【時効完成を避ける緊急時は『催告』で6か月延長できる】
1 書面での『請求』では『消滅時効』が6か月延長するだけ
訴訟での請求=提訴、については、民法147条1号の『請求』に該当するので、時効期間がリセットされます。
一方、口頭や書面で『請求する』という内容を伝える場合でも『時効期間の延長』となります。
しかし、裁判所を使わない通知の場合は、時効期間が6か月延長する効果にとどまります。
このような、口頭や書面での請求するメッセージのことを『催告』と呼んでいます(民法153条)。
『催告』での時効延長の正確な内容は次のとおりです。
『催告』による時効延長=暫定的中断効
『催告』の時期から6か月間
『催告』による時効延長の具体例
あ 事例設定
『あと1か月で時効完成』となる場合
い 催告をすることの効果
『提訴できる締め切り』が、『催告から6か月後』(=従来の時効完成5か月後)までに延長される
『従来の時効完成日から6か月後まで』というわけではありません。
誤解が多いので注意が必要です。
2 『催告』から6か月以内に『提訴』などを行なわないと中断にならない
『催告』がなされた場合、時効期間は6か月延長されます。
具体的には、『催告から6か月後まで』の間に、提訴や債務者の承認などの(通常の)時効中断の手続が可能になります。
逆に、『催告から6か月後まで』に、提訴や承認などがなされないと、『催告の効力が失われる』ことになります(民法153条)。
通常は消滅時効が完成ということになります。
3 『催告』を繰り返しても『さらに延長』とはならない
『催告』により、時効期間を延長し、残り期間が切れる前に、再度『催告』をする、という発想があります。
しかし、『催告』で延長した時効期間をさらに次の『催告』で延長する、ということは認められません(大判大正8年6月30日)。
4 『催告』が使われるのは『時効完成間近』→提訴の準備時間分だけ延長する
(1)『催告』は緊急措置で、その後の提訴がメイン
消滅時効完成を回避する実務的な原則は、提訴等の、(通常の)時効中断措置です。
しかし、現実に提訴するためには、一定の準備期間が必要となります。
ところが、時効完成時期が間近に迫っている場合は、『事務的な作業から、提訴が間に合わない』ということがあり得ます。
このような場合に、暫定的な時効期間の延長=訴状準備の猶予期間を得る、という目的で、『督促』を活用します。
『督促』の、確定的ではないがとりあえず時効完成を防ぐという機能がちょうどマッチする状況です。
(2)『催告』後の交渉で弁済実現or承認ということも多い
実際には、『請求する』という内容証明郵便の送付によって、交渉が進むことも多いです。
交渉によって、弁済が実現することもあります。
また、交渉の経過において、債務者が承認を行ない、時効の中断がなされることもあります。
この場合は、債権者において、『時効完成を回避するために無理に提訴する必要』はなくなります。
5 『催告』は、証拠化するために内容証明郵便を用いるべき
(1)『催告』を実際に行う時は内容証明郵便を用いる
前記のように、『催告』は、消滅時効完成を回避するために活用されます。
その後、提訴する、ということが十分に想定される状態です。
提訴した場合は、一般的に、債務者が『消滅時効』の主張をしてくることが考えられます。
その場合、債権者サイドで、『消滅時効が完成していない』ということを主張・立証する必要があります。
この立証を考えると、『催告』の段階で、内容証明郵便による通知書を利用すべきです。
(2)『催告』の文面には『時効の延長』という言葉は不要
なお、書面の内容は『請求する』ということを記載します。
『時効を中断する・延長する』ということを書かなくても『催告』として有効です。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
条文
[民法]
(催告)
第百五十三条 催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事事件手続法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。


