【第1種相続財産分離|被相続人の債権者は『財産混在』を回避できる】
1 『相続財産の混在』を回避する『相続財産分離』という手続がある
相続財産分離を利用する具体的ケース
あ 事例
私(A)はBにお金を100万円貸していた
Bは不動産などの財産を多く持っていたので安心していた
最近Bが亡くなった
Bの子Cが不動産などの財産を相続で承継したようだ
Cは借金が多いらしいので、その返済に使ってしまうことが心配だ
い 不合理
相続財産(B所有だった不動産)が相続人(C)の財産と混ざる
→C自身の債務で相続財産が失われる結果になる
このような相続財産の混在を回避する手続があります。
『第1種相続財産分離』という手続です。
相続財産分離には、受遺者から行うものもあり、これを第2種と分類しています。
被相続人の債権者が行うものは第1種相続財産分離、と分類されます。
2 第1種相続財産分離の申立手続|家裁に申し立てる
『第1種相続財産分離』の手続についてまとめます。
なお、民法上は『相続財産分離の請求』という表記となっています。
第1種相続財産分離の申立方法
あ 申立人
相続債権者
被相続人の債権者(だった者)という意味です。
い 申立先
家庭裁判所
う 申立時期
相続開始後3か月以内
※民法941条1項
3 第1種相続財産分離の手続の流れ|公告→配当
第1種相続財産分離の手続の流れをまとめます。
相続財産分離|公告→配当
あ 配当加入申出公告
ア アナウンス内容『被相続人に対して債権を持っている人は申し出る』こと
イ 申出期間通常は2か月とされる
※民法941条2項
ウ 公告方法官報に公告として記載される
※民法941条3項
い 配当
ア 配当権者次の『被相続人の債権者』が配当を受ける
・債権者として届出を行った者
・相続財産分離の申立(請求)をした者
イ 按分弁済債権額の合計が相続財産を超過する場合
→債権額の割合に応じた弁済しか受けられない
※民法947条2項
4 相続財産分離の手続では、相続財産管理人が選任されることがある
相続人の財産管理に問題がある場合は、相続財産管理人が選任されます。
ルール上、相続財産管理の方法は次の2つがあります。
相続財産分離手続における財産管理を行う者
裁判所が次のいずれかを選択する
あ 相続人自身
家庭裁判所が相続人に管理を命じる
い 相続財産管理人
裁判所が選任する
相続財産管理人が財産を管理する
※民法943条
5 『相続財産分離』の不動産登記を行えば、ロックがかけられる
相続財産分離を申し立てた後に、通常、不動産の登記を行います。
相続財産分離×不動産登記
あ 登記申請
『相続財産分離』の登記ができる
財産分離請求をした債権者が単独で申請できる
※不動産登記法3条;処分の制限
い 登記の実行
『年月日相続財産分離』と登記される
日付は相続財産分離の審判確定日となる
う 登記の効果
この後の登記は事後的に無効→登記抹消となる
現実的には売却、担保設定などの処分ができなくなる
※民法945条
6 相続財産分離×相続財産破産|重複しているところが多い
第1種相続財産分離と類似する別の制度があります。
『相続財産破産』という手続です。
破産手続の中で『相続財産』を法人と同じように扱う制度です。
破産法改正によりこのような扱い・制度ができたのです。
そのため現在では『相続財産分離』は利用されない傾向になっています。
相続財産分離×相続財産破産
相続財産破産の制度創設により相続財産分離は存在意義を失った
※破産法222条以下
※谷口知平ほか『新板注釈民法(27)相続(2)補訂版』有斐閣p637〜641
※前田陽一ほか『民法6 親族・相続 第3版』有斐閣p346〜347
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


