1 病院・薬局の紹介料・キックバック禁止ルール施行|平成26年4月医療担当規則改正
2 改正医療担当規則に関する厚労省通達
3 病院・薬局の紹介料禁止ルールの趣旨|過剰診療防止・病院選択の自由・公正確保
4 独占業務→紹介料禁止という他業種でのルール|弁護士・司法書士・税理士
5 病院・薬局の『紹介料禁止』|判断基準・具体例
6 病院・薬局の『紹介料禁止』|具体的形態別の判断例
7 病院・薬局の『紹介料禁止』|『誘引』の判定
8 療養担当規則|過剰診療の禁止
9 患者紹介・医療コンサルタント×療養担当規則・広告規制|『紹介料ビジネス』

1 病院・薬局の紹介料・キックバック禁止ルール施行|平成26年4月医療担当規則改正

(1)病院・薬局の『紹介料』禁止ルール施行

平成26年4月から健康保険を利用する病院・医院・薬局についてのルール変更がありました。
その中でも大きなものが『紹介料・キックバック・ディスカウント』の禁止というものです。
『患者紹介ビジネス』『医療コンサルタント』などが直接的に規制されます。
それだけではなく,介護施設や高齢者向け住居の運営者から医療機関への『紹介』についても規制対象となることがあります。
『うっかり違法』が起きやすい状態になっています。
ストレートな罰則規定はありませんが,違法行為として,行政指導や医療機関の業務停止(医業停止)・医師免許取消という行政処分の対象になる可能性があります(医師法4条4号,7条2項)。
関連コンテンツ|医師・歯科医師の行政処分|戒告・医業停止・免許取消|異議申立・取消訴訟
このように重大な新設ルールですが,解釈・判断に難しいところもあります。
以下,整理して説明します。

(2)平成26年改正医療担当規則の内容整理

まず,改正された法令の本体をまとめます。
厚生労働省の『保険医療機関及び保険医療養担当規則』です。
一般的には『療養担当規則』,とか『療担規則(りょうたん)』などと略して呼ばれています。

<療養規則の対象>

あ 療養規則の対象

『保険医療機関』『保険薬局』

い 定義の内容

厚生労働大臣が健康保険の利用対象として指定した病院・診療所・薬局
※健康保険法63条3項1号

まず,療養規則自体の対象は,健康保険適用対象として指定を受けている病院・診療所・薬局,だけです。
指定を受けていない病院など=自由診療のみ,という場合は療養担当規則の規制を受けません。

<禁止行為|療養担当規則2条の4の2>

あ 患者へのバック(ディスカウント)禁止(1項)

患者に対して『物品の代金の値引き(経済的利益提供)』を行うこと

い 患者の紹介者へのキックバック禁止(2項)

他の事業者に対して『患者紹介の対価(経済的利益)』を提供して患者を誘引すること
『他の事業者』の従業員も含む
※保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)2条の4の2

う 個々の患者の『健康保険利用』

禁止行為には『健康保険利用』の有無は関係ない
→『自由診療』となった場合も禁止行為に含まれる

え 施行日

平成26年4月1日
※療養担当規則平成26年改正附則

健康保険適用対象として指定を受けている病院・薬局であれば,『個々の紹介を受けた患者が健康保険を利用したかどうか』は関係ありません。
これは禁止の趣旨と関連します(後述)。

2 改正医療担当規則に関する厚労省通達

次に,改正療養担当規則についての解釈が厚生労働省の通達で示されています。
2つの通達があります。

<改正療養担当規則に関する厚生労働省の通達>

あ 保険医療機関及び保険医療養担当規則等の一部改正に伴う実施上の留意事項について

厚生労働省保険局・平成26年3月5日

い 疑義解釈資料の送付について(その8)

厚生労働省保険局医療課・平成26年7月10日

内容は重複している部分が多いです。
まとめて説明します。

3 病院・薬局の紹介料禁止ルールの趣旨|過剰診療防止・病院選択の自由・公正確保

通達では,紹介料を禁止する目的が説明されています。

<『紹介料禁止』の目的・趣旨>

あ 過剰診療防止

『紹介料目当ての紹介→過剰な診療』の防止

い 患者の選択の自由確保

患者による医療機関の自由な選択を確保する

う 公的資金運用への国民の信頼

次の事項に対する国民の信頼を損ねることを防止する
ア 保険診療そのもの
イ 保険財源の効果的・効率的な活用

一般的な事業・サービスでは,『紹介料』は規制されていません。
むしろ『売上に直結するサポートに対価がない』方が異常と言えます。
その意味で『紹介料禁止』というのは,社会・ビジネス一般からは『特殊』です。
一定の業種については『独占業務』という性格から『紹介料禁止』となっています(後記『4』)。
さらに保険診療については『公的資金を使う』→『より公平性・透明性が要求される』というものも『紹介料禁止』の目的と言えます。

4 独占業務→紹介料禁止という他業種でのルール|弁護士・司法書士・税理士

(1)士業における紹介料禁止ルール

なお,弁護士・司法書士・税理士・行政書士なども『紹介料禁止』ルールが古くから存在します(弁護士職務基本規程13条1項など)。
医療業界は新参者と言えます。
古くからある『士業』の『紹介料禁止ルール』の目的の根底は,独占業務,という性格です。

(2)『紹介料』は『独占業務』に反する

仮に,一般企業が『弁護士を雇う』ことにより,法律事務=弁護士の独占業務,を遂行できてしまいます。
これは『弁護士以外の企業が法律事務を行えない』というルールで防止できます(弁護士法72条)。
この点,一般企業が依頼者を弁護士に紹介して,紹介料をもらう,という形態にすれば『企業が法律事務を遂行した』には該当しません。
ただ,『企業が法律事務の対価を得た』という意味では『法律事務の遂行』に近いです。
特定の事業者の意向に寄った業務遂行となる→弁護士の独立性を失う,という影響もあるとされます。
とにかく『本来独占ルールで行えないはずの業務を企業が行える』ことを防ぐ目的が『紹介料禁止ルール』の元となっています。
実際には特定のサービスのマーケットでは『実質的な紹介料』が横行しているという指摘もあるようです。
このテーマの説明は別記事にて行う予定です。

5 病院・薬局の『紹介料禁止』|判断基準・具体例

療養担当規則の解釈を示す通達では,判断基準などの解釈や具体例が説明されています。
まずは『紹介の対価提供』の具体例と判断基準についてまとめます。

<『紹介の対価提供』の形態>

あ 明示方式

保険医療機関と事業者の間で契約書に基づき明示的に行われる場合

い 仮装方式=対価としての明示がない

暗黙の約束・別形式で行われる(仮装する)場合
《仮装の例》
次のような料金(委託料・賃借料)に含まれるor含まれる(上乗せ方式)
ア 医療機関の不動産貸借料(使用料)
→典型例;高齢者向け住宅併設のテナント診療所
イ 訪問診療の広報業務
ウ 施設との連絡・調整業務
エ 訪問診療の際の車の運転業務等
オ 料金徴収(代行)業務
カ コンサルタント業務
キ 広告掲載業務

このように現実には『外見上よく分からない』ということが多いです。
これについて,通達で説明されている判断基準を次にまとめます。

<『紹介の対価提供』の判断基準>

あ 判断基準

『患者紹介の対価としての経済上の利益提供』の有無を実質的に判断する
契約書上の名目などの外見だけで判断するわけではない

い 『患者紹介』の意味

保険医療機関等と患者を引き合わせること
《具体的類型》
ア 医療機関に患者の情報を伝え,患者への接触の機会を与えること
イ 患者に医療機関の情報を伝え,患者の申出に応じて,医療機関と患者を引き合わせること

う 患者候補者の範囲

特に限定はない
《具体的患者候補者の例》
ア 集合住宅・施設の入居者
イ 戸建住宅の居住者

え 『経済上の利益』

金銭・物品・便益・労務・饗応などを広く含む
商品・労務を通常の価格よりも安く購入できる利益(販売すること)も含む

このように,形式ではなく『料金』の内容・実質,で判断されるのです。
以降,委託料・賃借料などを含めて,単に『料金』と表記します。
『料金』が『紹介の対価』になるかどうかを判定する時に使われる資料をまとめます。

<『紹介の対価』を判断する資料・事情の例>

あ 訪問診療の同意書(保険医療機関の診療録添付)
い 診療時間(開始時刻・終了時刻)
う 診療場所
え 診療人数

6 病院・薬局の『紹介料禁止』|具体的形態別の判断例

一定の『料金=金銭の動き』は,『紹介料』であると疑われることがあります。
『金銭の動き』の種類別に,判断の方向性をまとめます。

<『金銭の動き』の種類別の『紹介の対価』判断例>

あ 料金が『診療報酬の一定割合』と設定されている場合

→『紹介の対価』と認める

い 料金が『紹介者(患者)数』に応じて設定されている場合

→原則として『紹介の対価』と認める

う 過剰な業務委託・賃借を条件として要求した場合

例;集合住宅・施設運営者が医療機関入居の条件として診療or調剤に必ずしも必要ではない業務委託・貸借を要求する
→原則として『紹介の対価』と認める(蓋然性が高いと判断)

え 料金に『紹介料』上乗せされている場合

→『上乗せ』と言える場合は『紹介の対価』となる

お 施設居住者・利用者の訪問診療を特定医療機関が『独占』している場合

→『紹介の対価』の疑いが強い傾向

このように,『施設その他事業者と医療機関の取引』は『紹介料』と言われてしまうリスクがあるのです。
もちろん『紹介の対価』ではない,ということも多くあります。
では,どうしたら『紹介料』と認められないですむか,についてまとめます。

<『紹介の対価』であることを否定する事情>

次のような事情を示す必要がある

あ 当該地域における通常の料金よりも高くはない
い 料金設定に,社会通念上合理的な計算根拠がある

例;料金設定で使われる変数(紹介者数など)と経費(コスト)との相関関係が大きい

7 病院・薬局の『紹介料禁止』|『誘引』の判定

療養規則で禁止される『紹介』は,『紹介料を支払う+誘引』とされます(前述)。
2番目の『誘引』については,『紹介料支払い』がある場合は基本的に認められます。

<『紹介の対価』に伴う『誘引』の判断基準>

あ 『誘引』の判断基準

『紹介の対価』支払によって診療or調剤を『誘引』したと言えるかどうか

い 具体的な認定方法

紹介を受けた+当該患者の診療or調剤を行った→原則的に『誘引』に該当する

8 療養担当規則|過剰診療の禁止

『患者(候補者)を医療機関に紹介すること』自体が不当となる場合もあります。
要するに『過剰診療』というものです。
『紹介料』とセットになることが多いですが,『過剰診療』単体でも不当な行為とされます。

<過剰診療>

あ 過剰診療の内容

『医療機関の受診』自体の必要性がないのに診療することor受診を勧めること

い 厚生労働省の要請

訪問診療は通院が困難な患者に対してその状態に応じて行うべきである
保険医療機関は患者が自由に選択できるものである必要がある
療養担当規則に反する
《療養担当規則20条6号の2》
『居宅における療養上の管理・看護は,療養上適切であると認められる場合に行う』

う 具体例

ア 集合住宅の『入居要件』として『特定の医療機関の診療を受けること』を入居者に要求する
イ 医療機関が施設などの入居者に『一律に』訪問診療を行う

9 患者紹介・医療コンサルタント×療養担当規則・広告規制|『紹介料ビジネス』

(1)患者・医療コンサルタントのニーズ

以上の規則・通達で示された『患者の紹介料』について説明しました。
特定の『施設』『集合住宅』の運営の一環としての紹介,というものでした。
ただ,これらは『禁止された行為』の一部でしかありません。
禁止事項は『患者紹介の対価の支払』です(医療担当規則2条の4の2第2項)。
『プロモーション・広告』業界の用語を使うと『送客の対価』となります。
この基準によると多くの業種(サービス)が該当する可能性が出てきます。
要するに『顧客獲得』を目的とするサービスです。
『広告』もその1つですが,これは適法です。
ただし,医師・病院の『広告』は規制があり大幅に制限されています(後述)。
このような事情により『広告・プロモーション』の形態は,工夫・多様化が進んでいます。
該当するサービスをまとめます。
ただし,これらがすべて『禁止行為(違法)』というわけではありません。

<患者紹介料ビジネス|バリエーション>

あ 『仲介』『患者紹介』
い 『医師・病院のポータルサイト(アプリ)』
う 『医療Q&Aサイト』
え 『病院・医院経営コンサルタント』
お 『広告』

(2)適法な広告/違法な紹介料の境界

これらのサービスは,名称としては多いですが,サービス内容・実質面では『相対的・連続的』と言えます。
別に説明しています。
詳しくはこちら|資格業・士業|紹介料・広告の規制・受任義務・公定価格

(3)医師・病院の広告規制

医師・病院・診療所は,『広告』が大幅に制限されています。
要するに『ウリ』『強さ』のアピールが封印されているのです。
『医療クオリティの改良競争を回避・活躍する芽を摘む』という側面が心配されています。
同様の規制は弁護士・司法書士・税理士などでもありましたが,不合理な規制として既に改正されています。
医師に関しては未だに古い規制が生きています。
いずれにしても極端な広告規制が,上記の『集客手段の工夫・多様化』につながっています。
ここに,広告規制の内容をまとめておきます。

<医師・病院・診療所の広告規制>

あ 対象となる事業

医業・歯科医業・病院・診療所

い 禁止される『広告』|伝達手段・方法

文書・オンラインなど,いずれの方法も禁止対象となる
医師だけではなく,あらゆる者も禁止される
ただし,次の事項は例外的に広告が許される
例外的『広告可能事項』でも,虚偽のものは禁止される

う 例外的広告可能事項

・医師or歯科医師である旨
・診療科名
・病院or診療所の名称・電話番号・所在場所・病院or診療所の管理者の氏名
・診療日・診療時間・予約による診療の実施の有無
・一定の医療の『指定』病院・診療所・医師である旨
・入院設備の有無・病床の種別ごとの数・構成員の員数(医師・歯科医師・薬剤師・看護師その他の従業者)・施設・設備・従業者に関する事項
・医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴など
・病院or診療所の管理・運営に関する事項
例;患者・その家族からの相談・安全確保・個人情報保護などに関する措置
・紹介先・提携先となっている他の病院・診療所・保健医療サービス・福祉サービスの名称
・診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供に関する事項
・病院or診療所において提供される医療サービス内容
・病院or診療所における患者の平均的な入院日数・平均的な外来患者・入院患者の数など
※医療法6条の5第1項,3項