【売買×心理的瑕疵|判例|自殺】

1 売買×6年11か月前の自殺発覚→解除肯定
2 売買×5か月前の自殺発覚→損害賠償肯定
3 売買×1〜2年前の自殺発覚→瑕疵肯定
4 売買×2年1か月前の自殺発覚→告知義務肯定
5 売買×1年11か月前の自殺発覚→瑕疵肯定
6 売買×6年前の自殺発覚→解除肯定
7 売買×8年前の自殺発覚→瑕疵否定

1 売買×6年11か月前の自殺発覚→解除肯定

売買後に過去の自殺が発覚したケースの判例を紹介します。
まずは責任が認められた判例からまとめます。

<売買×6年11か月前の自殺発覚→解除肯定>

あ 事案

ア 売買物件 土地及び建物(戸建)
イ 当事者 売主=言及なし
買主=個人

い 発覚した事実

契約締結時より6年11か月前
建物に付属する物置内
元所有者が農薬を飲んで自殺を図った
→運ばれた病院で死亡していた

う 売主の認識

言及なし

え 裁判所の判断

売主の瑕疵担保責任を肯定
→契約解除を認めた
※東京地裁平成7年5月31日

2 売買×5か月前の自殺発覚→損害賠償肯定

<売買×5か月前の自殺発覚→損害賠償肯定>

あ 事案

ア 売買物件 土地及び建物(戸建と思われる)
イ 当事者 売主=個人
買主=個人

い 発覚した事実

契約締結より5か月前
対象建物の中
売主の親族(土地売主の父で建物売主の夫)が首吊り自殺をしていた

う 売主の認識

あり

え 裁判所の判断

売主の瑕疵担保責任を肯定
→損害賠償請求を認めた
※浦和地裁川越支部平成9年8月19日

3 売買×1〜2年前の自殺発覚→瑕疵肯定

<売買×1〜2年前の自殺発覚→瑕疵肯定>

あ 事案

ア 売買物件 土地及び建物
戸建と思われる
イ 想定されていたプロジェクト 建物は買主にて取り壊した上,買主が建売住宅を新築して販売する
ウ 当事者 売主=個人
買主=不動産業者

い 発覚した事実

契約締結時より1年から2年ほど前
売買物件である建物内
売主の母が,首吊り自殺をしていた

う 売主の認識

あり

え 裁判所の判断

売主の瑕疵担保責任を否定
※大阪地裁平成11年2月18日

4 売買×2年1か月前の自殺発覚→告知義務肯定

<売買×2年1か月前の自殺発覚→告知義務肯定>

あ 事案

ア 売買物件 土地+1棟のマンション
共同住宅
賃貸による収益物件
イ 当事者 売主=不動産業者
買主=個人

い 発覚した事実

契約締結時より2年1か月前
当時の居住者が売買物件から飛び降り自殺をしていた

う 売主の認識

あり

え 裁判所の判断

売主の告知説明義務を肯定
※東京地裁平成20年4月28日

5 売買×1年11か月前の自殺発覚→瑕疵肯定

<売買×1年11か月前の自殺発覚→瑕疵肯定>

あ 事案

ア 売買物件 土地及び1棟のマンション
主に事業用賃貸物件であった
イ 当事者 売主=不動産業者
買主=不動産業者

い 発覚した事実

契約締結時より1年11か月前
当時の居住者が睡眠薬自殺を図った→病院に搬送された
→2,3週間後に病院で死亡した

う 売主の認識

なし

え 裁判所の判断

『瑕疵』に該当する
『売主の調査説明義務(違反)』を否定
損害賠償は『売買代金額の1%』だけを認めた
※東京地裁平成21年6月26日

6 売買×6年前の自殺発覚→解除肯定

<売買×6年前の自殺発覚→解除肯定>

あ 事案

ア 売買の概要 都心部のマンション
家族で居住する目的で購入
イ 発覚した事実 6年前に,ベランダで,売主代表者の妻が自殺していた
縊死(いし)=首吊り

い 裁判所の判断

縊死は自殺の中ではショッキングな程度が高い
→瑕疵を肯定
→解除を認めた
※横浜地裁平成元年9月7日

7 売買×8年前の自殺発覚→瑕疵否定

売主の責任が否定された判例です。

<売買×8年前の自殺発覚→瑕疵否定>

あ 事案

土地の売買

い 発覚した事実

8年前
その土地上にかつて存在した建物の1室
居住者が焼身自殺をしていた

う 裁判所が重視した事情

ア 焼身自殺の半年後に建物は解体されたイ それ以降駐車場として利用されてきた

え 裁判所の評価

ア 自殺場所の『割合』が少ない 自殺があった部屋は共同住宅の一部に過ぎない
イ 人の居住による嫌悪度低下 自殺後,他の部屋は居住が継続していた
ウ 物理的『痕跡』なし 事故の生じた建物は解体された
エ 経済的な実害がほとんどない ・売買後に建築された分譲マンションは完売している
・マンションの売却代金に『自殺事件』がほとんど影響していないと思われる
重要事項説明書には明記した(せざるを得なかった)

お 裁判所の判断(結論)

『瑕疵』とは認めない
※東京地裁平成19年7月5日

おおまかな目安として,自殺があった建物が解体された場合は,8年程度で心理的瑕疵ではなくなるといえるでしょう。一方,自殺があった建物が解体されていない場合にはもう少し年数が経過するまでは心理的瑕疵が存続しているということになる傾向があります。

本記事では,自殺があった不動産の売買における心理的瑕疵の判断をした実例(裁判例)を紹介,説明しました。
実際には個別的な事情によって判断は違ってきます。
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