1 パブリシティ権侵害の損害賠償額の算定
2 パブリシティ権侵害による損害賠償額算定(全体)
3 モデル料金基準
4 広告使用許諾料基準
5 印税基準
6 モデル料金基準と印税基準を併用した裁判例
7 パブリシティ権侵害による慰謝料

1 パブリシティ権侵害の損害賠償額の算定

有名な人の写真(肖像)などは商品価値があります。そこで法的にもパブリシティ権として認められます。
そして,無断で有名な人の写真を商用利用するとパブリシティ権の侵害となり,差止請求や損害賠償請求が認められます。
本記事では,パブリシティ権侵害による損害賠償額の算定方法(基準)について説明します。

2 パブリシティ権侵害による損害賠償額算定(全体)

パブリシティ権侵害により賠償する損害の内容は,大きく,財産的損害精神的損害(慰謝料)に分けられます。
財産的損害については主に3つの算定方法があります。精神的損害については,原則として認められません。

<パブリシティ権侵害による損害賠償額算定(全体)>

あ 財産的損害

適法な販売における金額を基準とすることが多い
具体的には,主に3つの算定基準(方法)がある
ア モデル料金基準(後記※1)
イ 広告使用許諾料基準(後記※2)
ウ 印税基準(後記※3)

い 精神的損害(慰謝料)

精神的損害は認めない傾向がある
認められる場合でも比較的低い金額となる(後記※4)
※西口元ほか編著『名誉毀損の慰謝料算定−名誉・信用・プライバシー・肖像・パブリシティ侵害の慰謝料算定実務−』学陽書房2015年p28,99

3 モデル料金基準

財産的損害の算定方法の1つとして,モデル料金を基準とするものがあります。
有名な方の写真がモデルとして使われたようなケースではこの算定方法がとられます。

<モデル料金基準(※1)>

あ 典型的な事例

芸能人(アイドル・女優)の写真などを無断で雑誌に掲載した

い 損害額の算定方法

当該芸能人の広告や雑誌掲載のモデル料金を前提(基準)とする
掲載された写真の大きさなどを考慮して賠償額を認定する
※東京高裁平成18年4月26日

4 広告使用許諾料基準

財産的損害の算定方法の1つに,広告使用許諾料を基準とするものがあります。
広告の中で有名な方の写真が使われたというケースではこの算定方法がとられます。

<広告使用許諾料基準(※2)>

あ 典型的な事例

芸能人の写真を無断で商品の広告に掲載した

い 損害額の算定方法

当該芸能人の肖像の広告使用許諾料を基準にする

う 金額算定の実例

元スポーツ選手のタレントについて
賠償額を1000万円とした
※東京地裁平成17年3月31日

5 印税基準

財産的損害の算定方法の1つに,印税を基準とするものがあります。
本来,通常に掲載を許諾する場合の料金として印税方式がとられるような使われ方をしたケースではこの算定方法がとられます。

<印税基準(※3)>

あ 典型的な事例

芸能人の写真などを書籍に掲載して販売した

い 損害額の算定方法

被害者が書籍の出版にあたり,その肖像写真・ジャケット写真などの使用を許諾した場合に,被害者が得る印税を基準とする
著作権法114条3項を類推適用する見解である

う 金額算定の実例

世界的に著名なロックバンドの写真の掲載について
小売価格の10%相当額を基準とした上で調整をした
→(販売の差止とともに)賠償額を40万円とした
※東京地裁平成10年1月21日;キング・クリムゾン事件第1審

6 モデル料金基準と印税基準を併用した裁判例

以上の3つの財産的損害の算定方法は,使う場面が明確に決まっているわけではありません。実際に複数の算定方法を併用する実例もあります。

<モデル料金基準と印税基準を併用した裁判例>

あ 侵害行為

人気アイドルグループメンバーらの写真などを無断で書籍に掲載した

い 損害額の算定

写真集出演料印税を基準にした
書籍の本体価格の10%に相当する額に発行部数を乗じた金額とした
※東京地裁平成25年4月26日;KAT-TUN事件

7 パブリシティ権侵害による慰謝料

以上の説明は,パブリシティ権侵害による損害のうち財産的損害についてのものでした。
これとは別に精神的損害(慰謝料)も考えられます。
しかし,原則としてパブリシティ権侵害による慰謝料は否定されます。
例外的に,イメージやブランドが著しく低下して,その後の芸能活動にもマイナス効果が残るようなケースや,氏名を無断で使われた,つまり,なりすましによってイメージが悪化したようなケースでは,財産的損害とは別に慰謝料も認められることがあります。

<パブリシティ権侵害による慰謝料(※4)>

あ 原則=慰謝料を認めない

特段の事情がない限り,経済的被害が填補されれば,損害は回復されたものと解する

い イメージ・ブランドの著しい低下

イメージorブランド力が低下した(価値の毀損が生じた)
さらにこれが財産的損害の賠償では償えない場合
→慰謝料を認める
※東京高裁平成3年9月26日;おニャン子クラブ事件(慰謝料は否定)

う 自己決定権の侵害

氏名などの使用に関する自己決定権の侵害がある場合
→慰謝料を認める
30万円を認めた裁判例がある
※東京地裁平成20年12月24日

本記事では,パブリシティ権の侵害による損害賠償額の算定方法を説明しました。
実際には個別的な事情の主張と立証によって結果は大きく違ってきます。
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