1 事業所得として判定する『事業的規模』の基準
2 事業所得における『事業的規模』の判断基準
3 『事業的規模』の判断の具体例

1 事業所得として判定する『事業的規模』の基準

所得税法上の所得の分類の中に,事業所得があります。
当然,事業所得と他の所得分類では税率や課税方式が異なります。
そこで,事業所得に該当するかどうかが問題となるケースは多いです。
本記事では,事業所得に該当するかどうかを判定する判断基準と,判断の具体例を説明します。

2 事業所得における『事業的規模』の判断基準

事業所得として判定される判断基準は,所得税法上に明記されているわけではありません。
常識的に,取引の規模が事業といえる程度かどうかということで判断します。
最高裁判例でも,多くの事情を元にして判断するものとされています。

<事業所得における『事業的規模』の判断基準>

あ 判断基準

具体的な株式等の取引行為が『対価を得て継続的に行う事業』に該当するか否かについて
一般社会通念に照らして決める
その判断に際しては,営利性・有償性の有無,継続性・反覆性の有無のほかに事業としての社会的客観性の有無が問われなければならない

い 判断材料

取引の種類,取引における自己の役割,取引のための人的・物的設備の有無,資金の調達方法,取引に費した精神的・肉体的労力の程度,その者の職業・社会的地位などの諸点を検討する
※最高裁昭和53年10月31日(第1審=大阪地裁昭和49年2月6日)

3 『事業的規模』の判断の具体例

事業的規模についての最高裁判例の基準(前記)だけで確実にハッキリと判定できるわけではありません。
この点,実際に雑所得であると判断した裁判例をみると,どのような事情が考慮されたのかが分かります。

<『事業的規模』の判断の具体例>

あ 事業的規模を肯定する方向の事情

売買回数や売買株数が多い
多額の資本を投入して継続的に株式の信用取引をしていた
株式の信用取引について青色申告の承認申請を行っていた

い 事業的規模を否定する方向の事情

ア 投機的な性格
信用取引は短期間における株価の変動を利用して売買差益を稼ぐものである
→投機性が強い
→長期間行っている者の大半が最終的には損失に終わっている
事業になじみにくい性格である
イ 収益・投入時間の程度
会社役員として毎日職務に専念していた
生活の資本の大部分は役員報酬であった
株式取引は職務の余暇に行っているに過ぎなかった
ウ 投下資本の程度
株式取引を継続的に行うための人的・物的設備はなかった
株式取引のための資金は個人の資金の範囲内にとどまっていた
株式取引に要した必要経費はほとんど株式売買に直接要した費用のみであった

う 総合判断

『あ・い』から株式取引は『事業』に該当しない
→雑所得として扱う
※最高裁昭和53年10月31日(第1審=大阪地裁昭和49年2月6日)
※名古屋地裁昭和60年4月26日;商品先物取引について同趣旨

もちろん,実際のケースが,この判例の事案にピッタリと合致するわけではないはずです。判断のブレがある(予測可能性が低い)ことは否定できません。