1 複数業者の関与と重要事項説明義務(基本)
2 売主・媒介の重要事項説明義務(裁判例)
3 複数業者の関与と重要事項説明の現実的方法
4 重要事項説明を委託した宅建業者の関与
5 重要事項説明書の記載
6 複数業者が負う法的責任

1 複数業者の関与と重要事項説明義務(基本)

宅建業者が不動産取引に関与した場合,一定の状況で重要説明の義務を負います。
詳しくはこちら|重要事項説明義務の基本(説明の相手方・時期・内容)
1つの取引に複数の宅建業者が関与することもよくあります。
この場合には,すべての宅建業者が重要事項説明義務を負います。
ただし,複数の業者(の取引士)が臨席する必要はありません。

<複数業者の関与と重要事項説明義務(基本)>

あ 義務を負う者

1つの宅地建物取引に複数の宅建業者が関与した場合
→いずれの宅建業者も『重要事項説明義務』を負う(後記※1)
例;売主業者・仲介業者・販売代理業者

い 説明義務の履行者

取引に関与したすべての宅建業者について
→重複して重要事項説明を現実に行う必要はない
※岡本正治ほか『全訂版 詳解 不動産仲介契約』大成出版社2012年p301

2 売主・媒介の重要事項説明義務(裁判例)

売主と媒介の両方が宅建業者であった取引について,両方の重要事項説明を認めた裁判例を紹介します。

<売主・媒介の重要事項説明義務(裁判例;※1)>

あ 当事者

売主A=宅建業者であった
宅建業者Bが媒介を行った
買主C

い 重要事項説明義務

Aの重要事項説明義務について
Bの媒介によって免除されることはない
→A・Bの両方が重要事項説明義務を負う
※東京地裁平成21年4月13日

3 複数業者の関与と重要事項説明の現実的方法

複数の宅建業者が関与したケースでは,実際には代表となる1社(の宅建士)が重要事項説明を行うのが一般的です。

<複数業者の関与と重要事項説明の現実的方法>

あ 代表者の決定

関与する複数の宅建業者において
事前に『い』の事項を協議し決定する

い 協議・決定する内容

いずれの宅建業者が『ア・イ』を行うか
ア 重要事項説明書の作成
イ 重要事項の説明

う 代表者による説明の法的構成

宅建業者間において
重要事項説明の履行を委託する
特定の宅建業者Aが複数の宅建業者を代表して重要事項説明を履行する
宅建業者Aの取引主任者が相手方に説明する
※岡本正治ほか『全訂版 詳解 不動産仲介契約』大成出版社2012年p301

4 重要事項説明を委託した宅建業者の関与

重要事項説明を実際に行わず,他の業者に委託した業者も抽象的な『説明義務』を負います(前記)。
この場合の具体的な『説明義務』の履行は,間接的なチェックということになります。

<重要事項説明を委託した宅建業者の関与>

あ 説明を委託した宅建業者の分担業務

取引に関与した宅建業者のうち
重要事項説明を直接的に履行をしない業者について
→代表する宅建業者が相手方に正確に説明するよう要請する義務を負う

い 具体的な業務の内容

交付する重要事項説明書の記載内容を事前に点検・確認する
欠けている事項や不十分・不正確な事項がある場合
→これを補充・訂正する
※岡本正治ほか『全訂版 詳解 不動産仲介契約』大成出版社2012年p301

5 重要事項説明書の記載

複数の宅建業者が関与した取引では,重要事項説明書にすべての宅建業者が記載される必要があります。
ただし,宅建士の表示や押印は,最低限代表となって説明を履行した業者(の宅建士)で足ります。

<重要事項説明書の記載>

あ 基本的事項

重要事項説明書について
関与した宅建業者すべてが『い・う』の事項を行う

い 取引態様の明示

取引態様を明示(記載)する
取引態様の内容=売主業者・仲介業者・販売代理業者

う 宅建業者の記名(押印)

重要事説明書に記名をする
押印まですることが望ましい

え 取引士の記名押印

実際に説明した取引士について
→氏名・登録番号などを記載し押印する
関与した宅建業者すべての取引士が行う義務はない
※岡本正治ほか『全訂版 詳解 不動産仲介契約』大成出版社2012年p301

6 複数業者が負う法的責任

実際に重要事項説明を履行した業者以外の宅建業者も,抽象的な『重要事項説明義務』を負います(前記)。
説明内容が不十分であったケースでは,この説明義務が『損害賠償責任』として表面化します。

<複数業者が負う法的責任>

あ 行政責任

重要項説明に誤りがあった場合
すべての宅建業者・取引主任者について
→宅建業法35条違反に該当する
=行政処分の対象となる

い 民事責任

一般的な説明義務違反があった場合
→複数業者が連帯して損害賠償責任を負う傾向がある
※大阪高裁昭和58年7月19日
詳しくはこちら|開発許可の必要の不告知による売主・仲介の連帯責任(肯定裁判例)
※松山地裁平成10年5月11日
詳しくはこちら|高架建設予定の不告知による売主・仲介の連帯責任(肯定裁判例)
※岡本正治ほか『全訂版 詳解 不動産仲介契約』大成出版社2012年p301