【事業信託|典型例|事業部門切り離し→担保・倒産隔離・事業再生】
1 事業信託|基本的構造
2 事業信託|制度の組み合わせ|特定の債務の追加・排除の設定が可能
3 事業信託の活用|典型例|事業部門の切り離し→担保・倒産隔離など
4 事業再生×事業信託|事業の承継
5 事業再生×事業信託|債権者への配当
1 事業信託|基本的構造
信託法の改正により,現在では『事業信託』が使いやすいものとなっています。
事業信託の基本的な構造・方法をまとめます。
<事業信託|基本的構造>
事業・包括的な経営権
→『信託財産』にする方式
『事業譲渡』における『事業』と同じ
※根田正樹ほか『信託の法務・税務・会計』学陽書房p270
2 事業信託|制度の組み合わせ|特定の債務の追加・排除の設定が可能
事業信託を実施する場合,法律上の制度を組み合わせるのが通常です。
バラエティをまとめておきます。
<事業信託|制度の組み合わせ|例>
あ 信託財産責任負担債務
受託者が債務引受をする
法改正前はできなかった
※信託法26条参照
い 限定責任信託
メイン事業(本体の法人格)へのリスク波及を避ける
※信託法216条
う 受益証券発行信託
種類株式と同様の効果を実現できる
※信託法185条,194条など
3 事業信託の活用|典型例|事業部門の切り離し→担保・倒産隔離など
事業信託を活用すると,従来の事業譲渡よりも有用な効果を生み出せます。
典型的な活用方法をまとめます。
<事業信託の活用|典型例>
あ 事業部門を担保に資金調達をする
例;高い収益が見込める既存の事業部門
い 倒産隔離を実現する
ア ハイリスクの新規事業イ 債権回収業者(サービサー)の回収金
う クレジット債権などによる資金調達
例;クレジット債権を含む事業部門を自己信託にする
え 個別財産の組み合わせ→事業ポートフォリオの流動化
例;製造+販売事業+知的財産権を信託で一体化する
お 従来型の事業譲渡にいろいろな条件を付加する
例;収益分配方法,事業の『返還』時期・条件
か 事業再生の中で用いる
具体的なスキームは後述する
4 事業再生×事業信託|事業の承継
事業再生の中で事業信託を活用する方法について説明します。
まずは,前半部分として『事業を信託する』という方法を具体的にまとめます。
<事業再生×事業信託|事業の承継>
あ 前提事情
A社=債務超過に陥った会社
B社=A社の事業の承継を望む会社
A社・B社で事業信託契約を締結する
い 信託契約|内容
ア 事業をA社からB社に『信託譲渡』するイ A社は『受益者』となる=『信託受益権』を持つイ 事業から得られる収益の分配方法ウ 信託期間満了時の処理
・事業を第三者に譲渡する
・事業をB社が『買い取る=事業譲渡』
5 事業再生×事業信託|債権者への配当
事業再生では『配当』をすることが最終目的です。
事業信託の構築後の『配当』の段階では主に2つの方法があります。
これをまとめます。
<事業再生×事業信託|債権者への配当>
あ 信託受益権の『売却』方式
A社は『信託受益権』を第三者に売却する
売却代金を債権者に配当する
い 信託受益権の『配当』方式
『信託受益権』を債権者に配当する
債権者は次の利益を得られる
ア 定期的な収益の分配金イ 信託期間満了時の『事業譲渡』代金
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