【家事調停における調停をしない措置(家事事件手続法271条)(解釈整理ノート)】
1 家事調停における調停をしない措置(家事事件手続法271条)(解釈整理ノート)
家事調停の終了の方式の1つに、調停をしない措置という変わったものがあります。調停不成立(不調)とは別のものです。本記事では、調停をしない措置のルールや解釈を整理しました。
2 家事事件手続法271条の条文
家事事件手続法271条の条文
第二百七十一条 調停委員会は、事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、家事調停事件を終了させることができる。
※家事事件手続法271条
3 調停をしない措置の性質→裁判ではない・不服申立不可
調停をしない措置の性質→裁判ではない・不服申立不可
この措置は調停手続上の措置であり、裁判とは異なるため不服申立てはできない
4 調停をしない措置をとることができる状況
(1)調停をしない措置の条文上の要件と典型例
調停をしない措置の条文上の要件と典型例
あ 事件の性質上の適正欠如
事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき
例えば、婚姻中の男性が妻以外の女性との同居を求めるような調停の申立てなど、公序良俗に反する内容となっている場合がこれに該当する
い 不当目的申立
当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるとき
例えば、家事調停の申立ての目的が専ら義務の回避や訴訟・審判手続の引き延ばしに利用しようとしているような場合がこれに該当する
(2)不熱心な手続追行→調停をしない措置可能
不熱心な手続追行→調停をしない措置可能
家事調停の手続では申立ての取下げの擬制の制度を設けていないが、それは本条の「調停をしない」措置制度があるためである
(3)遺産分割調停における評価不能→調停をしない措置(概要)
遺産分割調停で、遺産の評価が必要であるにもかかわらず、相続人全員による評価額の合意ができず、かつ、鑑定の申立もないケースで、調停をしない措置をとる(とらざるをえない)ことがあります。
詳しくはこちら|遺産分割調停の段階的進行モデル(詳細整理ノート)
5 別表第2事件の審判移行ルール→適用なし
別表第2事件の審判移行ルール→適用なし
あ 審判移行ルール→適用なし
家事法272条4項は「1項の規定により別表二に掲げる事項についての調停事件が終了した場合」として、家事審判手続に移行するのは調停不成立の場合に限っており、「調停をしない」措置を採った場合は審判手続へ移行しないと解される
その理由は以下の通りである
(ア)「調停をしない」措置を採った場合、適切な審判をすることができるとは考えられない(イ)「調停をしない」措置を採られても、申立人は別途審判の申立てをすることは妨げられない
い 結論→係属消滅
調停機関が「調停をしない」措置を採った場合には、家事調停事件は終了し、当然に係属がなくなる
6 調停をしない措置の当事者等への通知
調停をしない措置の当事者等への通知
7 参考情報
参考情報
本記事では、家事調停における調停をしない措置について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に家庭裁判所の調停や審判に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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