1 宅建業者から依頼者以外への報酬請求(総論)
2 依頼者以外への報酬請求の肯定裁判例
3 依頼者以外への報酬請求の否定判例(事案)
8 依頼者以外への報酬請求の否定判例(裁判所の判断)

1 宅建業者から依頼者以外への報酬請求(総論)

媒介をした宅建業者は,依頼(委託)をしていない取引当事者に報酬を請求できることがあります。
『依頼者以外Aのために媒介を行った』状況であれば,Aに対する報酬請求ができるというものです。
詳しくはこちら|宅建業者から依頼者以外への報酬請求の基本(民事仲立人・商人の性質)
本記事では,依頼者以外への報酬請求権の有無が判断された(裁)判例について紹介します。

2 依頼者以外への報酬請求の肯定裁判例

媒介をした宅建業者から依頼者以外への報酬請求が否定された裁判例を紹介します。
請求相手のために媒介をした,と認定されたのです。

<依頼者以外への報酬請求の肯定裁判例(※1)>

あ 媒介行為

Aは不動産取引の当事者である
Aは宅建業者Bに委託していない
宅建業者Bは,不動産取引の媒介行為を行った

い 当事者のための行為

客観的にみてAのためにする意思をもって媒介行為をした場合
→BはAに対する報酬請求権がある
※商法512条
※東京地裁昭和36年7月10日

3 依頼者以外への報酬請求の否定判例(事案)

宅建業者から依頼者以外への報酬請求が否定された判例を紹介します。
まずは事例だけをまとめます。

<依頼者以外への報酬請求の否定判例(事案;※2)>

あ 自治体の計画

兵庫県は『い』の宅地造成計画を樹立した

い 宅地造成計画の内容

一帯の土地約5〜6万坪を買収する
宅地を造成する
県営住宅を建設する

う 媒介に関する協働体制

兵庫県はAに用地買受の媒介を委託した
計画の対象エリア内の甲土地の所有者はBであった
Bの代理人Cは用地の一部の売買をあっせんしていた
AはCに対して他の地主に対する買受交渉の協力方を依頼した
Cはこれを了承した
Cは,土地売却の媒介をAに委託してはいない

え 売却に至る経緯

Aは,Cに対して,甲土地の売却を説得した
しかしCは甲土地の売却を強硬に拒否し続けた
Cは,土地収用法による収用などを危惧するに至った
そこでようやくその売却を承諾した
※最高裁昭和44年6月26日

8 依頼者以外への報酬請求の否定判例(裁判所の判断)

前記事案についての裁判所の判断をまとめます。
報酬の請求相手のために媒介をした,という認定がされなかったのです。

<依頼者以外への報酬請求の否定判例(裁判所の判断;※2)>

あ 協働体制の内容

AはBの媒介委託により売買の媒介をしたものではない
AはBのためにする意思をもって売買の媒介をしたものではない
Aは兵庫県の委託により媒介をした
もっぱら兵庫県のためにする意思をもって媒介をした

い 商人としての報酬請求権

商人としての報酬請求権について
→発生しない
※商法512条

う 商事仲立人としての報酬請求権

商法550条の規定について
→適用されない

え 宅建業法17条の解釈

宅建業法17条の規定について
→報酬額の最高限度を規定するものである
報酬請求権発生の根拠ではない
※最高裁昭和44年6月26日