1 遅延損害金・違約金は,状況によっていろいろな上限がある
2 『貸金』の利息については『貸金専用』のルールがある
3 貸金業者は貸金業法・利息制限法の両方が適用される|グレーゾーン撤廃(上記※1)
4 貸金業者以外は『グレーゾーン』が残っている
5 『貸金』vs『出資』の争い→『リターンの約束内容』が決め手
6 『貸金』vs『贈与』の争い→『返還』に向けた態度が重要
7 『貸金』に関して見解の食い違いが生じる項目のまとめ

1 遅延損害金・違約金は,状況によっていろいろな上限がある

(1)遅延損害金・違約金の上限ルール

<遅延損害金の規制>

一般的な利息・損害金(民事法定利率) 年5% 民法404条,419条
一派的な商行為の利息・損害金(商事法定利率) 年6% 商法514条
割賦販売法の損害金 上限年6% 割賦販売法6条,30条の3,35条の3の18
特定商取引法の損害金 上限年6% 特定商取引法10条,25条,40条の2,49条,58条の3
消費者契約法の損害金 上限年14.6% 消費者契約法9条
退職労働者の賃金の損害金 上限年14.6% 賃金の支払の確保等に関する法律6条1項,同施行令1条

※『損害金』『遅延損害金』『違約金』などは,基本的に同一

(2)割賦販売法の上限ルールは忘れがち

事業を行っている方であれば,関係する法律のルールは知っていることが多いです。
この点,『割賦販売法の損害金の上限』については,ややマイナーです。
事業者や関与する専門家が『失敗』する例も報告されています。

<割賦販売法の損害金規定を見逃した判例>

あ 事案

司法書士が,割賦販売法の損害金の制限を見逃して公正証書作成に関与した

い 結論

司法書士の損害賠償責任が認められた

う 判決文から抜粋

ア 1審;釧路地裁平成5年5月25日
『割賦販売法は利息制限法ほどには一般的に知られていない』
『強行法規としての適用が見落とされがちであることは当裁判所としても十分認識しているところである』
『司法書士として公正証書の作成嘱託業務を処理する以上』
→思い至らなかった点は過失がある
イ 2審;札幌高裁平成6年5月31日(確定)
基本的に1審維持;損害額4万円認容
※月報司法書士13年5月号p42〜

2 『貸金』の利息については『貸金専用』のルールがある

『貸金』の利息や遅延損害金については,『貸金』だけに適用されるルールがあります。
主なものは出資法,貸金業法,利息制限法です。
利息制限法だけは『元金』の金額によって上限金利が違います。
まずはこれらの『上限金利』をまとめます。
複数の『上限ルール』が重複する問題については後述します。

<『貸金』に関する『利息』>

貸金業者の『貸金』 上限年20%(※1) 出資法5条2項
その他一般的な『貸金』 上限年109.8% 出資法5条1項,質屋営業法36条

※違反に対する刑事罰規定がある

<利息制限法の上限規定>

元金 利息上限 損害金上限
10万円未満 年20% 年29.2%
〜100万円未満 年18% 年26.28%
100万円以上 年15% 年21.9%
貸金業者の場合(※1) ↑が適用される 年20%

※貸金業法1条,4条,7条
※違反に対する刑事罰規定はない

3 貸金業者は貸金業法・利息制限法の両方が適用される|グレーゾーン撤廃(上記※1)

貸金業者の『貸金』については,貸金業法・利息制限法の両方が適用されます。
つまり,貸金業法と利息制限法の規定の『低い方の利率』が適用される,ということです。
以前は2つの法律による上限利率に『差』がありました。
この『差』の部分を『グレーゾーン金利』と呼んでいました。
設定することで『刑事罰』の対象ではないが,『返還請求が可能』というものだったのです(後述)。
現在は法改正により,『差(グレーゾーン)』は撤廃されています。

4 貸金業者以外は『グレーゾーン』が残っている

個人的な友人・ビジネス上の知り合い同士,という間で貸金を行う場合は,ちょっと複雑です。
『貸金業者の貸金』のルールが適用されません。

<貸金業者以外の貸金のグレーゾーン>

あ 2つのルール
法律 上限金利 刑事罰
利息制限法の上限金利 年15〜20% なし
出資法の上限金利 年109.8% あり
い 『中間』=グレーゾーン金利の設定

ア 刑事罰の対象(犯罪)ではない
イ 利息制限法の上限を超過した部分の返還請求を受ける状態(過払金)

5 『貸金』vs『出資』の争い→『リターンの約束内容』が決め手

事業(ビジネス)に関する資金不足で『サポート』する,ということはよくあります。
この時に『貸金』(消費貸借契約)とすることも『出資』(業務提携契約)とすることもあり得ます。
まずはどのように違うのか,をまとめます。

<『貸金』と『出資』の違い>

契約の種類 元本返還義務 金利支払義務 金利以上のリターン
消費貸借契約 あり あり(※2) それ以外はなし
出資契約 なし なし ある(※3)

<注意・補足事項>

あ 金利支払義務(上記※2)

『金利なし』と合意した場合は,有効(金利なし)となる

い 出資契約のリターン(上記※3)
事業の収支 リターン(方向性)
損失 リターンゼロ
利益が大きい (一般的な)『金利』以上のリターン

実際には,返還やリターンについては口頭での約束だけ→不明確,ということも多いです。
そのような場合は,判断方法についてまとめます。

<『貸金』/『出資』の判断基準>

あ 判断の枠組み

『出資契約の3要素』(後記)の有無を認定する
ア 出資契約の3要素の合意あり→『出資契約』認定
※東京地裁平成10年4月22日
イ 出資契約の3要素の合意に欠ける→『貸金』認定
※大阪地裁昭和58年7月15日

い 『出資契約』の3要素;必須合意事項

ア 利益分配方法
イ 損失負担方法
ウ 出資金の清算方法

<参考情報>

瀧澤泉ほか 民事訴訟における事実認定 法曹会p289〜

6 『貸金』vs『贈与』の争い→『返還』に向けた態度が重要

特に親しい関係・親族間での『お金のやり取り』は,約束の内容が不明確なことが多いです。
『貸金』なのか『贈与』なのか,つまり『返すべき』『もらった』が曖昧,という食い違いが典型です。
判断基準として法則化するのは次のような枠組みが限界です。

<貸金/贈与の認定の枠組み>

あ 根本的判断基準

『返還合意』の有無

い 『返還合意』の認定要素(事情)

ア 貸主・借主(とされる人)それぞれの職業・地位・関係
イ 金額の多寡
ウ 金銭授受に至った経緯・理由
エ 貸主が借主に『返還を求めた』ことがあるか
オ 借主が『金銭返還を前提とする言動』を取ったことがあるか
※瀧澤泉ほか 民事訴訟における事実認定 法曹会p285

『貸金』を認定する要素(事情)はとても広い範囲に及びます。
時間の経過に沿って整理すると次のようになります。

<『貸金』の認定要素|時系列で整理>

あ 契約前の事情

・借主は金銭を必要としていたか,必要とする理由・事情
・借主・貸主の間に『貸し借り』をする関係性があったか
・借主には相応の資力があったか

い 契約時の状況

・正式な契約書の調印の有無
・『借用書』など他の書面の有無
・書面を作成しない合理的な理由の有無
・契約の際の立会人,場所

う 契約後の事情

・借主側の金銭の使途,資金移動状況(取引先の確認,預金口座の履歴)
・貸主は,借主の経営状態の確認・督促・取立をしたことがあるか
・一部弁済を受けているか
※加藤新太郎編 民事事実認定と立証活動2 判例タイムズ社p298

7 『貸金』に関して見解の食い違いが生じる項目のまとめ

<『貸金』に関する類型的な争点|まとめ>

あ 金銭の授受(有無)
い 当事者

ア 貸主
イ 借主
主に『法人』と『(実質的)経営者個人』の混同がありがちです。

う 金銭の授受の趣旨

ア 『貸金』vs『出資』
イ 『貸金』vs『贈与』
上記で説明した類型です。

<参考情報>

月報司法書士14年10月p41〜