【私道の分割譲渡(分譲宅地)における黙示の通行地役権設定合意】

1 私道の分割譲渡(分譲宅地)における黙示の通行地役権設定合意

私道を、所有者以外が通行する状態になっているケースがあります。分譲地の私道に、複数の宅地が接しているようなケースもその1つです。この場合、所有者ではない者が私道の通行権をもっているということになります。
詳しくはこちら|私道の通行権|設定方法|共有・通行地役権・賃貸借・使用貸借|登記・対抗力
私道の通行権の中に(通行)地役権があります。普通は地役権設定契約という契約書に調印して登記をする、という方法が確実ですが、特に書面の調印をしなくても地役権を設定したと認定されることがあります。本記事では、住宅地の分譲で、地役権を設定したと認められるケースについて説明します。

2 昭和32年東京高判・私道の分割譲渡→黙示の通行地役権設定

昭和32年東京高判の事案は、国が大きな土地を取得して、それを分譲して複数の一般の方に売却した、というケースです。もちろん、各分譲地は宅地として使う前提なので、当該土地内に私道を作って、公道にアクセスできるようにしました。レイアウトを作るところまではよかったのですが、なんと私道の通行権についてはうっかりして何も手当をしていませんでした。
そこで後から通行権がどうなっているかが問題となりました。裁判所は、各分譲地の所有者が相互に通行地役権を暗黙に設定したと認定しました。実際に私道として各分譲地の所有者が使う状態(形状)になっていることはハッキリしているので、お互いに永続的に私道として使わせる認識があった判断できたのです。

昭和32年東京高判・私道の分割譲渡→黙示の通行地役権設定

あ 地役権の特徴(前提)

もともと地役権は一定の目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供するため直接に支配することを内容とする物権であり、多くは設定行為、時には時効によつて発生するものであるが、ひとたび発生した地役権は人と人との関係をはなれて土地そのものに従属する。

い 譲渡前の地役権→不可能(前提)

たゞ少くとも同一人がその所有に属する二個の土地のうち一個の土地(要役地)の便益のため他の土地(承役地)の上に地役権を設定するということは現行法のたてまえ上考え得ないから、本件土地につき私道を開設したKが右私道敷の上に他の土地のための地役権を設定したとみることは法律的に不可能であるが、

う 分割譲渡の際の地役権設定→可能

その後これら私道敷が現状のまま分割されて各所有者に分属するにいたつたときは、その間に通行地役権の設定を考えることは少しも不合理ではない。

え 黙示の通行地役権設定の認定

かように考えれば前認定の事情の下に本件私道敷が私道敷として現状のまま分割されて各所有者に分属せしめられたことは、反対の特約その他別段の事情の見られない本件においては、そのころ当事者間に互いに甲乙丙丁戌の各地域につき一号ないし五号地の便益のためこれを通行し得べき旨相互的かつ交錯的通行地役権が暗黙に設定せられたことを意味するものと認めるのを相当とする。
※東京高判昭和32年6月17日

3 昭和40年東京高判・私道予定地の分割譲渡→通行地役権設定合意

昭和40年東京高判も同じような判断がなされました。大きな土地を東西2つに分けて、西側をB、東側をCに売却したケースです。中央部分は道路予定地として整地、造成が行われていました。このケースでも私道の通行権について手当がありませんでした。
裁判所は、私道部分について、BとCが相互に通行地役権を設定した、と認定しました。

昭和40年東京高判・私道予定地の分割譲渡→通行地役権設定合意

・・・控訴人及び被控訴人ら七名とほか数名は東京都練馬区仲町六丁目四八三〇番地に夫々二〇坪ないし五〇坪位の土地を有しているが、これらの土地合計約三〇〇坪はもと訴外Hの所有に属する山林であつたところ、訴外Sがこれを買受け、整地して宅地に造成し、その中央南北に通じる巾員四メートルの土地を道路予定地とし、その中心線・・・を境として略々東西に二分し、その西側の土地約一五〇坪を昭和三五年一月二三日訴外Bに、その東側の土地約一五〇坪を同月二六日訴外Cに夫々売渡したこと、訴外B及び同Cはいずれもここに数戸の建売り住宅を建築する計画を有し、右買受直後各自の買受土地のうち中央境界線・・・を挾んで、各々巾員一間の土地・・・を私道として相互に無償で提供することを約したこと、そして訴外Cは南北に七戸の建売住宅を夫々その買受土地上に建築したことが認められる。
右事実によれば訴外C及びBの両名は建売り住宅取得者の便益を考えて前記巾員一間の土地につき相互に相手方所有地のため通行地役権を設定し、且建売りの際買受人に右の私道関係を承認させることを約したものと考えるのが相当である。
※東京高判昭和40年12月23日

4 関連テーマ

(1)共有者間の潜在的な通行地役権設定

共用の私道が(複数の宅地所有者の)共有となっているケースもあります。この場合は、各メンバーは共有者として私道を使用することができます。
ここで共有物分割を認めた、つまり土地を物理的に複数筆に分けて(現物分割)、各メンバーの単独所有とした裁判例があります。この裁判例では、各メンバー(私道の一部の所有者)が相互に地役権を設定したものとして扱いました。複数筆でできている私道は相互に通行地役権を設定する認識があるという判断については、本記事で紹介した裁判例と共通しています。
詳しくはこちら|共有の私道の共有物分割(肯定・否定の見解とその根拠)

本記事では、私道の分割譲渡のケースにおける通行地役権設定の認定について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に私道の通行に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【準共有の追認権行使の法的扱い(不可分帰属・準共有の処分)】
【借地借家法(新法)の更新後の建物再築許可手続の基本】

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