【両手仲介・双方受託|発覚抑制メカニズム|弁護士・米国との比較】
1 双方受託・両手仲介|常態化・タブー化
仲介の不正にはいろいろなバリエーションがあります。
その中でも、双方受託・両手仲介は根が深い問題です。
不正が蔓延し、表面化しにくい構造があります。
双方受託・両手仲介|常態化・タブー化
あ 双方受託|常態化
我が国では双方媒介が相当以前から取引慣行として行われてきた
媒介業者の誠実義務(宅建業法31条1項)との関係で問題がある
い タブー化傾向
両手仲介・双方受託の当否について
→これまであまり表立って議論されていない
従来不動産業界ではこれを議論すること自体に抵抗があった
う タブー化|原因
両手仲介が禁止or制限された場合
→仲介報酬は一方当事者からに限られる
=仲介業者の収入が半減する
→仲介業者の経営的基盤に大きく係わる
→話題・議論自体がタブーとなっていた
※岡本正治ほか『全訂版詳解不動産仲介契約』大成出版社p73〜
※岡本正治ほか『改訂版逐条解説宅地建物取引業法』大成出版社p69
2 仲介の不正×不正発覚抑制メカニズム
仲介の不正は業界の構造的に発覚が抑制されます。
双方受託に限らず、不正全般について当てはまります。
不正の発覚が抑制されるメカニズムを整理します。
仲介の不正×不正発覚抑制メカニズム
あ 利害状況
双方代理を元にした『不正』で利益を得るのは『不動産仲介業界全体』である
各業者は『お互い様』という状態にある
い 現象
『相互に見て見ぬふり』をするという態度が選択されやすい
結果的に表面化することが少ないのです。
もちろん善良な仲介業者ばかりであるために『発覚なし』であれば理想です。
しかし、実際のケースとして『後から発覚』することがあるのです。
業者の不正を確認・発覚する方法は別に説明しています。
詳しくはこちら|囲い込み対策|個別事案|ダミー照会・マイソク・囲い込みチェッカー
3 双方受託禁止|仲介業務・あるべき姿
上記のように、双方受託は望ましいものではありません。
本来あるべき姿をまとめます。
双方受託禁止|仲介業務・あるべき姿
あ 基本
次の構造・方法が仲介業者の本来の姿である
い あるべき姿
当事者双方がそれぞれ別の仲介業者に仲介を委託する
仲介業者はもっぱら自己の委託者のために誠実義務を尽くす
双方が落ち着きどころを探し成約に至る
※岡本正治ほか『全訂版詳解不動産仲介契約』大成出版社p77
4 弁護士|双方受託・利益相反厳禁
弁護士の典型業務にも『当事者間の交渉』があります。
参考として、弁護士の業務に関するルールを紹介します。
弁護士|双方受託・利益相反厳禁
あ 利益相反厳禁
弁護士が交渉・訴訟を受任する場合
→当然、一方当事者のみから依頼を受ける
利益相反行為は固く禁止されている
い 利益相反行為|例
ア 当事者の双方から依頼を受けることイ 一定の関係者を相手とする案件を受任すること※弁護士法25条
※弁護士職務基本規程27条、28条
このルールと比べると不動産仲介の双方受託が不自然に思えます。
5 米国|2重代理=dual agency
米国の不動産流通の状況も参考になります。
米国|2重代理=dual agency
あ 基本
米国の不動産流通に関するサービスにおいて
→仲介・媒介の概念はない
不動産仲介に相当するものは『代理agency』である
い 代理の構造|原則
契約当事者の双方から代理を受けることはできない
大部分の州では双方代理を禁止している
う 代理の構造|例外
例外を認める州法もある
例外の前提;相互の承諾+書面による同意
裁判所はこの例外を認める傾向にある
インフォームド・コンセントのスピリットである
※F.W.Galatyほか『Modern Real Estate Practice 12th』p30
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


