1 一般的不法行為の成立要件(概要)
2 一般的不法行為の条文規定(引用)
3 一般的不法行為の成立要件の内容
4 主観/客観的要件の分類
5 見解による成立要件の内容の違い
6 権利または利益の侵害の要件(概要)

1 一般的不法行為の成立要件(概要)

不法行為による責任は実務の多くの場面で使われます。
一般的な不法行為の責任をベースにして、多くの類似する規定が作られています。
例えば慰謝料の規定(民法710条)は、一般的不法行為をベースにする規定の代表的なものです。
詳しくはこちら|慰謝料(精神的損害の賠償責任)の基本的理論
また、多くの法解釈の中で不法行為の基本的な理論が使われています。
本記事では、不法行為の一般的な規定のうち、要件の内容の分類を説明します。

2 一般的不法行為の条文規定(引用)

まずは、解釈の大元となる条文の規定を引用します。

<一般的不法行為の条文規定(引用)>

(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
※民法709条

3 一般的不法行為の成立要件の内容

一般的不法行為の条文は非常にシンプルです(前記)。
この内容のうち、成立要件は5つに分けられます。

<一般的不法行為の成立要件の内容(※1)

あ 責任能力

加害者に責任能力がある

い 故意・過失
う 違法性

他人の権利または利益を違法に侵害した

え 損害の発生
お 因果関係

加害行為と損害の発生に因果関係がある
※民法709条
※遠藤浩ほか『基本法コンメンタール 債権各論2 第4版』日本評論社1996年p32

なお、損害の発生・因果関係(え・お)を1グループとする分類もあります。
本記事では分かりやすいように2つに分けてあります。

4 主観/客観的要件の分類

前記の要件の内容の5項目は、大きく2種類に分けられます。

<主観/客観的要件の分類>

あ 基本的事項

(前記※1)の要件の内容について
主観的/客観的要件(い・う)のように分類できる

い 主観的要件

責任能力・故意・過失((前記※1)の『あ・い』)

う 客観的要件

違法性・損害の発生・因果関係((前記※1)の『う・え・お』)
※遠藤浩ほか『基本法コンメンタール 債権各論2 第4版』日本評論社1996年p32

5 見解による成立要件の内容の違い

不法行為の要件は主観的要件と客観的要件に分類できます(前記)。
他方、主観的・客観的な性質に分類することは適切ではないという方向の見解もあります。
前記の通説による分類とは多少異なる分類の仕方もあるのです。

<見解による成立要件の内容の違い>

あ 通説

(前記※1)の要件の内容について
→通説によるものである

い 他の見解

主観的要件・客観的要件を接近・融合する方向の見解もある
『故意・過失』と『違法性』について
=(前記※1)の『い・う』
→一体化する
※遠藤浩ほか『基本法コンメンタール 債権各論2 第4版』日本評論社1996年p32

6 権利または利益の侵害の要件(概要)

民法709条の条文には、権利または(法律上保護される)利益の侵害という記述があります。要件としては、権利または利益の侵害で1つの項目なのか、違法性という項目の中身なのか、という違いがあります。いずれにしても、権利または利益の侵害については時代とともに解釈や条文が変わってきています。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|民法709条の「権利」「利益」侵害の要件(判例の変遷と条文化)

本記事では、一般的不法行為の成立要件の分類について説明しました。
成立要件の内容の分類についての見解は、具体的な事案の結論に直接影響を与えるわけではありませんが、いろいろな主張の中で役立つことがあります。
実際に、損害賠償に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。