【中小企業経営承継円滑化法・支援措置|債務保証の保険・公庫の融資】

1 経営者の死亡・退任→事業承継|典型的場面
2 事業承継×資金ニーズ発生
3 中小企業経営承継円滑化法・支援措置|概要
4 中小企業者|定義
5 事業承継・支援措置|手続
6 支援措置|債務保証|中小企業信用保険法の特例
7 支援措置|融資|株式会社日本政策金融公庫法の特例
8 事業承継・支援措置|手続の窓口・金融機関

1 経営者の死亡・退任→事業承継|典型的場面

経営者が死亡や退任で引退すると『事業承継』が必要な場面となります。
『事業承継』では,まとまった資金を調達する必要が生じることが多いです。
本記事では,このような場合の公的な『支援措置』を説明します。
最初に,典型的な『経営者引退→事業承継』という場面をまとめます。

<経営者の死亡・退任→事業承継|典型的場面>

先代経営者の死亡や退任
→事業承継をする状況となった

2 事業承継×資金ニーズ発生

『先代の都合や死亡』が原因となった事業承継では資金調達に苦労する傾向があります。
後継者が準備した上でタイミングを図った,という状況にないからです。
具体的な『資金ニーズ』をまとめます。

<事業承継×資金ニーズ発生>

あ 株式・資産の買い取り資金

相続・生前贈与により株式・事業用資産が分散している
→後継者が株式・事業用資産を買い取る

い 納税資金

後継者が株式・事業用資産を承継した
→相続税・贈与税の納税資金が必要となった

う 資金繰り悪化

経営者が交代した→信用状態が低下した
→次のような状況が生じた
→資金繰りが悪化した
ア 金融機関からの借り入れ条件が変更されたイ 取引先への支払い条件が厳しくなった 例;支払サイトの短縮

え 親族外による承継

親族内での後継者確保が困難である
→M&Aにより親族外の者が事業を承継することになった
→後継者が先代経営者から株式・事業用資産を買い取る

3 中小企業経営承継円滑化法・支援措置|概要

一定の事業承継の状況では公的な支援措置が受けられます。
この制度の概要をまとめます。

<中小企業経営承継円滑化法・支援措置|概要>

あ 前提事情

先代経営者の死亡や退任
→事業活動の継続について支障が生じている

い 対象者

『中小企業者』
=一定規模の個人事業主・会社(後記)

う 支援措置|概要

ア 実質的な債務保証イ 公的融資 ※中小企業経営承継円滑化法2条,12条
※施行規則6条1項

2種類の支援措置の内容については後述します。

4 中小企業者|定義

支援措置の対象となる『中小企業者』の定義を整理します。

<中小企業者|定義>

“業種” 資本金 従業員数
製造業・建設業・運輸業 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
小売業 5000万円以下 50人以下

※『従業員数』→常時使用する者が対象である
※『資本金・従業員数』→いずれかが該当すれば『中小企業者』に該当する
※中小企業経営承継円滑化法2条

5 事業承継・支援措置|手続

『支援措置』の手続をまとめます。

<事業承継・支援措置|手続>

あ 経済産業大臣の認定

認定の書面審理が行われる
約2か月を要する

い 金融支援措置

金融支援措置を講じる
最終的に金融機関からの融資の手続を行う

6 支援措置|債務保証|中小企業信用保険法の特例

支援措置の内容は2つあります。
まずはその1つは,実質的な『債務保証』です。

<支援措置|債務保証|中小企業信用保険法の特例>

あ 対象者

中小企業者(会社・個人事業者)

い 対象とする資金

・株式や事業用資産の買い取り資金
・信用状態が低下している中小企業者の運転資金

う 支援措置の内容

中小企業信用保険法上の次の保険を別枠化する

え 別枠化される保険
保険 限度額
普通保険 2億円
無担保保険 8000万円
特別小口保険 1250万円
お 別枠化による現実的効果

信用保証協会の『債務保証』が実質的に別枠化される
→金融機関からの資金調達が行いやすくなる
※中小企業経営承継円滑化法13条

7 支援措置|融資|株式会社日本政策金融公庫法の特例

支援措置のうち『融資』の制度をまとめます。

<支援措置|株式会社日本政策金融公庫法の特例>

あ 対象者

中小企業者(会社)の代表者個人

い 対象とする資金

ア 株式・事業用資産の買い取り資金イ 相続における遺留分減殺請求への対応資金ウ 相続税・贈与税の納税資金 課税対象=相続or贈与により取得した株式・事業用資産

う 支援措置

代表者個人が融資を受けることができる

え 融資内容の優遇

通常の金利=基準金利は適用されない
特別に低い金利(特別利率)が適用される
※中小企業経営承継円滑化法14条

8 事業承継・支援措置|手続の窓口・金融機関

事業承継の支援措置の手続を実際に行う窓口となる機関についてまとめます。

<事業承継・支援措置|手続の窓口・金融機関>

あ 信用保証

ア 対象者 会社・個人事業主
イ 機関 信用保証協会

い 融資

ア 対象者 代表者個人
イ 機関 日本政策金融公庫の中小企業事業各支店
国民生活事業各支店

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