1 被疑者が不起訴になった場合,告訴人,告発人に通知がなされる
2 告訴人は,不起訴処分に対して検察審査会への審査申立ができる
3 検察審査会では,審査を行い,最終的な議決を行う
4 起訴すべき議決がなされたら検察官は再検討する
5 起訴相当→検察官が2度目の不起訴処分の場合,検察審査会は再審査を行う
6 検察審査会の再審査では,『起訴議決』をするかしないかの2択となる
7 『起訴議決』の後は,強制起訴→公判遂行を指定弁護士が行う
8 検察審査会の審査でも一事不再理同様の規定がある

1 被疑者が不起訴になった場合,告訴人,告発人に通知がなされる

告訴人,告発人としては,被疑者の刑事処分を望んでいるのが通常です。
(以下,単に『告訴人』と言います)
このような意向に配慮し,起訴や不起訴という終局処分の内容を通知することとされています(刑事訴訟法260条)。
また,告訴人から,終局処分の理由を求められた場合,検察官は理由を告知する義務があります(刑事訴訟法261条)。

2 告訴人は,不起訴処分に対して検察審査会への審査申立ができる

検察官の不起訴処分について,妥当性を事後的に判断する制度があります。
検察審査会の審査です。
申立人とその方法は次のとおりです。

<検察審査会への審査申立の申立権者>

・告訴人,告発人,被害者,被害者の遺族(検察審査会法2条2項,30条)
 当然,対象事件について不起訴処分がなされたことが条件です。
・職権での審査(検察審査会法2条3項)
 法律上,申立がなくても検察審査会自ら審査を実施することも認められています。

<検察審査会への審査申立の方法>

申立書に理由を明示して検察審査会に提出する(検察審査会法30条,31条)

3 検察審査会では,審査を行い,最終的な議決を行う

検察審査会の構成員は一般の市民11人とされています(検察審査会法4条)。
不起訴処分が妥当であったのかどうかを審査します。
最終的な議決の種類と要件(賛成の数)をまとめます。

<検察審査会の議決の種類と決議要件>

※条文,根拠は共通して検察審査会法です。

議決の種類 条文(39条の5第1項) 決議要件 根拠 決議後の検察官の再検討
不起訴相当 不起訴で良い 3号 過半数 27条
不起訴不当 起訴すべき 2号 過半数 27条
起訴相当 起訴すべき 1号 8人以上 39条の5第2項

『不起訴不当』,『起訴相当』の議決は,簡単に言うと起訴すべきというものです。
方向性は同じですが,『起訴相当』の方が決議要件が重いです。
その分,効力が強いのです。
これは後述します(後記『5』)。

4 起訴すべき議決がなされたら検察官は再検討する

そこで,検察官は再度,起訴すべきかどうか,を検討します(検察審査会法41条2項)。
そして,その結果を検察審査会に通知します(検察審査会法41条3項)。

5 起訴相当→検察官が2度目の不起訴処分の場合,検察審査会は再審査を行う

最初の検察審査会の議決が『起訴相当』の後,検察官が2度目の不起訴処分を行うこともあります。
検察官としては,当初の判断と同じ,ということになります。
この場合,検察審査会は改めて,2度目の審査を行います(検察審査会法41条の2)。

この2度目の審査は,あくまでも最初の議決が『起訴相当』の場合のみです。
最初の議決が『不起訴不当』の場合は対象外です。
この2つは似ていても決議要件が違う,効果がここで現れるのです。

6 検察審査会の再審査では,『起訴議決』をするかしないかの2択となる

検察審査会の再審査では『起訴議決』を行うことができます。
決議要件は8人以上の賛成となります(検察審査会法41条の6第1項)。

逆に『起訴議決』を行わない場合は『起訴議決を行わない』という結論で終了します(検察審査会法41条の6第3項)。

7 『起訴議決』の後は,強制起訴→公判遂行を指定弁護士が行う

『起訴議決』がなされると,検察官の関与なく起訴ができる状態になります。
具体的には,裁判所が議決書を受け取った後に指定弁護士を選任します。
指定弁護士は,通常の起訴,公判における検察官,と同様の任務を行います(検察審査会法41条の9)。

指定弁護士としては,起訴の準備として,追加で捜査が必要となることもあります。
そこで,指定弁護士から警察,検察に捜査を嘱託することも可能です(検察審査会法41条の9第3項)。

最終的に指定弁護士が公訴提起をすることになります(検察審査会法41条の10)。
これは,検察官の判断はまったく関与しないで,独自に起訴できるという強力なものです。
強制起訴と言うこともあります。
起訴独占主義の特殊な例外です(刑事訴訟法260条)。
別項目;起訴するかどうかは検察官に大きな裁量がある;起訴独占主義,起訴弁護主義

8 検察審査会の審査でも一事不再理同様の規定がある

検察審査会に審査申立をした後,議決として結論が出ます。
ここで,同一事件については,改めて審査申立をすることはできません(検察審査会法32条)。
刑事訴訟における一事不再理と同様のルールです。
なお,これは事件単位とされています。
つまり,当初申し立てた方は当然として,別の関係者でも,同一事件については審査申立ができません。

条文

[刑事訴訟法]
第二百六十条  検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。

第二百六十一条  検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。


[検察審査会法]
第二条  検察審査会は、左の事項を掌る。
一  検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項
二  検察事務の改善に関する建議又は勧告に関する事項
2  検察審査会は、告訴若しくは告発をした者、請求を待つて受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被つた者(犯罪により害を被つた者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)の申立てがあるときは、前項第一号の審査を行わなければならない。
3  検察審査会は、その過半数による議決があるときは、自ら知り得た資料に基き職権で第一項第一号の審査を行うことができる。

第四条  検察審査会は、当該検察審査会の管轄区域内の衆議院議員の選挙権を有する者の中からくじで選定した十一人の検察審査員を以てこれを組織する。

第二十七条  検察審査会議の議事は、過半数でこれを決する。

第三十条  第二条第二項に掲げる者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官の属する検察庁の所在地を管轄する検察審査会にその処分の当否の審査の申立てをすることができる。ただし、裁判所法第十六条第四号 に規定する事件並びに私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 の規定に違反する罪に係る事件については、この限りでない。

第三十一条  審査の申立は、書面により、且つ申立の理由を明示しなければならない。

第三十二条  検察官の公訴を提起しない処分の当否に関し検察審査会議の議決があつたときは、同一事件について更に審査の申立をすることはできない。

第三十九条の五  検察審査会は、検察官の公訴を提起しない処分の当否に関し、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める議決をするものとする。
一  起訴を相当と認めるとき 起訴を相当とする議決
二  前号に掲げる場合を除き、公訴を提起しない処分を不当と認めるとき 公訴を提起しない処分を不当とする議決
三  公訴を提起しない処分を相当と認めるとき 公訴を提起しない処分を相当とする議決
2  前項第一号の議決をするには、第二十七条の規定にかかわらず、検察審査員八人以上の多数によらなければならない。

第四十一条  検察審査会が第三十九条の五第一項第一号の議決をした場合において、前条の議決書の謄本の送付があつたときは、検察官は、速やかに、当該議決を参考にして、公訴を提起すべきか否かを検討した上、当該議決に係る事件について公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしなければならない。
2  検察審査会が第三十九条の五第一項第二号の議決をした場合において、前条の議決書の謄本の送付があつたときは、検察官は、速やかに、当該議決を参考にして、当該公訴を提起しない処分の当否を検討した上、当該議決に係る事件について公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしなければならない。
3  検察官は、前二項の処分をしたときは、直ちに、前二項の検察審査会にその旨を通知しなければならない。

第四十一条の二  第三十九条の五第一項第一号の議決をした検察審査会は、検察官から前条第三項の規定による公訴を提起しない処分をした旨の通知を受けたときは、当該処分の当否の審査を行わなければならない。ただし、次項の規定による審査が行われたときは、この限りでない。
2  第三十九条の五第一項第一号の議決をした検察審査会は、第四十条の規定により当該議決に係る議決書の謄本の送付をした日から三月(検察官が当該検察審査会に対し三月を超えない範囲で延長を必要とする期間及びその理由を通知したときは、その期間を加えた期間)以内に前条第三項の規定による通知がなかつたときは、その期間が経過した時に、当該議決があつた公訴を提起しない処分と同一の処分があつたものとみなして、当該処分の当否の審査を行わなければならない。ただし、審査の結果議決をする前に、検察官から同項の規定による公訴を提起しない処分をした旨の通知を受けたときは、当該処分の当否の審査を行わなければならない。

第四十一条の六  検察審査会は、第四十一条の二の規定による審査を行つた場合において、起訴を相当と認めるときは、第三十九条の五第一項第一号の規定にかかわらず、起訴をすべき旨の議決(以下「起訴議決」という。)をするものとする。起訴議決をするには、第二十七条の規定にかかわらず、検察審査員八人以上の多数によらなければならない。
2  検察審査会は、起訴議決をするときは、あらかじめ、検察官に対し、検察審査会議に出席して意見を述べる機会を与えなければならない。
3  検察審査会は、第四十一条の二の規定による審査を行つた場合において、公訴を提起しない処分の当否について起訴議決をするに至らなかつたときは、第三十九条の五第一項の規定にかかわらず、その旨の議決をしなければならない。

第四十一条の九  第四十一条の七第三項の規定による議決書の謄本の送付があつたときは、裁判所は、起訴議決に係る事件について公訴の提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定しなければならない。
2  前項の場合において、議決書の謄本の送付を受けた地方裁判所が第四十一条の七第三項ただし書に規定する地方裁判所に該当するものではなかつたときも、前項の規定により裁判所がした指定は、その効力を失わない。
3  指定弁護士(第一項の指定を受けた弁護士及び第四十一条の十一第二項の指定を受けた弁護士をいう。以下同じ。)は、起訴議決に係る事件について、次条の規定により公訴を提起し、及びその公訴の維持をするため、検察官の職務を行う。ただし、検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託してこれをしなければならない。
4  第一項の裁判所は、公訴の提起前において、指定弁護士がその職務を行うに適さないと認めるときその他特別の事情があるときは、いつでもその指定を取り消すことができる。
5  指定弁護士は、これを法令により公務に従事する職員とみなす。
6  指定弁護士には、政令で定める額の手当を給する。

第四十一条の十  指定弁護士は、速やかに、起訴議決に係る事件について公訴を提起しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一  被疑者が死亡し、又は被疑者たる法人が存続しなくなつたとき。
二  当該事件について、既に公訴が提起されその被告事件が裁判所に係属するとき、確定判決(刑事訴訟法第三百二十九条 及び第三百三十八条 の判決を除く。)を経たとき、刑が廃止されたとき又はその罪について大赦があつたとき。
三  起訴議決後に生じた事由により、当該事件について公訴を提起したときは刑事訴訟法第三百三十七条第四号 又は第三百三十八条第一号 若しくは第四号 に掲げる場合に該当することとなることが明らかであるとき。
2  指定弁護士は、前項ただし書の規定により公訴を提起しないときは、速やかに、前条第一項の裁判所に同項の指定の取消しを申し立てなければならない。この場合において、当該裁判所は、前項ただし書各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるときは、その指定を取り消すものとする。
3  前項の裁判所は、同項の規定により指定を取り消したときは、起訴議決をした検察審査会にその旨を通知しなければならない。