【ペットの死傷|判例|獣医・ペットホテル|医療・保管ミス→死亡】
1 医療ミス・猫死亡|事案・責任判断
2 医療ミス・猫死亡|損害認定・控訴
3 医療ミス・猫死亡|物的損害|算定
4 医療ミス・猫死亡|慰謝料・特殊事情
5 出産処置ミス・母+子猫死亡|事案・血統
6 出産処置ミス・母+子猫死亡|慰謝料なし
7 帝王切開ミス・母+子犬死亡|慰謝料込み5万円
8 医療ミス・犬死亡|慰謝料21万円
9 医療ミス・犬死亡|慰謝料3万円
10 ペットホテル・犬5頭死亡|慰謝料70万円
1 医療ミス・猫死亡|事案・責任判断
ペットに関するご相談・ご依頼をされる前に、次のことをご理解ください。よく考えてご了解いただいてから、お問い合わせくださいますようお願いします。
ペット相談・依頼の前提事項(押すと開く)
・多くの資料や調査が必要となること
・法律相談の相談料は30分1万1000円、最低限2万2000円となること
・代理人交渉のご依頼の着手金は最低限33万円であり、ご依頼の時点でお支払いいただく必要があること
ペットが死亡や負傷をした場合,損害賠償責任(慰謝料)が認められることがあります。
詳しくはこちら|ペット死亡・負傷|損害賠償|財産的損害×慰謝料|理論・基準
ペットの診療や保管中のミスによってペットが死亡するケースもよくあります。
本記事では,そのようなケースで損害賠償(慰謝料)が認められた実例(裁判例)を紹介します。
まずは診療ミスによる愛猫の死亡事故です。
事案と責任の有無の判断をまとめます。
<医療ミス・猫死亡|事案・責任判断>
あ 被害猫
アメリカンショートヘアーの一種
5歳メス
い 死亡事故
避妊手術を行った
その翌日に死亡した
う 裁判所の判断|医療ミス
尿管を卵巣動脈とともに誤って結紮した
=管をしばること
→これによって死亡した
不法行為・債務不履行責任が生じる
※宇都宮地裁平成14年3月28日
2 医療ミス・猫死亡|損害認定・控訴
前記事例について裁判所が認めた賠償内容をまとめます。
<医療ミス・猫死亡|損害認定・控訴>
あ 裁判所の判断|損害認定
項目 | 金額 |
治療費など実費 | 3万2500円(後記※1) |
物的損害=市場価値 | 50万円 |
慰謝料 | 20万円(後記※2) |
弁護士費用 | 20万円 |
い 判決後|控訴→和解
控訴された
→和解が成立した
※宇都宮地裁平成14年3月28日
3 医療ミス・猫死亡|物的損害|算定
前記判例の中の『物的損害』の内容を整理します。
<医療ミス・猫死亡|物的損害|算定(※1)>
あ 基本的事項
純粋な交換価値を算定する
い 入手経緯
ブリーダーから30万円で購入した
優秀な血統を持つ
その後,人気・評判が高くなった
う 日本ランキング
平成4年度の年間総合成績
カテゴリ | カテゴリ内容 | 順位 |
カテゴリ別 | アメリカンショートヘア | 1位 |
総合 | 全種 | 5位 |
え 結論
市場価値としては50万円と認めた
※宇都宮地裁平成14年3月28日
4 医療ミス・猫死亡|慰謝料・特殊事情
前記判例の中で慰謝料が認められた理由をまとめます。
<医療ミス・猫死亡|慰謝料・特殊事情(※2)>
飼主は,家族の一員として愛情を注いでいた
繁殖→収益の獲得は考えていなかった
※宇都宮地裁平成14年3月28日
5 出産処置ミス・母+子猫死亡|事案・血統
出産時に母猫・子猫が亡くなった悲しい事例を紹介します。
まずは事案内容を整理します。
<出産処置ミス・母+子猫死亡|事案・血統>
あ 事案
飼猫Aの出産の処置が必要となった
獣医が陣痛促進剤を注射した
その後まもなく母猫・2匹の胎児が死亡した
い 被害猫|血統
猫Aはアビシニアンであった
死亡した母猫A・胎児の父猫
→米国愛猫家団体によるチャンピオン認定を受けていた
※大阪地裁平成9年1月13日
6 出産処置ミス・母+子猫死亡|慰謝料なし
前記事例について裁判所の判断結果を整理します。
<出産処置ミス・母+子猫死亡|慰謝料なし>
あ 裁判所の判断|財産的損害
猫 | 財産的損害=市場価値 |
母猫 | 30万円 |
胎児2匹 | 40万円 |
合計 | 70万円 |
い 裁判所の判断|弁護士費用
10万円を認めた
う 裁判所の判断|慰謝料
愛玩用ではなく商品用飼育であった
→認めなかった
※大阪地裁平成9年1月13日
純粋な『ペット』という性格ではなかったのです。
そのために慰謝料は認められませんでした。
7 帝王切開ミス・母+子犬死亡|慰謝料込み5万円
愛犬の出産時のミスによる死亡事故です。
賠償責任のある損害について変わった考え方が取られています。
<帝王切開ミス・母+子犬死亡|慰謝料込み5万円>
あ 事案
犬Aが妊娠した
出産のため,獣医が帝王切開手術を施した
医療ミスにより,子犬・母親が死亡した
い 損害算定|特殊性
犬Aの取得価格は3万円であった
死亡当時における客観的価格が確定できない
う 損害算定|結論
『財産的損害・慰謝料』を一括して損害を算定した
→合計5万円と認めた
※東京地裁昭和43年5月13日
8 医療ミス・犬死亡|慰謝料21万円
医療ミスにより愛犬が死亡した事故です。
<医療ミス・犬死亡|慰謝料21万円>
あ 事案
飼犬Aが獣医の診療を受けた
獣医師の輸血の準備不足により犬が死亡した
い 違法性
説明義務違反を認めた
う 慰謝料
慰謝料21万円を認めた
※名古屋地裁平成21年2月25日
9 医療ミス・犬死亡|慰謝料3万円
医療ミスにより愛犬が死亡した事故です。
<医療ミス・犬死亡|慰謝料3万円>
あ 事案
飼犬Aが診療を受けた
ボクサー種の血統正しい牡犬であった
犬Aが医療ミスで死亡した
い 裁判所の判断|損害賠償責任
項目 | 金額 |
財産的損害=市場価値 | 27万円 |
慰謝料 | 3万円 |
う 慰謝料・特殊事情
財産的価値の賠償では払拭し難い精神的苦痛を受けた
※東京高裁昭和36年9月11日
10 ペットホテル・犬5頭死亡|慰謝料70万円
ペットホテルでの保管中にミスがあったケースです。
5頭の愛犬が亡くなったので慰謝料が高額化しました。
<ペットホテル・犬5頭死亡|慰謝料70万円>
あ 事案
ブリーダーが犬を飼育していた
ペットホテルに犬の飼育管理を委託した
ペットホテルのミスによって犬5頭が死亡した
い 裁判所の判断
項目 | 金額 |
財産的損害=市場価値 | 犬5頭→80万円 |
慰謝料 | 70万円 |
※千葉地裁平成17年2月28日
本記事では,ペットホテルや獣医のミスによってペットが死亡したケースで損害賠償(慰謝料)が認められた実例(裁判例)を説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際にペットの死亡や負傷に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご理解くださるようお勧めします。