1 相当の注意|判例|係留なし・放し飼い
2 相当の注意|判例|係留あり
3 相当の注意|内容|犬の散歩・係留関係
4 相当の注意|内容|犬の散歩・吠え関係
5 相当の注意|事例|係留×自招行為
6 相当の注意|事例|係留なし×自招行為

1 相当の注意|判例|係留なし・放し飼い

民法には動物の占有者の責任の規定があります。
この中に『免責』についても規定されています。
(別記事『動物の占有者の責任|免責=相当の注意|基本』;リンクは末尾に表示)
本記事では『相当の注意』の判断基準について説明します。
まずは『動物の係留』がない,つまり放し飼いの場合の基準をまとめます。

<相当の注意|判例|係留なし・放し飼い>

あ 係留なし

犬を係留していなかった
→『相当の注意』を満たさない
※東京地裁昭和41年12月20日
※東京地裁昭和53年1月24日

い 放し飼い→逃走

自宅座敷で愛玩犬を放し飼いにしていた
種=マルチーズ
犬が玄関から路上に飛び出した
通行人に咬傷を負わせた
→『相当の注意』を満たさない
※京都地裁昭和55年12月18日

このように『係留なしの犬』は『相当の注意』が欠けたと判断されています。

2 相当の注意|判例|係留あり

係留があった場合の『相当の注意』が満たされるとは限りません。
犬の係留に関する判断基準をまとめます。

<相当の注意|判例|係留あり>

あ 前提事情

犬を係留していた
しかし,噛みつくなどの被害が生じた

い 判断基準

係留の方法・内容が不適切であった場合
→『相当の注意』を満たさない

う 判断要素|例

ア 係留の用具
イ ロープの長さ
ウ 場所

え 判断の傾向

免責が認められることは少ない
※大阪地裁昭和58年12月21日
※京都地裁昭和56年5月18日

係留していても,結果的に被害が生じたら責任が認められる傾向が強いのです。

3 相当の注意|内容|犬の散歩・係留関係

『相当の注意』の具体的内容を説明します。
犬の散歩に関しては『係留』が具体的内容と言えます。

<相当の注意|内容|犬の散歩・係留関係>

あ 散歩中の注意義務|基本

万一犬が興奮しても十分に制御する
そのために次のような注意を払う義務がある

い 判断事項|例示

ア 散歩の場所・時間
イ 犬を牽引する方法
ウ 頭数

う 考慮事項|例示

ア 自己の体力
イ 技術の程度
ウ 犬の種類・性癖
※東京地裁昭和33年12月27日

4 相当の注意|内容|犬の散歩・吠え関係

犬の散歩では『噛みつく』などの直接的攻撃以外のアクシデントもあります。
『吠える』ということに関して注意する義務も判例で示されています。

<相当の注意|内容|犬の散歩・吠え関係>

犬の飼主は,一定レベルの調教をする義務がある
レベル=公道でみだりに人に吠えないようにする
※横浜地裁平成13年1月23日

5 相当の注意|事例|係留×自招行為

『相当の注意』の判断では『被害者の態度』も影響を与えます。

<相当の注意|事例|係留×自招行為>

あ 前提事情

犬が係留されていた
被害者が自分から動物に接近した
→損害が生じた

い 判断の傾向

『相当の注意』を満たす
→免責が認められる
※大阪地裁昭和45年5月13日
※大阪地裁昭和46年9月13日

6 相当の注意|事例|係留なし×自招行為

犬の『係留なし』でも,被害者の態度が考慮されます。
結果的に『相当の注意』が認められ,責任が否定された判例を紹介します。

<相当の注意|事例|係留なし×自招行為>

あ 事例

ドッグラン内・フリー広場中央付近
犬と人間が衝突した
人間が負傷した

い 裁判所の判断|状況

人間が立ち入ることは想定されていない
→危険な行為・異常な事態である

う 裁判所の判断|結論

異常事態を予見することは必要ではない
→飼犬の動向を監視・制御は必要ではなかった
=『相当の注意』を認めた
※東京地裁平成19年3月30日