1 建物建築工事における設計・監理業務の内容
2 建築士の主な業務
3 監理業務の内容
4 工事と設計図書との照合及び確認の内容
5 監理業務の注意義務の内容(概要)
6 監理業務を規定する告示・ガイドラインの情報ソース

1 建物建築工事における設計・監理業務の内容

建物の建築工事に不備があった場合,法的責任が生じます。
詳しくはこちら|建物の建築工事の欠陥・瑕疵についての法的責任の種類
責任を負う者(請求する相手)は,主に施工業者(請負人)ですが,それ以外に設計や監理を行った者も責任を負うことがあります。設計者や監理者の責任が発生する理論的なメカニズムは設計や監理の業務が十分に行われていなかったというものです。そこで責任の有無を判断する際には,設計や管理業務の内容は何か,ということが問題になります。
本記事では,設計と管理業務の内容や範囲を説明します。

2 建築士の主な業務

設計や(工事)監理の業務は,建築士法によって建築士が行う業務とされています。最初に,設計士が行う主な業務を整理します。
設計とは,設計図と仕様書(まとめて設計図書)を作成することです。
(工事)監理とは,既に作られた設計図書どおりに実際に施工がなされているかを工事の進行中に確認するという業務です。

<建築士の主な業務>

あ 設計

その者の責任において設計図書を作成すること
設計図書=設計図と仕様書のことである
詳しくはこちら|建物の建築工事の瑕疵の種類と判断基準(仕様や性能の基準)
※建築士法2条5項

い 工事監理

その者の責任において,工事を設計図書と照合し,それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること
※建築士法2条7項
工事施工者への指摘と建築主への報告の義務もある
※建築士法18条3項

う その他の業務

3 監理業務の内容

実際のトラブルでは,施工ミス(不良)を見逃した監理業者にも責任が生じるかが問題となることが多いです。つまり(建築士の業務の中の)監理(業務)の内容が何かという問題です。
国土交通省の告示の中で,監理業務の内容が示されています。特に重要なものは,設計図書どおりに施工されているかどうかの確認です。

<監理業務の内容>

あ 標準業務

ア 工事監理方針の説明等
イ 設計図書の内容の把握等
ウ 設計図書に照らした施工図等の検討及び報告
エ 工事と設計図書との照合及び確認
設計図書に定めのある方法による確認のほか,確認対象工事に応じた合理的方法(後記※1)により確認を行う
例=目視による確認,抽出による確認,工事施工者から提出される品質管理記録の確認
建築士法2条7項に対応する
オ 工事と設計図書との照合及び確認の結果報告等
建築士法18条3項に対応する
カ 工事監理報告書等の提出
建築士法20条2項に対応する
※第15号告示(後記※2)・別添1『2 工事監理に関する標準業務及びその他の標準業務』

い 附随業務

ア 住宅の品質の確保の促進等に関する法律第5条第1項に規定する住宅性能評価に係る業務
イ 建築物の断熱性や快適性など建築物の環境性能の総合的な評価手法(建築物総合環境性能評価システム)等による評価に係る業務
ウ 建築主と工事施工者の工事請負契約の締結に関する協力に係る業務
※第15号告示(後記※2)・別添4『2 工事監理に関する標準業務及びその他の標準業務に附随する標準外の業務』

4 工事と設計図書との照合及び確認の内容

監理業務の中で特に重要なものは設計図書どおりに施工されているかどうかの確認です(前記)。実際には,どこまで深く確認すべきか(だったのか)ということが問題になることが多いです。当然,具体的な施工ミス(不良)によって確認すべきだった内容(確認方法や範囲)は違ってきます。ある程度類型別に分けて確認の内容の基準を整理したガイドラインがあります。法令ではないですが,国交省が出しているという意味で公的なものなので,管理業者の責任の有無を判断に大きく影響します。
ここではガイドラインの内容を説明しませんが,ソース(リンク)を後記しておきます。

<工事と設計図書との照合及び確認の内容(※1)>

あ 工事監理ガイドラインの公表

標準業務の『工事と設計図書との照合及び確認』(建築士法2条7項に対応)の業務内容について
(その中の『確認対象工事に応じた合理的方法』の例示として)
平成21年9月1日に国土交通省が『工事監理ガイドライン』を公表した(後記※2)

い ガイドラインの法的位置づけ

法令ではないので強制力はない
工事監理契約の内容の判断では一定の基準としての役割を果たす
→訴訟の際は有力な参考資料となる
※松本克美ほか編『専門訴訟講座2 建築訴訟 第2版』民事法研究会2013年p52

5 監理業務の注意義務の内容(概要)

実務では,建設工事の不備(ミス)を見逃した監理者の責任が問題となることが多いです。その際には,監理業務の注意義務の内容によって責任の有無が決まってきます。
管理業務の注意義務については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|建築の施工ミスを見逃した監理者の責任(注意義務・施工者の責任との関係)

6 監理業務を規定する告示・ガイドラインの情報ソース

以上の説明に登場した,監理業務の内容を規定した告示やガイドラインの情報のソース(リンク)をまとめておきます。

<監理業務を規定する告示・ガイドラインの情報ソース(※2)>

あ 告示第15号

平成21年1月7日
国土交通省告示第15号
外部サイト|国土交通省|告示第15号

い 工事監理ガイドライン(掲載サイト)

外部サイト|国土交通省|工事監理ガイドラインについて

う 工事監理ガイドライン(本体)

平成21年9月1日公表
外部サイト|国土交通省|工事監理ガイドライン

本記事では,建物の建築工事における設計と監理の業務の内容について説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることもあります。
実際に建物の建築工事に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。