【『出資金』に関する元本保証・既遂時期・脱法行為の解釈論】
1 払戻し=元本保証の意思表示の内容
本記事では『出資金』の規制に関する『受入れ』以外の細かい解釈を説明します。
なお、実務では『出資金』の規制はほぼ適用されません。本記事の解釈論は実務では使わないと言えます。
『出資金』に関して禁止されるのは元本保証です。条文上は『出資の払戻し』という表現が使われています。
この解釈の基本的事項をまとめます。
払戻し=元本保証の意思表示の内容
あ 前提
『出資金』に関する禁止行為について
→『出資の払戻しの表示行為』が含まれる
い 『出資の払戻し』の意味
共同事業から脱退する
脱退の際、提供した財産の返還を受ける
う 出資の払戻しの意思表示の内容
出資金全額以上を払い戻す旨の意思表示
つまり、元本返還を約束・保証することである
明示的・暗黙の表示のいずれも含む
※出資法1条
※吉田淳一『出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の概要』捜研17巻10号p42
2 元本保証の意思表示の具体例
出資金に元本保証があると違法となります(前記)。
実際には、元本保証はいろいろなバラエティーがあります。具体例をまとめます。
元本保証の意思表示の具体例
あ 元本+利益を保証する
出資金元本に加え、確定利息・利益配当の支払を約束する
い 『元金』回避のための『配当』名目
『出資金元本』という名目での返還はしない
『配当』という名義で実質的な出資金元本の払戻を約束する
う 明言ではないが実質的な保証
過去における出資金の払戻状況一覧表を示す
内容は、常に出資金の全額orこれを超える金額に該当している
え 『安心確実』というセールストーク
過去において出資金額以上を返還した事例を示す
『したがってこの出資は安全確実である』旨の文言を付加する
※齋藤正和『新出資法〜条文解釈と判例解説〜』青林書院p46
3 元本保証には該当しない例
元本保証に近いけど該当しない、という状況もあります。該当しないものの具体例をまとめます。
元本保証には該当しない例
次のような事情は『元本保証』には該当しない
ア 『有望である』『有利確実である』などの宣伝イ 高率の配当を期待させる文言※齋藤正和『新出資法〜条文解釈と判例解説〜』青林書院p46
4 出資金の受入の脱法行為の禁止
出資金の受入れは違法とされています(前記)。この点、受入れ行為そのものに該当しなくても、これに近い行為も違法となります。
いわゆる『脱法行為の禁止』という規定があるのです。これについてまとめます。
出資金の受入の脱法行為の禁止
あ 条文の規定
『前号に掲げる規定に係る禁止を免れる行為をした者』
※出資法8条3項2号
前号=出資金の受入の禁止
い 脱法行為に該当する具体例
商法の匿名組合契約による出資の受入れを行った
集金者が次の内容の表示を行った
『出資金は全額払い戻す。但し、商法542条但書の適用は妨げない』
→厳密には元本を保証したことにはならない
しかし、元本保証であるとの誤解を生じさせる危険性を有している
→脱法行為に該当する
う 商法542条但書の規定内容
出資が損失によって減少した場合は、その残額を返還すれば足りる
※齋藤正和『新出資法〜条文解釈と判例解説〜』青林書院p48
5 出資金の受入そのものと脱法行為の判別
出資金の受入れの脱法行為は違法となります(前記)。とは言っても、脱法行為として認められるケースは少ないです。
実際には、出資金の受入れ行為そのものが解釈上、広く適用される傾向があるのです。
脱法行為ではなく、受入れ行為そのものに該当する具体例を紹介します。
出資金の受入そのものと脱法行為の判別
あ 具体例
集金者が次の内容の表示を行った
『毎月出資金の1割を配当し、10か月で元がかえります』
い 解釈論
形式的には『配当』の名目である
しかし実質的には、出資金の払戻しを約束していると言える
→『脱法行為』ではなく出資法1条の表示に該当する
=出資金の受入そのものである
※小田部胤明『出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律と判例の解説 増補第5版』東洋企画p56
※吉田淳一『出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の概要』捜研17巻10号p42
6 出資の払戻しの具体例
以上の説明は、受入れ、つまり、資金が拠出される場面の解釈論でした。
ここで、出資金の規制は『払戻し』が約束されているものが対象です。
資金を受け入れた後に『返還・払戻し』があるということです。
そこで、出資の払戻しの具体例をまとめます。
出資の払戻しの具体例
あ 民法上の組合
民法上の組合員の脱退の際の持分の払戻し
※民法681条
い 匿名組合
匿名組合契約の終了の際の『返還』
※商法542条
う 会社の清算
残余財産の分配
※会社法105条1項2号
※吉田淳一『出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の概要』捜研17巻10号p42
7 出資金の受入行為の内容・既遂時期
改めて、出資金の受入れの規制の対象を説明します。
事後的な払戻しが約束されている出資金を『受け入れること』が禁止されているのです。
つまり、出資金の『受入れ』が犯罪行為となるのです。『受入れ』され完了すれば『既遂』に達します。
逆に『未遂』という状況は考えにくいです。実際に未遂を処罰する規定自体がありません。
出資金の受入行為の内容・既遂時期
あ 構成要件
構成要件=違反行為について
→出資金を『受入』れること
※出資法1条
→出資者から出資金の給付を受けること
給付は、出資金の全額・一部のいずれも該当する
い 『受入』の具体例
次のいずれも該当する
ア 通常の弁済イ 代物弁済ウ 出資金の受入れと同様の利益を受け入れること
う 犯罪成立時期
『受入』れた時点で既遂に達する
未遂犯処罰規定はない
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


