 大まかな目安

登録申請〜審査〜登録完了に要する期間は
半年を標準としていた
現在は1年程度である
取り扱う仮想通貨の種類によって大きく異なる

い 期間が短くなる事情

取り扱う仮想通貨が有名な仮想通貨である場合
例=ビットコイン
→仕組みの把握が容易である
→登録審査は短期間で済む傾向がある

う 期間が長くなる事情

取り扱う仮想通貨がマイナーな仮想通貨である場合
『ア・イ』の審査を含めて時間を要する傾向がある
ア 仮想通貨への該当性イ 仮想通貨交換業への該当性

<登録手続の具体的な審査の例>

あ 面談回数の具体例

ビットコインだけを取り扱う仮想通貨交換業であれば
金融庁(財務局)での面談は1回で済むことが多い
面談は代理人or申請者本人(代表者や担当者)による

い 他の手続のバラエティ

財務局から申請者本人との面談を要請することもある
財務局スタッフが事業所に赴いて調査することもある

う 事務ガイドラインの規定(参考)

特に事務(業務)遂行と法令遵守の体制の整備については実態が重視される
→事務ガイドラインで実地調査による検証も示されている
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)②』・p49

3 ICO(新規コイン発行)に関する日本の法規制

(1)ICO(新たな仮想通貨の発行・販売)に関する日本の法規制

<金融庁によるICOに関する注意喚起>

あ 日付・タイトル

金融庁
平成29年10月27日
ICO(Initial Coin Offering)について〜利用者及び事業者に対する注意喚起〜

い ソース(リンク)

金融庁のサイト(ICOに関する注意喚起)

<ICOという用語の意味>

あ 略語

ICOとは,Initial Coin Offeringを略したものである
他にトークンセール・クラウドセールなどという呼び方がある

い ICOに関する注意喚起での説明

一般に、ICOとは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称です。
※金融庁・ICOに関する注意喚起

<注意喚起によるICOへの全体的法規制の指摘>

ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となります。
ICO事業に関係する事業者においては、自らのサービスが資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となる場合には、登録など、関係法令において求められる義務を適切に履行する必要があります。登録なしにこうした事業を行った場合には刑事罰の対象となります。
※金融庁・ICOに関する注意喚起『3』

<関連事項>

ICOに関する交換業者登録制の適用

<資金決済法の前払式支払手段との関係>

あ 前払式支払手段の要件(概要)

トークンと引き換えに物品購入,サービスの提供を受けられる

い 規制の内容

『自家型/第三者型前払式支払手段』(資金決済法3条4項,5項)に該当する場合
→届出or登録,一定の金額(未使用残高の2分の1以上)を供託する必要がある
※資金決済法5条,14条

う 具体例

商品券・ギフト券・プリペイドカード(磁気型・IC型・オンライン型)

<金融商品取引法のファンド規制との関係>

あ 金商法のファンド規制の要点

金銭を出資を受けて事業を行う
事業の利益から配当を行う
→集団投資スキームとして金商法の規制(ファンド規制)が適用される

い ICOの形式的な該当性

集団投資スキームの出資は金銭・有価証券に限定されている
→仮想通貨による出資は集団投資スキームに該当しない

う 注意喚起による金商法の規制の指摘

また、ICOが投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となると考えられます。
※金融庁・ICOに関する注意喚起『3』

<利益分配のあるトークン(ICO)と金商法>

あ 集団投資スキームに該当する例

トークンの発行者の営業のために出資した
その結果,営業から生じた利益の分配を受ける

い 金商法の適用

仮想通貨での『出資』でも,金銭への換価が容易であれば『金銭での出資』といえる
→金商法のみなし有価証券となる
→集団投資スキームの募集or私募に該当する
→原則として第二種金融商品取引業の登録が必要となる
※金商法2条8項7号ヘ,2条2項,28条4項

<注意喚起によるICOの事前相談の推奨>

あ ICO規制に関する相談の推奨

ICOへの規制についてご不明な点があれば、まずは、資金決済法上の仮想通貨交換業者を所管する以下の相談窓口にご相談ください。必要に応じて、他の事業者(金融商品取引業者等)を所管する担当課へおつなぎします。

い 関東エリアを所管する担当課

東京都その他近県の所在する事業者について
(関東財務局)金融庁監督局総務課 仮想通貨モニタリングチーム
※金融庁・ICOに関する注意喚起『3』

(2)金商法(金融商品取引法)と仮想通貨

<『有価証券』の意義・定義>

あ 金商法の『有価証券』

明確な定義としての条文上の規定はない
『有価証券』に該当するものが列挙されている
※金商法2条1項

い 位置付け

『有価証券』は『金融商品』の1つという位置付けである
→『デリバティブ取引の原資産』に該当する
※金商法2条24項

う 民事的な『有価証券』の一般的解釈

財産的価値を有する私権を標章する証券
※見解により多少異なる

え 刑事的な『有価証券』の解釈

権利が証券に表示され,権利の行使につき証券の占有を必要とするもの
※最高裁昭和32年7月25日

お 典型例=社債

権利者は『社債券』を所持する
発行会社に対して『元金・利息』の『償還(返還)請求権』を持っている

<金商法と仮想通貨(基本;※2)>

あ 『有価証券』該当性

仮想通貨は『有価証券』の内容の中に該当するものがない
→金商法の『有価証券』に該当しない
※金商法2条1項
※内閣総理大臣『答弁書』内閣参質186第28号;平成26年3月7日

い 金融商品

仮想通貨について
→『金融商品』の定義に直接該当しない
※金商法2条24項
→金商法の規制は適用されない
例;業者登録,勧誘規制など

<金商法のデリバティブ規制と仮想通貨>

あ デリバティブの規制の適用

仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引について
→次の概念に該当する可能性がある
『有価証券又はデリバティブ取引に係る権利以外の資産に対する投資』
該当する場合
→金融商品取引業者が扱う業務となる
規制の内容=適合性原則,証拠金など
※金商法第35条2項6号
※内閣総理大臣『答弁書』内閣参質186第28号;平成26年3月7日

い 仮想通貨の取引への流用

一般的な仮想通貨の取引の法整備において
金融商品販売法の規制内容が参考となる

4 ICO(新規コイン発行)に関する交換業者登録制の適用

(1)ICOへの資金決済法(仮想通貨交換業)の規制

<注意喚起による仮想通貨交換業者登録の要請>

ICOにおいて発行される一定のトークンは資金決済法上の仮想通貨に該当し、その交換等を業として行う事業者は内閣総理大臣(各財務局)への登録が必要になります。
※金融庁・ICOに関する注意喚起『3』

<ICOと仮想通貨交換業の定義との関係>

あ 仮想通貨交換業の定義(抜粋)

仮想通貨の売買or他の仮想通貨との交換を業として行うこと
→仮想通貨交換業に該当する

い ICOとの関係

新たに発行するトークンが仮想通貨に該当する場合
→ICOは,法定通貨による販売(売買)・他の仮想通貨による販売(交換)に該当する
→仮想通貨交換業者登録が必要となる

<新規発行トークンの仮想通貨該当性>

あ 1号仮想通貨の定義(要点)

不特定の者に対して決済のために使用することができる
かつ,不特定の者に対して購入及び売却を行うことができる
財産的価値であって電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

い 2号仮想通貨の定義(要点)

不特定の者を相手方として仮想通貨と相互に交換を行うことができる
財産的価値であって電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

<仮想通貨の定義の中の『不特定の者』の意味>

あ ガイドラインが示す解釈

『不特定の者』の判断については,『い・う』の事情などを考慮する

い 使用可能な店舗の限定の有無

発行者と店舗との間の契約により,代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗が限定されていないか

う 法定通貨との交換の制限の有無

発行者による制限なく,本邦通貨or外国通貨との交換を行うことができるか
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−1『1・2』』・p4

<『不特定の者』に該当する方向に働く例>

あ 上場済み

仮想通貨取引所に上場している
=広く取引が行われている(流動性が高い)
→『不特定の者』による取引(交換)が可能である(仮想通貨に該当する)

い 上場可能性の示唆

トークンの発行時点において,”将来,国内or海外の交換所への上場の可能性を示している
→『不特定の者』による取引(高い流動性)が予定されている
→仮想通貨に該当する可能性が高い

う 既存の仮想通貨と交換可能な仕組み

トークンの設計上,既存の仮想通貨との交換が可能である
→『不特定の者』による取引(高い流動性)が予定されている
→仮想通貨に該当する可能性が高い
※金融庁の見解など

(2)仮想通貨の上場(ホワイトリスト)

<取り扱う仮想通貨の追加の法的手続>

あ 登録事項という位置づけ

『取り扱う仮想通貨の名称』は仮想通貨交換業の登録の記載事項となっている
※資金決済法63条の3第1項7号

い 変更届出

登録の記載事項(あ)に変更があった場合
→仮想通貨交換業者は遅滞なく内閣総理大臣に届け出なければならない
※資金決済法63条の6

う 他の登録事項(参考)

『他に事業を行っているときは、その事業の種類』も登録事項となっている
※資金決済法63条の3第1項10号
新たに扱うHFコインが資金決済法の仮想通貨の定義に該当しない場合
(売買のサービスの提供を始める場合)
→他に行う事業として内閣総理大臣に届け出なければならない
※資金決済法63条の6

<金融庁からの任意の要請>

あ 法的な扱い

新たなコインの売買サービスの開始するには届出だけでよい
それ以上に規制することはない
形式が整っていない以外で受理しないということはない

い 任意の要請

金融庁としては,新コインの安全性を確認した後に届出をする(売買サービス提供を開始する)ことを推奨している

う 業界団体の取り組み

業界団体では,扱うコインを取り決めているはずである
この会員であれば各社が単独で判断することはないと思われる
※金融庁監督局金融会社室仮想通貨第1係ヒアリング平成29年12月

<仮想通貨の適切性の要求とその理由>

あ 仮想通貨ガイドラインの規定

(新規の仮想通貨交換業者登録の審査に関して)
このため,取り扱おうとするものが仮想通貨に該当し,又は当該仮想通貨の取扱いが仮想通貨交換業に係る取引に形式的に該当するとしても,利用者保護ないし公益性の観点から,仮想通貨交換業者が取り扱うことが必ずしも適切でないものもあり得る
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2』・p4,5

い 実質的な金融庁の審査(俗称=認可)

登録済みの仮想通貨交換業者が新たに適切でない仮想通貨を取り扱った場合
→利用者保護措置などの不備といえることがある
→金融庁による行政処分や行政指導の対象となる
→実質的には金融庁が『認可』したトークンだけしか上場できない

う ホワイトリスト

仮想通貨交換業者が既に扱っているコインについて
→金融庁が実質的に『認可』したものである
俗にホワイトリストと呼ばれている(後記※1

<ホワイトリスト(上場済みコイン)の内容(※1)

レターコード 日本語表記
BTC ビットコイン
ETH イーサリウム
BCH ビットコインキャッシュ
ETC イーサリウムクラシック
LTC ライトコイン
XRP リップル
MONA モナコイン
FSCC フィスココイン
NCXC ネクスコイン
CICC カイカコイン
XCP カウンターパーティー
ZAIF ザイフ
BCY ビットクリスタル
SJCX ストレージコインエックス
PEPECASH ぺぺキャッシュ
ZEN ゼン
XEM/NEM ゼム/ネム
QASH キャッシュ

※平成30年4月10日時点

<仮想通貨の実質的な上場審査の項目>

あ 仮想通貨該当性

資金決済法上の仮想通貨の定義に該当する

い 仮想通貨の適切性

『ア〜エ』などの事情から,取り扱う仮想通貨として適切である
ア 仮想通貨の仕組みイ 想定される用途ウ 流通状況エ 内在するリスク 例=プログラムのバグ
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2(注3)』・p5

(3)諸外国の交換業規制

<世界的な仮想通貨交換業の規制の方向性>

あ 規制の提唱

平成27年6月のG7エルマウ・サミットでの首脳宣言
FATFガイダンス

い 規制導入の方向性

『あ』を踏まえ,外国においても,仮想通貨交換業に対する規制導入が進んでいる
※堀天子著『実務解説 資金決済法 第3版』商事法務2017年p331

<諸外国の仮想通貨の規制のまとめ(平成29年12月)>

あ 仮想通貨の使用を禁止する国

ア ロシア

い マネロン・テロ資金供与規制を導入or検討中の国

ア 米国(連邦)イ 英国ウ カナダエ シンガポール

う 利用者保護規制導入

マネロン・テロ資金供与規制に加えて,利用者保護のための規制を導入している国
ア 米国ニューヨーク州イ ドイツウ フランスエ スイス ※金融審議会・決済業務高度化WG報告・平成27年12月22日p27・脚注65

<諸外国のICO規制>

あ ICOを禁止する国

中国・韓国

い ICOを既存の規制の対象とする国

米国・シンガポール・スイス・ドイツ・オーストラリア・UK・ドバイ

う ICOを新たな規制の対象とする国

フランス・ジブラルタル・アラブ首長国連邦(UAE)・ロシア

え ICOを規制の対象としない国

ベラルーシ

(4)日本での営業の判断基準(日本の登録の要否)

<日本の仮想通貨交換業の規制の適用地域>

あ 資金決済法の規定

資金決済法には適用される地域(範囲)に関する規定はない

い 属地主義

仮想通貨交換業が遂行される場所が日本であれば資金決済法が適用される
※刑法1条1項(属地主義)

う 仮想通貨交換サービスの場所による判定

交換サービスが行われる場所が日本であれば資金決済法が適用される
(日本での営業といえれば適用される)

<交換サービスの場所(日本での営業)の判断の金融庁見解>

あ 保護法益論

日本国内にある人(居住者)を対象にサービスを提供するならば
日本の資金決済法の規制による保護(保護法益)を及ぼすべきである

い 日本での営業の判断材料

次のような事情によって総合的に判断する
ア 日本居住者のユーザーの割合イ 日本語表記の有無ウ 日本円の扱いの有無エ 日本国内向けの広告の有無 ※金融庁ヒアリング平成29年12月

う 外国の交換所が日本からのアクセスを拒否する必要性

全世界の国・地域の規制を把握する必要性につながる

<クロスボーダーの法規制の執行の問題>

あ 法適用の有無と執行の別

法規制の適用の有無と執行(調査・捜査・起訴・公判)は別の問題である

い 国外の事業者への法の執行

外国に拠点のある事業者が日本の資金決済法に違反している(ことが疑われる)場合
実際には,現地の(金融庁に相当する)行政庁と協力しつつ問い合わせをするところから始まる
現地の行政庁が日本と協力的ではないと調査や検挙ができない
※金融庁ヒアリング平成29年12月

(5)ICOと仮想通貨交換業登録の関係(まとめ)

<仮想通貨交換業者の登録の取得or委託>

発行するトークンが『仮想通貨』に該当するという前提であれば
『ア・イ』のいずれかによって販売する
ア トークンの発行者が仮想通貨交換業者登録を取得するイ トークンの発行者が登録済の仮想通貨交換業者に販売を委託する ただし,現在,仮想通貨交換業者はトークン発行業務の受託をしていない
サービス開始は平成30年の秋・冬以降になると予想されている

<国外での販売と日本の登録との関係>

あ 日本の法令の適用の有無

外国の事業者がトークンを『日本居住者に販売』する場合
→日本の法規制(仮想通貨交換業者登録)が適用される

い グレーな領域

外国Xの事業者がX国居住者に向けてトークンの販売をしている
日本からもインターネット上の販売サイトにアクセスできる
事業者は想定していなかったが日本居住者1名にトークンを販売してしまった
→日本の法規制(登録制)の適用の有無についての確定的見解(判例)はない

う 実情

国外でのICOでは『日本居住者へのトークン販売』を行わないようになってきている
(国外の仮想通貨交換業者は『日本居住者による取引』を中止するようになってきている)
日本居住者への『無償配布』により仮想通貨交換業者登録を避ける実例もある
例=オタクコイン
VCによるプレセール→VCがICOで売却(イグジット)するという流れができつつある

5 その他(予備的なテーマ)

(1)仮想通貨交換業の規制に関する問題・課題

<仮想通貨交換業の規制と他の法規との関係>

あ 改正資金決済法(概要)

仮想通貨の販売・交換・両替サービスについて
→平成29年から登録制などの法規制が施行されている

い 上限100万円の規制の不適用

『資金移動業』については送金額の上限が100万円である
※資金決済法2条2項,資金決済法施行令2条
仮想通貨交換業については,このような規制はない
※平成29年1月金融庁ヒアリング

う 通貨・法貨の解釈との関係

『通貨』・『法貨』として認めるものではない
※通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律2条,日本銀行法46条

<仮想通貨交換業者の規制に関する課題>

あ 法規制による利用者保護の限界(一般論)

一定の規制により単純である悪質な方法は防止できる
徹底した隠蔽・偽装の方法は,完全に防止できない

い 金銭の保全の確実性(概要)

ア 確実性 金銭信託と銀行預金のいずれも可能である
銀行預金は預金保険機構の保険の対象である
しかし,一定の限界がある(後記※1
イ 参考 一定の範囲のデリバティブ取引について
例;FX
→金銭信託だけに限定されている
※金商法43条の3第1項
※金商業等府令143条1号

う 仮想通貨の保全の確実性(概要)

分別管理が定められているだけである
他の管理方法に関する発想がある(後記※2

<金銭の保全の確実性(※1)

あ 金銭の保全の方法の規制

改正資金決済法の規定では
銀行預金と金銭信託のいずれもが可能となっている

い 金銭信託の確実性

金銭信託は法律上,資産が保全される

う 銀行預金の確実性

預金の種類(『ア・イ』)によって
→預金保険機構の保険が適用される
規制としてはいずれも自由に選択できる
ア 決済用預金 限度額なし(無限)
イ 一般預金 預金者1名につき上限1000万円
仮想通貨交換業者名義の預金について
→仮想通貨交換業者1社で合計1000万円である
※預金保険法54条,54条の2

<仮想通貨の保全の確実性(※2)

あ 仮想通貨の保全の方法の規制

改正資金決済法の規定では
分別管理が必要とされる

い 分別管理の限界

外部への信託よりも確実性が劣る
公的な保険が適用されない

う 仮想通貨の保全(一般論)

ア 信託 仮想通貨を信託財産として受け入れる機関がない
イ 預金保険機構の保険 仮想通貨は『金銭』扱いではない
→銀行預金の対象とならない
→預金保険機構の保険を適用させる方法がない

<改正資金決済法の仮想通貨の定義の拡張問題>

あ 想定外アイテムの適用リスク

他にも『仮想通貨の定義』に含まれるアイテムが存在する
ア ソーシャルゲーム上のトークン(通貨)イ リアルマネートレーディング上のトークン(通貨) いわゆる『RMT』である

い 想定外ルールの適用

本来想定していない対象物に『仮想通貨ルール』が適用されてしまう

う 賭博罪との関係

各種アイテムの交換サービスについて
行政への登録・監督を受けて行われている場合
→取引されるアイテムの価値が大きくなる(評価される)傾向がある
→賭博罪に該当する可能性が上がる

(2)仮想通貨に関連するサービスと法規制(全体)

<仮想通貨に関するサービス>

あ 取引所

ビットコインの購入者・売却する者のマッチング(場の提供)

い ウォレット

ビットコインを管理するサービスの提供

う ビットコイン決済

EC事業者などに『決済インフラ』を提供

え マイニング

ビットコインの採掘によるBTC生成+トランザクションフィーの受領

お ATM

ユーザーがビットコイン口座から『現地通貨』を引き出すサービスの提供

か 海外送金

通貨の異なるエリア間での送金サービスの提供
内容=法定通貨Aとビットコインの交換+ビットコインの送信+ビットコインと法定通貨Bの交換

<仮想通貨に関連するサービスの法規制(概要)>

あ 改正資金決済法

ア 仮想通貨交換業(交換所) 平成29年に改正資金決済法が施行された
仮想通貨交換業について登録制などの規制が適用される
イ 為替取引・資金移動業 仮想通貨の取引が『資金(法定通貨)の移動』のサービス(の一環)となっている場合
→為替取引に該当する
=資金移動業の登録が必要となる
仮想通貨そのものの取引は為替取引に該当しない

い 金商法

仮想通貨そのものの取引は金商法は適用されない
→今後の法整備では金商法の活用・流用はあり得る
トークンの発行に利益の分配が伴う場合は金商法の適用があり得る

う 金融商品販売法

今後の法整備で規制対象に加わる可能性もある

え 不正な取引の規制(相場操縦・のみ行為)

ア 相場操縦 仮想通貨そのものの取引は対象とならない
仮想通貨を原資産とするデリバティブは対象となる可能性がある
イ のみ行為 取引の内容によっては詐欺罪・賭博罪・出資法違反が成立する可能性がある

お 仮想通貨の貸付の民事的規制

仮想通貨の貸付について
利息制限法の規制が参考となる
ただし現時点では規制の対象とはなっていない

か 貸金業法・古物営業法

仮想通貨は『通貨』には該当しない
→仮想通貨の貸付や販売について
→貸金業・古物営業には該当しないと思われる

き 賭博罪との関係

間接的に賭博罪の成立との関係も生じる(後記※1

<仮想通貨と賭博罪(※1)

法整備を含めて社会的に仮想通貨の普及が進む
→仮想通貨の経済的価値が大きくなる
例;社会的に『通貨』同様の扱いとなる
→『一時娯楽物』に該当しない方向性となる
→偶然の影響を受ける取引が『賭博罪』成立につながる
現時点で十分に経済的価値が大きい仮想通貨も多い

6 資料(登録審査に関するガイドライン)

(1)財産的基礎の審査方法と判断基準

<登録審査における財産的基礎に関する規定>

あ 資金決済法の条文規定

(登録拒否事由の1つとして)
仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる内閣府令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない法人
※資金決済法63条の5第1項3号

い 内閣府令の規定

『あ』に規定する内閣府令で定める基準は『ア・イ』とする
ア 資本金の額が1000万円以上であることイ 純資産額が負の値でないこと ※仮想通貨交換業者に関する内閣府令9条

<財産的基礎の審査の対象となる資料・情報>

あ 審査対象とする資料

財産的基礎の審査に当たっては,『ア・イ』のとおり取り扱う
ア 新設法人の場合 開設時の貸借対照表で審査する
イ 監査証明書がない場合 最終の貸借対照表・損益計算書orこれに代わる書面の内容の確認に当たっては
必要に応じ,例えば,『う』のような書面による

い 確認する書面の例

ア 残高証明書 預金が計上されている場合
→取引先の金融機関が発行する残高証明書
イ 取引残高報告書 有価証券が計上されている場合
→取引先の証券会社が発行する取引残高報告書
ウ 固定資産評価証明書or鑑定評価書の写し 土地or建物が計上されている場合
→市区町村が発行する固定資産評価証明書or不動産鑑定士が作成した鑑定評価書の写し
エ  確定申告書・貸借対照表 法人税の確定申告書・確定申告書に添付した貸借対照表の写し

う 当事者のヒアリング

提出された資料を踏まえて
利用者財産の管理の方法を申請者に聴取する
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)①イ,ロ』・p48,49

<財産的基礎(収支見通し)の判断方法>

あ 変動要素の折り込み

収支見通しについて、競合者の参入、システムの陳腐化等、環境の悪化に伴う対応方策が確立しており、その場合でも一定の収益を見込めるような計画となっているか。

い 他の事業の収益による補填の可能性

仮想通貨交換業において損失が生じた場合に、申請者が他に営んでいる事業による収益等によって補填がなされる等、仮想通貨交換業の継続可能性に影響を及ぼすと考えられる特段の事情がある場合には、当該事情を考慮するものとする。
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)①ハ』・p49

(2)体制の整備の登録審査と業務監督の着眼点

<体制整備に関する登録拒否要件(前提・※2)>

あ 事務遂行体制

仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない
※資金決済法63条の5第1項4号

い ルール遵守体制の整備

仮想通貨に関する資金決済法の規定を遵守するために必要な体制の整備が行われていない
※資金決済法63条の5第1項5号

<事務遂行・ルール遵守体制整備の主要な審査項目>

あ 全体的な審査の方法

体制整備(前記※2)の審査について
登録申請書・添付書類をもとにする
申請者のヒアリングと実地調査などにより検証する
特に『い』の事項に留意する

い 特に留意する事項

当該仮想通貨交換業者の規模・特性等からみて,適切に対応するための態勢が整備されているか
特に,組織態勢の確認に当たっては,法令等遵守のための態勢を含め,相互けん制機能が有効に機能する内部管理部門の態勢が整備されているか。
業容に応じて,内部監査態勢を要する
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)②』・p49

<事務遂行・ルール遵守体制整備の一般的審査項目>

あ 確認する主な資料と着眼点

ア 社内規則などイ ガイドラインに掲げた主な着眼点 仮想通貨交換業者ガイドラインの中の
『監督上の着眼点』に規定した項目(後記※1
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅱ』
ウ 着眼点の例 クロスボーダー取引や現金の受払いの有無など

い 他の着眼点

ア 定款 定款に法人の目的として仮想通貨交換業を営むことが含まれているか
イ 仮想通貨交換業者協会からの情報取得 取り扱う仮想通貨の妥当性等の判断に当たっては
その判断に専門性を要するほか,詐欺的な仮想通貨もあることから
仮想通貨交換業者協会等から提供を受けた情報等を考慮し判断されているか
ウ 利用契約上の利用者への情報提供の規定 利用者との間の契約書は利用者への情報提供(内閣府令17条1項,2項)を考慮した内容となっているか
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)②』・p49

<仮想通貨交換業者の監督上の着眼点の項目(※1)

あ 経営管理等(Ⅱ−1)
い 業務の適切性等(Ⅱ−2)

ア 法令等遵守(Ⅱ−2−1) ・法令等遵守態勢(コンプライアンス)等(Ⅱ−2−1−1)
・取引時確認等の措置(Ⅱ−2−1−2)
・反社会的勢力による被害の防止(Ⅱ−2−1−3)
・不祥事件に対する監督上の対応(Ⅱ−2−1−4)
イ 利用者保護のための情報提供・相談機能等(Ⅱ−2−2) ・利用者保護措置(Ⅱ−2−2−1)
・利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理(Ⅱ−2−2−2)
・帳簿書類(Ⅱ−2−2−3)
・利用者に関する情報管理態勢(Ⅱ−2−2−4)
・苦情等への対処(Ⅱ−2−2−5)
金融ADR制度への対応も含む
ウ 事務運営(Ⅱ−2−3) ・システムリスク管理(Ⅱ−2−3−1)
・事務リスク管理(Ⅱ−2−3−2)
・外部委託(Ⅱ−2−3−3)
エ 障害者への対応(Ⅱ−2−4)

(3)情報の安全管理の条文規定(資金決済法・内閣府令)

<資金決済法の情報の安全管理の規定>

(情報の安全管理)
第六十三条の八
仮想通貨交換業者は、内閣府令で定めるところにより、仮想通貨交換業に係る情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置を講じなければならない。
※資金決済法63条の8

<内閣府令の情報の安全管理の規定(12条)>

(仮想通貨交換業に係る情報の安全管理措置)
第十二条
仮想通貨交換業者は、その行う仮想通貨交換業の業務の内容及び方法に応じ、仮想通貨交換業に係る電子情報処理組織の管理を十分に行うための措置を講じなければならない。
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令12条

<内閣府令の情報の安全管理の規定(13条)>

(個人利用者情報の安全管理措置等)
第十三条
仮想通貨交換業者は、その取り扱う個人である仮想通貨交換業の利用者に関する情報の安全管理 、従業者の監督及び当該情報の取扱いを委託する場合にはその委託先の監督について、当該情報の漏えい 、滅失又は毀損の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令13条

<内閣府令の情報の安全管理の規定(14条)>

(特別の非公開情報の取扱い)
第十四条
仮想通貨交換業者は、その取り扱う個人である仮想通貨交換業の利用者に関する人種、信条、門地、本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報(その行う仮想通貨交換業 の業務上知り得た公表されていない情報をいう。)を取り扱うときは、適切な業務の運営の確保その他必要と認められる目的以外の目的のために利用しないことを確保するための措置を講じなければならない。
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令14条

(4)委託先に対する指導の条文規定(資金決済法・内閣府令)

<資金決済法の委託先指導の規定>

(委託先に対する指導)
第六十三条の九
仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業の一部を第三者に委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)をした場合には、内閣府令で定めるところにより、当該委託に係る業務の委託先に対する指導その他の当該業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならない。
※資金決済法63条の9

<内閣府令の委託先指導の規定>

(委託業務の適正かつ確実な遂行を確保するための措置)
第十五条
仮想通貨交換業者は、その行う仮想通貨交換業の業務の一部を第三者に委託する場合には、委託する業務の内容に応じ、次に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該業務を適正かつ確実に遂行することができる能力を有する者に委託するための措置
二 委託先における当該業務の実施状況を、定期的に又は必要に応じて確認すること等により、委託先が 当該業務を適正かつ確実に遂行しているかを検証し、必要に応じ改善させる等、委託先に対する必要かつ適切な監督等を行うための措置
三 委託先が行う仮想通貨交換業に係る利用者からの苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な措置
四 委託先が当該業務を適切に行うことができない事態が生じた場合には、他の適切な第三者に当該業務 を速やかに委託する等、仮想通貨交換業の利用者の保護に支障が生じること等を防止するための措置
五 仮想通貨交換業者の業務の適正かつ確実な遂行を確保し、当該業務に係る利用者の保護を図るため必要がある場合には、当該業務の委託に係る契約の変更又は解除をする等の必要な措置を講ずるための措置
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令第15条

(5)利用者保護措置の条文規定(資金決済法・内閣府令・GL)

<資金決済法の利用者保護の規定>

(利用者の保護等に関する措置)
第六十三条の十
仮想通貨交換業者は、内閣府令で定めるところにより、その取り扱う仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認を防止するための説明、手数料その他の仮想通貨交換業に係る契約の内容についての情報の提供その他の仮想通貨交換業の利用者の保護を図り、及び仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならない。
※資金決済法63条の10

<内閣府令の利用者保護の規定(16条)>

(仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認防止)
第十六条
仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業の利用者との間で仮想通貨の交換等を行うときは、あらかじめ、当該利用者に対し、書面の交付その他の適切な方法により、取り扱う仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認を防止するための説明を行わなければならない。
2 仮想通貨交換業者は、前項に規定する説明を行う場合には、次に掲げる事項を説明するものとする。
一 取り扱う仮想通貨は、本邦通貨又は外国通貨ではないこと。
二 取り扱う仮想通貨が、特定の者によりその価値を保証されていない場合は、その旨又は特定の者によりその価値を保証されている場合は、当該者の氏名、商号若しくは名称及び当該保証の内容
三 その他取り扱う仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認防止に関し参考となると認められる事項
3 仮想通貨交換業者は、その営業所において、仮想通貨交換業の利用者と仮想通貨交換業に係る取引を行う場合には、前項第一号及び第二号に掲げる事項を当該利用者の目につきやすいように窓口に掲示しなければならない。
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令16条

<内閣府令の利用者保護の規定(17条)>

(利用者に対する情報の提供)
第十七条
仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業の利用者との間で仮想通貨交換業に係る取引を行うときは、あらかじめ、当該利用者に対し、書面の交付その他の適切な方法により、次に掲げる事項についての情報を提供しなければならない。
一 当該仮想通貨交換業者の商号及び住所
二 仮想通貨交換業者である旨及び当該仮想通貨交換業者の登録番号
三 当該取引の内容
四 取り扱う仮想通貨の概要
五 取り扱う仮想通貨の価値の変動を直接の原因として損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由
六 前号に掲げるもののほか、当該取引について利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事由を直接の原因として損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由
七 法第六十三条の十一第一項に規定する管理する方法及び次のイからニまでに掲げる区分に応じ、当該イからニまでに定める者の氏名、商号又は名称
イ 第二十条第一項第一号に掲げる方法 銀行等(法第二条第十七項第二号に規定する長期信用銀行を除く。)又は外国の法令に準拠し、外国において銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第十条第一 項第一号に掲げる業務を行う者(第二十条第一項第一号及び第三十条第二項第一号において『預金銀行等』という。)ロ 第二十条第一項第二号に掲げる方法 信託業務を営む金融機関又は外国の法令に準拠し、外国において信託業務を行う者(第二十条第一項第二号、第二十一条第一項第一号及び第三十条第二項第二号 において『信託業務を営む金融機関等』という。)ハ 第二十条第二項第一号に掲げる方法 当該仮想通貨交換業者ニ 第二十条第二項第二号に掲げる方法 同号に規定する第三者 八 利用者が支払うべき手数料、報酬若しくは費用の金額若しくはその上限額又はこれらの計算方法
九 利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所の所在地及び連絡先
十 当該取引が外国通貨で表示された金額で行われる場合においては当該金額を本邦通貨に換算した金額及びその換算に用いた標準又はこれらの計算方法
十一 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める事項
イ 指定仮想通貨交換業務紛争解決機関が存在する場合 当該仮想通貨交換業者が法第六十三条の十二 第一項第一号に定める手続実施基本契約を締結する措置を講ずる当該手続実施基本契約の相手方である指定仮想通貨交換業務紛争解決機関の商号又は名称
ロ 指定仮想通貨交換業務紛争解決機関が存在しない場合 当該仮想通貨交換業者の法第六十三条の十 二第一項第二号に定める苦情処理措置及び紛争解決措置の内容
十二 その他当該取引の内容に関し参考となると認められる事項
2 仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業の利用者との間で仮想通貨交換業に係る取引を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約を締結するときは、あらかじめ、当該利用者に対し、書面の交付その他の適切な方法により、次に掲げる事項についての情報を提供しなければならない。
一 前項第一号から第十一号までに掲げる事項
二 契約期間の定めがあるときは、当該契約期間
三 契約の解約時の取扱い(手数料、報酬又は費用の計算方法を含む。)
四 その他当該契約の内容に関し参考となると認められる事項
3 仮想通貨交換業者は、その行う仮想通貨交換業に関し、仮想通貨交換業の利用者から金銭又は仮想通貨 を受領したときは、遅滞なく、当該利用者に対し、書面の交付その他の適切な方法により、次に掲げる事 項についての情報を提供しなければならない。
一 仮想通貨交換業者の商号及び登録番号
二 当該利用者から受領した金銭の額又は仮想通貨の数量
三 受領年月日
4 仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業の利用者との間で仮想通貨交換業に係る取引を継続的に又は反復して行うときは、三月を超えない期間ごとに、当該利用者に対し、書面の交付その他の適切な方法により、取引の記録並びに管理する利用者の金銭の額及び仮想通貨の数量についての情報を提供しなければならない。
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令17条

<内閣府令の利用者保護の規定(18条)>

(その他利用者保護を図るための措置)
第十八条
仮想通貨交換業者は、その行う仮想通貨交換業に関し、仮想通貨交換業の利用者の保護を図るため、次に掲げる措置を講じなければならない。
一 仮想通貨交換業者が、その行う仮想通貨交換業について、仮想通貨の特性、取引の内容その他の事情に応じ、利用者の保護を図るために必要な体制を整備する措置
二 仮想通貨交換業者が、その行う仮想通貨交換業について、捜査機関等から当該仮想通貨交換業に係る取引が詐欺等の犯罪行為に利用された旨の情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪行為が行 われた疑いがあると認めるときは、当該取引の停止等を行う措置
三 仮想通貨交換業者が、電気通信回線に接続している電子計算機を利用して、利用者と仮想通貨に係る取引を行う場合にあっては、当該利用者が当該仮想通貨交換業者と他の者を誤認することを防止するた めの適切な措置
四 仮想通貨交換業者が、利用者から電気通信回線に接続している電子計算機を利用して仮想通貨交換業に係る取引に係る指図を受ける場合にあっては、当該指図の内容を、当該利用者が当該指図に係る電子計算機の操作を行う際に容易に確認し及び訂正することができるようにするための適切な措置
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令18条

<内閣府令の利用者保護の規定(19条)>

(社内規則等)
第十九条
仮想通貨交換業者は、その行う仮想通貨交換業の業務の内容及び方法に応じ、仮想通貨交換業の利用者の保護を図り、及び仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行を確保するための措置(当該仮想通貨交 換業者が講ずる法第六十三条の十二第一項に定める措置の内容の説明及び犯罪を防止するための措置を含む。)に関する社内規則等を定めるとともに、従業者に対する研修、委託先に対する指導その他の当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備しなければならない。
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令18条

<ガイドラインの利用者保護の規定>

II-2-2 利用者保護のための情報提供・相談機能等
II-2-2-1 利用者保護措置
II−2−2-1-1 意義
法第63条の10及び内閣府令第16条から第19条までは、仮想通貨交換業者に対し、仮想通貨交換業に係る取引開始時又は契約締結時の利用者に対する情報提供、金銭又は仮想通貨等受領時の受領情報の提供、その他利用者保護を図るための措置を義務付けている。
仮想通貨交換業者の監督に当たっては、利用者保護のための態勢整備の適切性を確認するため、ヒアリング等の日常の監督事務を通じて、仮想通貨交換業に係る取引の内容を把握するとともに、例えば、以下の点に留意するものとする。
II−2−2-1-2 主な着眼点

(1)一般的な着眼点

①利用者に対する説明や情報提供を行うに当たっては、取り扱う仮想通貨や取引形態に応じて、内閣府令第16条第1項及び第2項各号、第17条第1項各号及び第2項各号並びに第4項に規定された事項を説明する態勢が整備されているか。
さらに、当該利用者の知識・経験に照らし、必要に応じて書面を交付(電磁的方法を含む)した上で説明を行うこととするなど、適切に情報提供が行われる態勢を整備しているか。
(注)取引形態に応じた説明態勢としては、例えば、インターネットを通じた取引の場合には、利用者がその操作するパソコンの画面上に表示される説明事項を読み、その内容を理解した上で画面上のボタンをクリックする等の方法、対面取引の場合には書面交付や口頭による説明を行った上で当該事実を記録しておく方法が、それぞれ考えられる。
②利用者に対する情報提供義務、受領情報提供義務等、法令において定められている利用者保護措置について社内規則等を定め、役職員が当該社内規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、社内研修等により周知徹底を図っているか。
③利用者保護措置の実効性を確保するため、内部管理・内部監査等の内部けん制機能は十分発揮されているか。
④利用者保護措置の実効性の検証を踏まえて、仮想通貨交換業に係る業務の態勢を見直すこととしているか。
⑤苦情・相談態勢の整備に当たっては、事務処理ミスがあった場合等の手続きが明確に規定され、円滑に処理される態勢が整備されているか。

(2)利用者に対する情報の提供

①内閣府令第16条第1項及び第2項各号、第17条第1項各号及び第2項各号並びに第4項に規定された事項について、利用者の知識、経験等を勘案して、取引形態に応じて、適切に説明を行っているか。
(注1)仮想通貨交換業者が、その行う仮想通貨交換業に関して、レバレッジ取引を提供する場合、利用者は提供されるレバレッジ倍率に比例して高額の損失を被るリスクを負うこととなるため、例えば、当該レバレッジ取引によるリスクの大きさ等も適切に説明することが考えられる。
(注2)内閣府令第17条第1項第6号に基づき説明する事項としては、例えば、仮想通貨の特性(電子機器その他の物に電子的方法により記録される財産的価値であり、電子情報処理組織を用いて移転するものであること)や、サイバー攻撃による仮想通貨の消失・価値減少リスクがあることが考えられる。
②利用者が当該仮想通貨交換業者以外の者に対しても手数料、報酬若しくは費用(以下『手数料等』という。)を支払う必要がある場合には、当該委託先に対するものも含めて手数料等の総額若しくはその上限額又はこれらの計算方法を説明しているか。
③手数料等の実額ではなく上限額や計算方法のみを説明する場合には、利用者が実際に支払うこととなる手数料等の総額の見込み額又は計算例を併せて説明することとしているか。
④法第63条の10及び内閣府令第17条の趣旨を踏まえ、同条第1項第12号に規定する事項として、利用者が当該仮想通貨交換業に係る取引に係る契約を締結するか否かの判断を行うに際して、参考となる事項を必要に応じて説明しているか。
(注)内閣府令第17条第1項第12号に基づき説明する事項としては、例えば、以下の事項が考えられる。
・仮想通貨交換業に係る取引に関する金銭及び仮想通貨の預託の方法
・当該取引に関する金銭及び仮想通貨の状況を確認する方法
⑤内閣府令第17条第2項第4号に規定する事項として、利用者が口座開設契約等を締結するか否かの判断を行うに際して、参考となる事項を必要に応じて説明しているか。
(注)内閣府令第17条第2項第4号に基づき説明する事項としては、例えば、以下の事項が考えられる。
・上記4(注)に掲げた事項
・暗証番号の設定その他のセキュリティに関する事項
・口座開設契約等により、利用者ごとに仮想通貨交換業者が受け入れられる金額に上限がある場合には、当該上限金額
⑥利用者保護のための制度として利用者が預託した金銭・仮想通貨と仮想通貨交換業者自らの財産との分別管理義務が設けられている旨及び利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理の方法を具体的に説明しているか。

(3)受領情報の提供

①提供する情報の記載内容は、利用者にとって明確でわかりやすい記載内容となっているか。
②書面の交付に代えてその他適切な方法により提供することについて、承諾又は撤回の意思表示を受ける場合には、利用者の承諾等があったことを記録しているか。

(4)非対面取引を行う際の措置

①ホームページのリンクに関し、利用者が取引相手を誤認するような構成になっていないか。また、フィッシング詐欺対策については、利用者がアクセスしているサイトが真正なサイトであることの証明を確認できるような措置を講じる等、業務に応じた適切な不正防止策を講じているか。
②利用者が仮想通貨交換業に係る取引についての指図内容を仮想通貨交換業者に送信する前に、当該指図内容を表示した上で利用者に対して内容の確認を求めるなど、利用者が仮想通貨交換業に係る取引に関する指図内容を容易に確認・訂正できるような対応を行っているか。

(5)利用者保護のための態勢整備

仮想通貨交換業者は、内閣府令第18条各号に基づき、その行う仮想通貨交換業に関して、仮想通貨の特性、取引の内容その他の事情に応じ、仮想通貨交換業の利用者の保護を図るために必要な態勢を整備する措置等を講じる必要がある。
(注)仮想通貨交換業者が、その行う仮想通貨交換業に関して、レバレッジ取引を提供する場合には、利用者は提供されるレバレッジ倍率に比例して高額の損失を被るリスクを負うこととなるため、利用者保護のための態勢整備として、例えば、仮想通貨の特性や取引内容に応じて、適切なレバレッジ倍率やロスカットルール等を設定することが考えられる。
※仮想通貨交換業ガイドライン『II-2-2 利用者保護のための情報提供・相談機能等』・p16〜19

(6)利用者財産の管理の条文規定(資金決済法・内閣府令)

<資金決済法の利用者財産の管理の規定>

(利用者財産の管理)
第六十三条の十一
仮想通貨交換業者は、その行う仮想通貨交換業に関して、内閣府令で定めるところに より、仮想通貨交換業の利用者の金銭又は仮想通貨を自己の金銭又は仮想通貨と分別して管理しなければならない。
2 仮想通貨交換業者は、前項の規定による管理の状況について、内閣府令で定めるところにより、定期に、公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認 会計士を含む。第六十三条の十四第三項において同じ。)又は監査法人の監査を受けなければならない。
※資金決済法63条の11

<内閣府令の利用者財産の管理の規定(20条)>

(利用者財産の管理)
第二十条
仮想通貨交換業者は、法第六十三条の十一第一項の規定に基づき仮想通貨交換業の利用者の金銭を管理するときは、次に掲げる方法により、当該金銭を管理しなければならない。
一 預金銀行等への預金又は貯金(当該金銭であることがその名義により明らかなものに限る。)
二 信託業務を営む金融機関等への金銭信託で元本補 の契約のあるもの
2 仮想通貨交換業者は、法第六十三条の十一第一項の規定に基づき利用者の仮想通貨を管理するときは、次の各号に掲げる仮想通貨の区分に応じ、当該各号に定める方法により、当該仮想通貨を管理しなければならない。
一 仮想通貨交換業者が自己で管理する仮想通貨利用者の仮想通貨と自己の固有財産である仮想通貨とを明確に区分し、かつ、当該利用者の仮想通貨についてどの利用者の仮想通貨であるかが直ちに判別できる状態(当該利用者の仮想通貨に係る各利用者の数量が自己の帳簿により直ちに判別できる状態を含む。次号において同じ。)で管理する方法
二 仮想通貨交換業者が第三者をして管理させる仮想通貨当該第三者において、利用者の仮想通貨と自己の固有財産である仮想通貨とを明確に区分させ、かつ、当該利用者の仮想通貨についてどの利用者の仮想通貨であるかが直ちに判別できる状態で管理させる方法
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令20条

<内閣府令の利用者財産の管理の規定(21条)>

(利用者区分管理信託の要件等)
第二十一条
前条第一項第二号に規定する金銭信託(以下『利用者区分管理信託』という。)に係る契約は、次に掲げる要件の全てを満たさなければならない。
一 仮想通貨交換業者を委託者とし、信託業務を営む金融機関等を受託者とし、かつ、当該仮想通貨交換業者の行う仮想通貨交換業に係る取引に係る利用者を元本の受益者とするものであること。
二 受益者代理人を選任し、当該受益者代理人のうち少なくとも一の者は、弁護士、弁護士法人、公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士、税理士法人又は金融庁長官の指定する者(以下この項において『弁護士等』という。)をもって充てられるものであること。
三 複数の利用者区分管理信託を行う場合にあっては、当該複数の利用者区分管理信託について同一の受益者代理人を選任するものであること。
四 仮想通貨交換業者が次に掲げる要件に該当することとなった場合には、弁護士等である受益者代理人のみがその権限を行使するものであること(当該受益者代理人が、他の受益者代理人が権限を行使する ことを認める場合を除く。)。
イ 法第六十三条の十七第一項又は第二項の規定により法第六十三条の二の登録を取り消されたとき。
ロ 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立てを行ったとき(外国仮想通貨交換業者にあっては、国内において破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始若しくは特別清算開始の申立てを行ったとき、又は本店の所在する国において当該国の法令に基づき同種類の申立てを行ったとき。)。
ハ 仮想通貨交換業の廃止(外国仮想通貨交換業者にあっては、国内に設けた全ての営業所における仮想通貨交換業の廃止。以下ハにおいて同じ。)若しくは解散(外国仮想通貨交換業者にあっては、国内に設けた営業所の清算の開始。以下ハにおいて同じ。)をしたとき又は法第六十三条の二十第三項の規定による仮想通貨交換業の全部又は一部の廃止若しくは解散の公告をしたとき。
ニ 法第六十三条の十七第一項の規定による業務の全部又は一部の停止の命令を受けたとき。
五 信託財産の元本の評価額が利用者区分管理必要額(個別利用者区分管理金額(仮想通貨交換業者の行 う仮想通貨交換業に関し管理する利用者の金銭を当該利用者ごとに算定した額をいう。第十二号及び次 条において同じ。)の合計額をいう。以下この項及び次条において同じ。)に満たない場合には、満た ないこととなった日の翌日から起算して二営業日以内に、仮想通貨交換業者によりその不足額に相当する金銭が信託財産に追加されるものであること。
六 利用者区分管理信託に係る信託財産の元本の評価額を当該利用者区分管理信託の元本額とするものであること。
七 次に掲げる場合以外の場合には、利用者区分管理信託に係る契約の全部又は一部の解約を行うことができないものであること。
イ 信託財産の元本の評価額が利用者区分管理必要額を超過する場合において、その超過額の範囲内で利用者区分管理信託に係る契約の全部又は一部の解約を行うとき。
ロ 前条第一項第一号に規定する方法により管理すること又は他の利用者区分管理信託に係る信託財産として信託することを目的として利用者区分管理信託に係る契約の全部又は一部の解約を行う場合
八 前号イ又はロに掲げる場合に行う利用者区分管理信託に係る契約の全部又は一部の解約に係る信託財産を委託者に帰属させるものであること。
九 弁護士等である受益者代理人が必要と判断した場合には、利用者の受益権が当該受益者代理人により全ての利用者について一括して行使されるものであること。
十 利用者の受益権が弁護士等である受益者代理人により一括して行使された場合には、当該受益権に係る信託契約を終了することができるものであること。
十一 利用者が受益権を行使する場合にそれぞれの利用者に支払われる金額が、当該受益権の行使の日における元本換価額に、当該日における利用者区分管理必要額に対する当該利用者に係る個別利用者区分管理金額の割合を乗じて得た額(当該額が当該個別利用者区分管理金額を超える場合には、当該個別利用者区分管理金額)とされていること。
十二 利用者が受益権を行使する日における元本換価額が利用者区分管理必要額を超過する場合には、当該超過額は委託者に帰属するものであること。
2 前項第十一号及び第十二号の『元本換価額』とは、利用者区分管理信託に係る信託財産の元本額をいう。
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令21条

<内閣府令の利用者財産の管理の規定(22条)>

(個別利用者区分管理金額等の算定等)
第二十二条
利用者区分管理信託の方法により管理する場合にあっては、仮想通貨交換業者は、個別利用者区分管理金額及び利用者区分管理必要額を毎日算定しなければならない。
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令22条

<内閣府令の利用者財産の管理の規定(23条)>

(分別管理監査)
第二十三条
仮想通貨交換業者は、法第六十三条の十一第二項の規定に基づき、同条第一項の規定による管理の状況について、金融庁長官の指定する規則の定めるところにより、毎年一回以上、公認会計士又は監査法人の監査(以下『分別管理監査』という。)を受けなければならない。
2 次に掲げる者は、分別管理監査をすることができない。
一 公認会計士法の規定により、法第六十三条の十一第二項の規定による監査に係る業務をすることができない者
二 仮想通貨交換業者の子会社(会社法第二条第三号に規定する子会社をいう。)若しくはその取締役、会計参与、監査役若しくは執行役から公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者
三 監査法人でその社員の半数以上が前号に掲げる者であるもの
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令23条

<内閣府令の利用者財産の管理の規定(30条)>

(利用者財産の管理に関する報告書)
第三十条
法第六十三条の十四第二項の報告書は、別紙様式第十三号により作成し、事業年度の期間を三月ごとに区分した各期間ごとに、当該期間経過後一月以内に金融庁長官に提出しなければならない。
2 前項の報告書を提出しようとするときは、当該報告書にその写し二通及び次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める書類を添付して、金融庁長官に提出しなければならない。
一 第二十条第一項第一号の方法により利用者の金銭を管理する場合
預金又は貯金の口座のある預金銀行等が発行する残高証明書
二 第二十条第一項第二号の方法により利用者の金銭を管理する場合
信託業務を営む金融機関等が発行する残高証明書
三 第二十条第二項各号の方法により利用者の仮想通貨を管理する場合
電磁的記録に記録された当該仮 想通貨の残高に係る情報を書面に出力したものその他の仮想通貨の残高を証明するもの
四 分別管理監査を受けた場合
公認会計士又は監査法人から提出された直近の報告書の写し
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令30条

(7)紛争解決機関との契約の条文規定(資金決済法・内閣府令)

<資金決済法の紛争解決機関との契約締結の規定>

(指定仮想通貨交換業務紛争解決機関との契約締結義務等)
第六十三条の十二
仮想通貨交換業者は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める措置を 講じなければならない。
一 指定仮想通貨交換業務紛争解決機関(指定紛争解決機関であってその紛争解決等業務の種別が仮想通貨交換業務であるものをいう。以下この条において同じ。)が存在する場合一の指定仮想通貨交 換業務紛争解決機関との間で仮想通貨交換業に係る手続実施基本契約(第九十九条第一項第八号に規定する手続実施基本契約をいう。次項において同じ。)を締結する措置
二 指定仮想通貨交換業務紛争解決機関が存在しない場合仮想通貨交換業に関する苦情処理措置及び紛争解決措置
2 仮想通貨交換業者は、前項の規定により手続実施基本契約を締結する措置を講じた場合には、当該手続実施基本契約の相手方である指定仮想通貨交換業務紛争解決機関の商号又は名称を公表しなければな らない。
3 第一項の規定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める期間においては、適用しない。
一 第一項第一号に掲げる場合に該当していた場合において、同項第二号に掲げる場合に該当することとなったとき第百一条第一項において読み替えて準用する銀行法第五十二条の八十三第一項の規定 による紛争解決等業務の廃止の認可又は第百条第一項の規定による指定の取消しの時に、同号に定める措置を講ずるために必要な期間として内閣総理大臣が定める期間
二 第一項第一号に掲げる場合に該当していた場合において、同号の一の指定仮想通貨交換業務紛争解 決機関の紛争解決等業務の廃止が第百一条第一項において読み替えて準用する銀行法第五十二条の八十三第一項の規定により認可されたとき、又は同号の一の指定仮想通貨交換業務紛争解決機関の第九十九条第一項の規定による指定が第百条第一項の規定により取り消されたとき(前号に掲げる場合を 除く。)その認可又は取消しの時に、第一項第一号に定める措置を講ずるために必要な期間として内閣総理大臣が定める期間 三第一項第二号に掲げる場合に該当していた場合において、同項第一号に掲げる場合に該当することとなったとき第九十九条第一項の規定による指定の時に、同号に定める措置を講ずるために必要な期間として内閣総理大臣が定める期間
4 第一項第二号の『苦情処理措置』とは、利用者からの苦情の処理の業務に従事する使用人その他の従 業者に対する助言若しくは指導を消費生活に関する消費者と事業者との間に生じた苦情に係る相談その他の消費生活に関する事項について専門的な知識経験を有する者として内閣府令で定める者に行わせる こと又はこれに準ずるものとして内閣府令で定める措置をいう。
5 第一項第二号の『紛争解決措置』とは、利用者との紛争の解決を認証紛争解決手続(裁判外紛争解決 手続の利用の促進に関する法律第二条第三号に規定する認証紛争解決手続をいう。)により図ること又 はこれに準ずるものとして内閣府令で定める措置をいう。
※資金決済法63条の12

<内閣府令の紛争解決機関との契約締結の規定(24条)>

(消費生活に関する事項について専門的な知識経験を有する者)
第二十四条
法第六十三条の十二第四項に規定する内閣府令で定める者は、次に掲げるいずれかの資格を有 し、かつ、消費生活相談(消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第十三条第三項第五号イに規定する消費生活相談をいう。)に応ずる業務に従事した期間が通算して五年以上である者とする。
一 独立行政法人国民生活センターが付与する消費生活専門相談員の資格
二 一般財団法人日本産業協会が付与する消費生活アドバイザーの資格
三 一般財団法人日本消費者協会が付与する消費生活コンサルタントの資格
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令24条

<内閣府令の紛争解決機関との契約締結の規定(25条)>

(仮想通貨交換業に関する苦情処理措置及び紛争解決措置)
第二十五条
法第六十三条の十二第四項に規定する苦情処理措置として内閣府令で定める措置は、次の各号 のいずれかとする。
一 次に掲げる全ての措置を講じること。
イ 仮想通貨交換業関連苦情(法第百一条第一項において読み替えて準用する銀行法第二条第十九項に規定する資金移動業等関連苦情のうち仮想通貨交換業務に関するものをいう。以下この項及び第三項において同じ。)の処理に関する業務を公正かつ的確に遂行するに足りる業務運営体制を整備すること。ロ 仮想通貨交換業関連苦情の処理に関する業務を公正かつ的確に遂行するための社内規則(当該業務に関する社内における責任分担を明確化する規定を含むものに限る。)を整備すること。ハ 仮想通貨交換業関連苦情の申出先を利用者に周知し、並びにイの業務運営体制及びロの社内規則を公表すること。 二 認定資金決済事業者協会が行う苦情の解決により仮想通貨交換業関連苦情の処理を図ること。
三 消費者基本法(昭和四十三年法律第七十八号)第十九条第一項又は第二十五条に規定するあっせんにより仮想通貨交換業関連苦情の処理を図ること。
四 令第二十四条各号に掲げる指定を受けた者が実施する苦情を処理する手続により仮想通貨交換業関連苦情の処理を図ること。
五 仮想通貨交換業関連苦情の処理に関する業務を公正かつ的確に遂行するに足りる経理的基礎及び人的構成を有する法人(法第九十九条第一項第一号に規定する法人をいう。次項第四号において同じ。)が 実施する苦情を処理する手続により仮想通貨交換業関連苦情の処理を図ること。
2 法第六十三条の十二第五項に規定する紛争解決措置として内閣府令で定める措置は、次の各号のいずれかとする。
一 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第三十三条第一項に規定する会則若しくは当該会則の規定により定められた規則に規定する機関におけるあっせん又は当該機関における仲裁手続により仮想通貨 交換業関連紛争(法第百一条第一項において読み替えて準用する銀行法第二条第二十項に規定する資金 移動業等関連紛争のうち仮想通貨交換業務に関するものをいう。以下この条において同じ。)の解決を図ること。
二 消費者基本法第十九条第一項若しくは第二十五条に規定するあっせん又は同条に規定する合意による解決により仮想通貨交換業関連紛争の解決を図ること。
三 令第二十四条各号に掲げる指定を受けた者が実施する紛争の解決を図る手続により仮想通貨交換業関連紛争の解決を図ること。
四 仮想通貨交換業関連紛争の解決に関する業務を公正かつ的確に遂行するに足りる経理的基礎及び人的構成を有する法人が実施する紛争の解決を図る手続により仮想通貨交換業関連紛争の解決を図ること。
3 前二項(第一項第五号及び前項第四号に限る。)の規定にかかわらず、仮想通貨交換業者は、次の各号のいずれかに該当する法人が実施する手続により仮想通貨交換業関連苦情の処理又は仮想通貨交換業関連紛争の解決を図ってはならない。
一 法又は弁護士法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない法人
二 法第百条第一項の規定により法第九十九条第一項の規定による指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない法人又は令第二十四条各号に掲げる指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない法人
三 その業務を行う役員(役員が法人であるときは、その職務を行うべき者を含む。以下この号において同じ。)のうちに、次のいずれかに該当する者がある法人
イ 禁錮以上の刑に処せられ、又は法若しくは弁護士法の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者ロ 法第百条第一項の規定により法第九十九条第一項の規定による指定を取り消された法人において、その取消しの日前一月以内にその法人の役員であった者でその取消しの日から五年を経過しない者又は令第二十四条各号に掲げる指定を取り消された法人において、その取消しの日前一月以内にその法人の役員であった者でその取消しの日から五年を経過しない者 ※仮想通貨交換業者に関する内閣府令25条

(参考)
https://www.mc-law.jp/kigyohomu/26800/

https://www.mc-law.jp/kigyohomu/26801/

https://www.mc-law.jp/kigyohomu/26115/

https://www.mc-law.jp/kigyohomu/24539/

参考
参考
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