1 ドンキーコングJr事件(総論)
2 ドンキーコングのプログラム創作プロセス
3 ドンキーコングの著作者の刻印
4 ドンキーコングのプログラムの著作者の判定

1 ドンキーコングJr事件(総論)

ドンキーコングJr事件では,このゲームの著作権の帰属について見解が対立していました。
詳しくはこちら|ドンキーコングJrの著作権の帰属(ドンキーコングJr事件)
その前提・背景として,ドンキーコング(元祖)に関する著作権の帰属についても審理されています。
本記事ではドンキーコング(元祖)の著作権の帰属について説明します。

2 ドンキーコングのプログラム創作プロセス

ドンキーコングに関する著作権の帰属の見解が対立する要因は創作プロセスにあります。『創作した者』や『著作権の処理』について非常に曖昧な状況だったのです。

<ドンキーコングのプログラム創作プロセス>

あ 開発委託契約締結

任天堂が池上通信機株式会社に開発を委託した
開発委託契約書には著作権の所在が記載されていなかった

い 開発業務の遂行

開発の業務には任天堂・池上通信機株式会社の両方が関わった

う 納品

ソースコードは池上通信機株式会社が作成した
池上通信機株式会社は任天堂にマスターロムを引き渡した
ソースコード・フローチャートは引き渡していない
※大阪地裁堺支部平成2年3月29日;ドンキーコングJr事件

空前の大ヒットが分かっていればこのようなことはなかったのだと思えます。

3 ドンキーコングの著作者の刻印

ドンキーコングのプログラムの創作者や著作者に関する痕跡はプログラムの中に埋め込まれていました。いわば刻印のようなものです。

<ドンキーコングの著作者の刻印(※1)>

あ 表面的記載

『C NINTENDO 1981』
→任天堂を示す

い ソースコード中の隠し文字

『CONGRATURATION! IF YOU ANALYSE DIFFICULT THIS PROGRAM WE WOULD TEACH YOU.***TEL.TOKYO-JAPAN 044(244)2151 EXTENTION 304 SYSTEM DESIGN IKEGAMI CO.LIM』
→池上通信機株式会社を示す
※大阪地裁堺支部平成2年3月29日;ドンキーコングJr事件

結果的に,この刻印は著作者の判定では重視されませんでした。判断の内容は次に説明します。
なお,ゲームのプログラム中の刻印が効果を発揮したケースもあります。
詳しくはこちら|著作権者=創作者の判定は難しい|著作者の刻印|XEVIOUSに学ぶ

4 ドンキーコングのプログラムの著作者の判定

ドンキーコングのプログラムの著作者について,ドンキーコングJr事件の中では明確な判断がされませんでした。これは,刑事事件の審理における前提事情という審理の枠組み・位置付けによるものです。

<ドンキーコングのプログラムの著作者の判定>

あ 裁判所の判断

ドンキーコングのソフトウエア・プログラムの著作権について
プログラムを無断で盗用したタイプのトラブルではない
→『著作者の刻印』(前記※1)は重視しない
『あ』の事情では任天堂にあるとする証明はない
※大阪地裁堺支部平成2年3月29日;ドンキーコングJr事件

い 補足説明

刑事裁判の前提事情として判断したものである
池上通信機株式会社に著作権が帰属すると判断したわけではない
刑事裁判とは別に民事裁判が提起されていた
ドンキーコング・同Jrの著作権の帰属が審理されていた
事件番号=東京地裁昭和58年(ワ)第6605,7530号事件
しかし判決としての記録が公表されていない
→和解で終了したと思われる