1 利回り法の必要諸経費(公租公課・管理費用の扱いや定率算定)
2 必要諸経費の基本的な内容
3 必要諸経費の具体的内容
4 管理費用の定率算定
5 特殊事情による管理費用の算定

1 利回り法の必要諸経費(公租公課・管理費用の扱いや定率算定)

継続賃料の算定方式の1つに利回り法があります。利回り法の計算の中で必要諸経費が出てきます。
詳しくはこちら|利回り法の基本(考え方と算定式)
本記事では,利回り法の試算における必要諸経費について説明します。

2 必要諸経費の基本的な内容

利回り法の中で使う必要諸経費の中身としては,まず,公租公課があります。さらに,それ以外の維持,管理に要する費用も含める傾向があります。

<必要諸経費の基本的な内容>

あ 公租公課

借主が負担すべきことになる必要諸経費等
→主に公租公課が該当する
内容=固定資産税,都市計画税など
このことは実務上定着している
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p758
※東京高裁昭和51年8月31日

い 管理費用(※1)

管理費用について
→実費を加算する傾向の方が強い
定率で算定するケースもある(後記※2
加算していない裁判例も多い
特殊事情を反映させるケースもある(後記※3
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p758,759
※澤野順彦稿/田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法 第2版』日本評論社2019年p76

3 必要諸経費の具体的内容

必要諸経費の具体的な内容をまとめます。
公租公課が主なものですが,それ以外の経費については含めるか含めないかの両方の見解があります。

<必要諸経費の具体的内容>

あ 公租公課
い 減価償却費
う 維持管理費

例=維持費,管理費,修繕費など
加算の有無や内容についての解釈論がある(前記※1

え 損害保険料

ア 火災保険イ 損害保険 例=機械,ボイラーなどにかける保険

う 貸倒れ準備金
え 損失相当額

例=空室リスクなど
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p759

4 管理費用の定率算定

管理費用も必要諸経費として含める見解もあります。管理費用を含める具体的な方法として,一定の割合を用いた概算額を採用することもあります。

<管理費用の定率算定(※2)

あ 定率算定の妥当性

管理費用を定率で算定することについて
→根拠が明らかではないので妥当ではない
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p758,759

い 用いる率

(定率算定をする場合)
加算する場合の管理費の額は,純賃料の2〜3%もしくは公租公課の20%程度とするものが多い。
※澤野順彦稿/田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法 第2版』日本評論社2019年p76

う 裁判例

ア 底地価格の0.2% ※東京地裁昭和44年11月5日
イ 純賃料の2% ※新潟地裁昭和46年8月18日

5 特殊事情による管理費用の算定

個別的な特殊事情を管理費用の算定に反映させた裁判例を紹介します。集金のために費用を要したのですが,それが発生した原因は賃貸人による受領の拒否でありました。そこで裁判所は,集金費用を必要諸経費に含めない(賃貸人がこの費用を負担する)という判断をしました。

<特殊事情による管理費用の算定(※3)

あ 原則論

土地の維持修繕費(管理費用)について
→原則的に賃借人が負担すべきである

い 特殊事情による例外

賃貸人が放棄した利益は賃貸人が負担する

う 特殊事情の具体例

賃料の持参人払い賃貸人が拒否した
集金費用は賃貸人が負担する
=必要諸経費に算入しない
※大阪地裁昭和43年3月25日

本記事では,継続賃料の算定方式のうち利回り法の中で出てくる必要諸経費の内容について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法が違ってきます。
実際に地代などの土地の賃貸借に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。