【学校でのスポーツ事故|判例|テニス・野球・組み体操】

1 判例|テニス×眼球の負傷→過失否定
2 判例|野球×眼球の負傷→過失肯定
3 判例|野球×眼球の負傷→過失肯定
4 組み体操・人間ピラミッド事件|事案
5 組み体操・人間ピラミッド事件|裁判所の判断

1 判例|テニス×眼球の負傷→過失否定

本記事では,学校のスポーツ事故の責任に関する判例を説明します。
まずは,テニスのプレイ中の事故の判例を紹介します。

<テニス×眼球の負傷→過失否定>

あ 事案

テニス教室での練習中の事故
練習生Aがボールを打った
コート脇には練習生Bが待機していた
ボールがBの顔面(右眼球)を直撃した
Bの眼球が損傷した

い 裁判所の認定

待機位置の指示がなされていなかった
一方,上級者クラスであった

う 裁判所の判断

練習生・指導コーチの過失を否定した
※横浜地裁平成10年2月25日

2 判例|野球×眼球の負傷→過失肯定

学校における野球のプレイ中の事故の判例を紹介します。
まずは過失・責任が認められた事例です。

<野球×眼球の負傷→過失肯定>

あ 事案

県立高校野球部におけるゴロ捕り練習中の事故
三塁手が一塁手の投げたゴロを捕球した
三塁手が返球した
この時,捕手がノックをしていた
捕手の打った球が三塁手の右眼付近を直撃した
三塁手は捕球・返球の直後の状態であった

い 裁判所の評価

ア 同一場所での重複練習 ノック練習・ゴロ捕り練習を同一グラウンドで同時に行った
→過失ではない
イ 注意喚起懈怠 生徒にノック前に注意喚起をさせることをしなかった
→声をかけるなどすべきであった
→過失にあたる

う 裁判所の判断|結論

顧問兼監督の教諭の過失を認めた
※名古屋地裁平成18年11月28日

3 判例|野球×眼球の負傷→過失肯定

<野球×眼球の負傷→過失肯定>

あ 事案

県立高校野球部の試合開始前におけるノック練習中の事故
監督がレフト方向に向けてノックした
監督はレフト以外の生徒には注意喚起をしていなかった
打球が左側にそれた
三塁コーチス・ボックスに選手Aがいた
打球がAの右眼付近を直撃し負傷した

い 裁判所の評価

ある程度打球が想定よりもそれることは想定できた
狙った位置の選手以外の選手に衝突する危険性があった
Aに対しても注意喚起をすべきであった

う 裁判所の判断

監督の過失を認めた
※広島高裁平成4年12月24日

4 組み体操・人間ピラミッド事件|事案

組み体操は見た目以上に深刻な危険をはらんでいます。
大事故に至ったケースを紹介します。

<組み体操・人間ピラミッド事件|事案>

あ 事故発生

高校の体育大会の種目として『8段の人間ピラミッド』が採用された
練習中にピラミッドが崩壊してしまった
生徒が折り重なる状態となった
最下段の生徒Aは手足が痺れて動けない状況であった
Aは第4頸椎脱臼骨折・頸髄損傷の傷害を負っていた

い 傷害の程度

頸髄損傷により四肢は完全麻痺となった
感覚は完全に消失した
両手指以下の自動運動はない
その後のリハビリでわずかに回復した
コップを握る・タバコを吸う動作は可能となった
今後,それ以上に回復する可能性はない

う 生活上の苦境

移動には車椅子が必要である
日常生活・起居動作にも介助が必要である
※福岡高裁平成6年12月22日;早良高校ピラミッド事件

5 組み体操・人間ピラミッド事件|裁判所の判断

前記事案についての法的責任の判断内容をまとめます。

<組み体操・人間ピラミッド事件|裁判所の判断>

あ 過失

『8段ピラミッドの種目を選択したこと』自体に過失がある

い 責任の主体

指導教諭に過失がある
学校運営者の福岡県に賠償責任がある
※国家賠償法1条

う 過失相殺

福岡県は生徒Aの過失による過失相殺を主張した
裁判所は過失相殺の主張を排斥した

え 賠償額

約1億0750万円+遅延損害金
※福岡高裁平成6年12月22日;早良高校ピラミッド事件

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