1 つくば市対早大風力発電貧弱事件|事案概要
2 つくば市対早大風力発電貧弱事件|裁判所の判断
3 風力発電貧弱事件|風が吹かなくても関係者は儲かる現象
4 風力発電貧弱事件|公的資金の回収|環境省
5 風力発電貧弱事件|残された問題|市の公金・世間の信用

1 つくば市対早大風力発電貧弱事件|事案概要

平成16年度に,つくば市で風力発電事業が遂行されました。
政府の公金も投入した再生可能エネルギー活用を図る1大プロジェクトでした。
しかし,当初想定した発電量を獲得できず,失敗に終わりました。
その後,法的な責任が最高裁で判断されています。
この事案を紹介します。

<つくば市対早大風力発電貧弱事件|事案概要>

あ 風力発電機の設置

つくば市が風力発電事業を行った
つくば市が早稲田大学と業務委託契約を締結した
小型風力発電機が設置された
・つくば市内の小中学校19校
・小型風力発電機23基

い 発電量貧弱不等式

『発電機自体の消費電力』>『発電量』
→事業は失敗と言える

2 つくば市対早大風力発電貧弱事件|裁判所の判断

つくば市の風力発電の失敗について,裁判所の判断をまとめます。

<つくば市対早大風力発電貧弱事件|裁判所の判断>

あ 裁判所の判断|責任論

早稲田大学の教授は『事業が売電を含むこと』を知っていた
→適切な指導・助言をすべき義務があった
→この義務の不履行=債務不履行と認める

い 裁判所の判断|過失の比重

つくば市は『事業主体』である
→責任は格段に重い

う 裁判所の判断|過失割合

つくば市=7割
早稲田大学=3割=約8950万円
※最高裁平成23年6月9日;つくば市対早稲田大学風力発電機事件

3 風力発電貧弱事件|風が吹かなくても関係者は儲かる現象

つくば市の風力発電事業に関する最高裁判決を前提として,まだ問題が残っていました。

<風が吹かなくても関係者は儲かる現象>

あ 公的資金の獲得

風力発電事業には次の公的資金が投入されていた

い 二酸化炭素排出抑制対策事業費交付金

平成16年度『まほろば事業』
1億8500万円

う 不正発覚後の市原健一市長のコメント

早大の損害賠償責任が認められたものの,このような結果になり残念。
市としては最終的な司法の判断を真摯(しんし)に受け止める。
※時事通信平成23年6月10日
※注意;つくば市長の苗字が『市原』である,『市原市』とは関係ない

え 溶かした公金の行方

結局公金を無駄に溶かした状態となった
市民には利益をもたらさない事業で関係者が潤った状態である
このような不当・不合理な状況について問題となった

4 風力発電貧弱事件|公的資金の回収|環境省

政府としての公的資金がつくば市の風力発電事業に投入されていました。
結果的に,環境省は『全額返還』を求めることになりました。

<風力発電貧弱事件|公的資金の回収|環境省>

あ 環境省の調査・検証結果

交付申請時において『事実と異なる前提』が設定されていた
風力発電機の改良などでは,当初計画を実現する抜本的な改善策とはならない
→二酸化炭素の削減効果の実現は不可能である

い 補助金交付申請時の『虚偽事実』

次の発電能力が異なっていた
ア 『設置予定』の風力発電機の能力
イ 発電量の『試算に用いた風力発電機』の能力

う 補助金返還命令|平成18年9月25日

補助金交付決定の取消
→交付済補助金の返還命令
※補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律17条,18条

5 風力発電貧弱事件|残された問題|市の公金・世間の信用

風力発電貧弱事件では,最高裁・環境庁の判断の後も残されている問題があります。

<風力発電貧弱事件|残された問題>

あ つくば市の公金投入

『国税からの公金』は返還が決まった
『つくば市が投入した公金』は別である

い 世間の信頼失墜

風力発電や再生可能エネルギー発電全体に『不信』が広がった
→発電事業ドメインに『風評被害』と同様の状況が生じている