1 前提|弁済による代位
2 一部弁済による代位|基本
3 一部弁済による代位×抵当権|実行
4 一部弁済による代位×抵当権|取下
5 仮登記担保権への代位|全額/一部
6 一部弁済→抵当権の一部移転請求権

1 前提|弁済による代位

債務者以外の弁済により『代位』が生じることがあります。
弁済が債権の一部だけという場合は扱いが複雑になります。
本記事では一部の代位について説明します。
その前に,まずは代位の基本的事項をまとめます。

<前提|弁済による代位>

あ 代位弁済|基本

債務者以外が弁済をする
一定の範囲で『代位』が生じる
債権者の原債権を行使できることである
※民法499条,500条

い 代位弁済|典型例

ア 保証人の弁済
イ 物上保証人の担保権が実行されたこと

2 一部弁済による代位|基本

一部の弁済による代位の基本的事項をまとめます。

<一部弁済による代位|基本>

あ 一部代位弁済

債権の一部について代位弁済をした場合
→弁済者は債権者とともに原債権に代位する
※民法502条1項

い 債権者との関係

原債権を担保する抵当権が存在する場合
→原債権者と代位権者が抵当権を準共有する
※大阪地裁昭和48年3月14日
※東京地裁昭和59年3月23日
※東京高裁昭和60年3月28日

ここまでは条文からそのまま導ける内容です。
逆に,条文には,原債権者と代位権者の優劣は規定されていません。
これについては次に説明します。

3 一部弁済による代位×抵当権|実行

一部弁済による代位では『抵当権の実行』の解釈論があります。

<一部弁済による代位×抵当権|実行>

あ 基本

一部弁済による代位が生じた場合
原債権を担保する抵当権の実行について
→2つの見解がある

い 共同行使|実務的(※1)

代位権者は,原債権者と共同でしか抵当権を行使できない
=『原債権者の抵当権行使に付随する』だけしかできない
※東京高裁昭和42年12月21日
※名古屋高裁昭和51年5月24日
※東京高裁昭和55年10月20日

う 単独行使|古い判例

代位権者が単独で担保権実行ができる
※大決昭和6年4月7日

現在の実務では『い』の共同行使という見解が一般的です。

4 一部弁済による代位×抵当権|取下

一部代位弁済をした者の競売の『取下』に関する裁判例を紹介します。

<一部弁済による代位×抵当権|取下>

あ 前提事情

一部弁済による代位が生じた
原債権を担保する抵当権の実行がなされた
=競売申立がなされた

い 代位権者×取下

競売手続の取り下げについて
→代位権者は,原債権者とともに取り下げる必要がある
抵当権実行における『共同行使』(前記※1)と整合する見解である
※福岡高裁昭和38年8月16日

5 仮登記担保権への代位|全額/一部

イレギュラーな担保として『仮登記担保』があります。
詳しくはこちら|仮登記担保|適用対象・実行方法・清算方法
この担保についても弁済による代位が適用されます。
一部の弁済も同様です。

<仮登記担保権への代位|全額/一部>

あ 全部弁済→一般的代位

債務者以外が債権全額を弁済した場合
→『仮登記担保権』に代位できる
※東京地裁昭和38年4月17日
※大阪地裁昭和41年2月23日
※最高裁昭和41年11月18日

い 一部弁済→一部代位

債権者以外が債権の一部を弁済した場合
→仮登記担保上の権利を分け合って行使することはできない
→仮登記担保権への代位に基づく権利行使はできない
※東京高裁平成11年11月29日

6 一部弁済→抵当権の一部移転請求権

一部弁済により代位が認められます(前記)。
これに関して『抵当権の登記』の移転請求が認められます。
当然,移転するのは抵当権の『一部』となります。

<一部弁済→抵当権の一部移転請求権>

あ 融資・保証関係

銀行Aが債務者Bに融資した
AはB所有の不動産に抵当権の設定を受けた
保証会社Yが保証した
BのYに対する求償債務についてXが保証した

い 保証会社の代位弁済

YがBに残債務の一部を代位弁済した
→Yが抵当権の一部譲渡を受けた
=Yが抵当権の準共有持分登記を得た

う 保証人の代位弁済

YはBに対する求償権を持っている
XがYに代位弁済した

え 裁判所の判断

Xは抵当権の準共有持分を取得する
抵当権のYの準共有持分の移転登記を請求できる
※京都地裁平成11年5月28日

お 表記の注意

実際には根抵当権であった
確定後に各移転が生じている
つまり抵当権と同じ状態になっている
前記では便宜的に『抵当権』として記載している