1 青少年育成条例の18歳未満の認識の問題(総論)
2 犯罪の成立と『故意』の一般論
3 18歳未満である認識と罪の成否(基本)
4 18歳未満である認識と罪の成否(具体例)

1 青少年育成条例の18歳未満の認識の問題(総論)

青少年育成条例では,18歳未満の者との『みだらな性交』が犯罪として規定されています。『みだらな性交』の解釈は複雑で,また,明確でないという問題点があります。
詳しくはこちら|青少年育成条例の『みだらな性交』の解釈と明確性の原則違反
さらに『18歳未満』という年齢の認識の判断も実際には単純ではありません。
本記事では,この年齢の認識と罪の成立との関係について説明します。

2 犯罪の成立と『故意』の一般論

年齢の認識の問題は,刑法(犯罪)に共通する『故意』の規定が理解のベースとなります。

<犯罪の成立と『故意』の一般論>

あ 原則

犯罪の成立には故意が必要である

い 未必の故意

結果の発生を不確定的(未必的)に認識していた
→『故意』に含まれる
※刑法38条1項
※最高裁昭和23年3月16日
※大谷實『刑法講義総論 新版第4版』成文堂p158
※大塚仁『刑法概説 総論 第4版』有斐閣p185

う 例外=過失犯処罰規定

『過失犯処罰規定』がある場合
→『故意なし・過失のみ』でも犯罪が成立する
※刑法38条1項

3 18歳未満である認識と罪の成否(基本)

青少年育成条例のみだらな性交の罪について,年齢の認識との関係を整理します。

<18歳未満である認識と罪の成否(基本)>

あ 東京都青少年育成条例の過失犯処罰規定

ア 規定そのもの
次の内容の規定がある
18歳未満であることの認識に過失があっても処罰する
※東京都青少年育成条例28条
イ 適用対象
『ア』の規定について
16条の2(みだらな性交)は対象に含まれない
→過失犯処罰規定は適用されない
→原則どおりに故意犯のみが対象となる

い 東京都以外の条例

みだらな性交に過失犯処罰規定が適用される自治体もある
例;長野県
詳しくはこちら|青少年育成条例の『みだらな性交』の解釈と明確性の原則違反

4 18歳未満である認識と罪の成否(具体例)

前記の『18歳未満である認識』はちょっと分かりにくいです。そこで,具体例を使って整理します。

<18歳未満である認識と罪の成否(具体例)>

あ 事例

性交の相手Aが18歳以上を示す身分証明書を見せた
実際には他の人Bの身分証明書であった
Aは17歳であった

い 通常の判断

18歳以上だと信じるのが通常である
→故意も過失もない
→過失犯処罰規定の有無に関わらず罪は成立しない

う 特殊事情あり

身分証明書がAのものではないと気付くような状況であった
例;身分証明書の顔写真とAの顔が明らかに異なる
→過失がある
→過失犯処罰規定がある条例では犯罪が成立する
ただし『未必の故意』があると判断される可能性もある
→この場合は過失犯処罰規定がない条例でも犯罪が成立する
※『東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説 平成23年7月』雄久社参照

結局,現実には『故意・過失』の判断は連続的なものであり,判断によるぶれがある程度大きいと思えます。