貸金業者の取引履歴|貸金業法19条の2の閲覧・謄写請求と費用の納付

1 貸金業者の取引履歴|貸金業法19条の2の閲覧・謄写請求と費用の納付

債務整理や過払金の返還請求に入る前に、貸金業者へ取引履歴の開示を求めることがあります。求める側から見ると、誰が求めることができるのか、何が返ってくるのか、費用がかかるのかが順に問題になります。

本記事では、貸金業者の取引履歴の開示を求めたときに実務で何が起きるかを、請求の根拠となる条文、返ってくるものの中身、費用の納付の順に説明します。

貸金業者が取引履歴の開示に費用を請求できるのかは、別の記事で説明しています。

貸金業者の取引履歴の開示義務|貸金業法19条の2と最判平成17年7月19日

2 貸金業法19条の2の閲覧・謄写請求→費用は1,000〜1,650円

先に全体をまとめます。条文は貸金業法と同法施行規則、金額は各社の公表によるものです。

請求から費用の納付まで(2026年9月30日現在)

あ 請求権者と行為(誰が何を請求できるか)

債務者等又は債務者等であった者その他内閣府令で定める者が、帳簿のうち利害関係がある部分の閲覧又は謄写を請求できる。貸金業者は、権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかなときを除き、請求を拒めない。

い 返るもの(何が開示されるか)

返るのは帳簿の閲覧又は謄写。引直計算を要しないケースが多く、要する場合でも当初から引直残高で開示する業者も少なくない。

う 費用(いくらで、どう納めるか)

確認できた公表では1人1回1,000円〜1,650円(税込)。帳簿1枚22円という立て方もある。納付の方法として定額小為替が挙げられている。取引や契約が見つからない場合も徴収するとの公表がある。

え 条文にないこと(手数料の定めはあるか)

貸金業法19条の2と同法施行規則17条の3は、閲覧・謄写の請求と応じる義務を定めるだけで、手数料について定めを置いていない。費用を請求できるかという規範の当否は本記事の対象外。

3 請求権者=債務者等その他内閣府令で定める者(貸金業法19条の2)

貸金業者に取引履歴の開示を求める根拠は、貸金業法が定める帳簿の閲覧・謄写の請求です。債務者等又は債務者等であった者その他内閣府令で定める者は、帳簿のうち利害関係がある部分について、閲覧または謄写を請求することができます(同法19条の2)。貸金業者の側は、営業時間内に、請求に応じて閲覧または謄写をさせることとされています(同法施行規則17条の3)。

19条の2は、請求を拒める場面を狭く書いています。請求が、請求した者の権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかであるときを除き、拒むことができないとされています。

ここでいう取引履歴は、貸金業者が備える帳簿の記載です。預貯金の取引履歴とは別の制度で、個人情報保護法に基づく開示請求も、これとは別の経路になります。

それぞれの条文の意味と、そもそも費用を請求できるのかという問題は、別の記事で説明しています。

貸金業者の取引履歴の開示義務|貸金業法19条の2と最判平成17年7月19日

条文

閲覧・謄写の請求権と応じる義務(貸金業法19条の2・施行規則17条の3)

債務者等又は債務者等であつた者その他内閣府令で定める者は、貸金業者に対し、内閣府令で定めるところにより、前条の帳簿(利害関係がある部分に限る。)の閲覧又は謄写を請求することができる。この場合において、貸金業者は、当該請求が当該請求を行つた者の権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかであるときを除き、当該請求を拒むことができない。

※貸金業法19条の2

貸金業者は、法第十九条の規定に基づき、同条の帳簿をその営業所等ごとに備え置き、法第十九条の二に規定するときを除くほか、その営業時間内に、請求者の請求に応じて閲覧又は謄写をさせなければならない。

※貸金業法施行規則17条の3

4 返るのは帳簿の記載・当初から引直残高で開示する業者の存在

求めて返ってくるものの中身については、公的な資料に記述があります。日本司法書士会連合会の「債務整理事件の処理に関する指針」の解説(令和7年4月)は、利息制限法の制限利率を超える利率で貸付けを行う事業者は現在ほとんど存在せず、引き直し計算の必要があるケースは多くないとしたうえで、古い借入で引き直し計算を要する場合でも、貸金業者の大多数は約定残高を主張せず、当初から引き直し後の残高で取引履歴を開示する業者も少なくない、と述べています。

この指針は司法書士の債務整理事件の処理についてのもので、貸金業者を拘束するものではありません。個々の業者が実際にどう開示するかは、その業者の運用によります。

引用:文献・公開情報

引直計算の要否と開示される残高についての記述

しかし、現在、利息制限法の規定を超える利率で貸付けを行う事業者はほとんど存在せず、引直計算の必要性のないケースが多い。
古くからの借入で引直計算を要するケースにおいても、貸金業者の大多数は約定残高を主張することはなく、また、当初から引直残高により取引履歴を開示する貸金業者も少なくない。

※日本司法書士会連合会編『債務整理事件の処理に関する指針の解説』日本司法書士会連合会2025-04-24p9

5 費用の納付→定額小為替・公表された額は1,000〜1,650円

請求に応じる義務の側とは別に、実務では費用が請求されています。確認できた公表では、1人1回あたり1,000円から1,650円(税込)という立て方が多く、帳簿1枚あたりで積む立て方もあります。

事業者 公表されている手数料
りそなカード 貸金に係る取引履歴の開示請求について、1人1回あたり1,650円(税込)。代理人からの請求を含み、同社と取引が無い方も対象
名古屋エム・シーカード 貸金債権を含む場合は貸付帳簿1枚22円(税込)。貸金以外や契約の有無の調査は1顧客1回1,320円(税込)。代理人からの請求を含み、取引がない場合も対象
アプラス 開示手数料1,000円(税込)。該当が無かった場合も請求の対象
オリコ 開示手数料1,000円(税込)。納付の方法は定額小為替

納付の方法まで書いている公表もあります。オリコは、「利用目的・開示制度等の公表について」で、開示手数料を1,000円(税込)とし、納付の方法として定額小為替を挙げています。

定額小為替は、個人情報保護法に基づく開示請求についての解説書でも、手数料の徴収に便利な方法として挙げられています。貸金業者の取引履歴について述べたものではありませんが、同じ方法が貸金業者の公表にも出てきます。

引用:文献・公開情報

開示手数料の徴収の方法についての記述

なお、手数料の徴収には、定額小為替を利用するのが便利である(開示手数料の具体的な金額の定め方については、本章1(1)Q74 349頁を参照)。

※弁護士 菅原貴与志著『詳解 個人情報保護法と企業法務〔第8版〕』民事法研究会2022年 4月p363

6 公表に共通する形=代理人も対象・取引がなくても徴収・個人情報保護法は別案内

4社の公表を並べると、繰り返し現れる形がいくつかあります。りそなカードと名古屋エム・シーカードは、代理人からの請求も手数料の対象に含めることを明記しています。アプラス、りそなカード、名古屋エム・シーカードは、取引や契約が見つからなかった場合も徴収するとしています。りそなカードは、個人情報保護法に基づく開示請求を別途案内しているとしています。

代理人による請求の本人確認も、公表に出てきます。アプラスは、任意代理人による請求について、委任状に本人の実印を押したものと印鑑登録証明書を求める記載を置き、そこから弁護士・認定司法書士を除いています。オリコも、任意代理人については本人が署名し実印を押した委任状と印鑑登録証明書を求めています。手数料について、この区別は書かれていません。

7 確認の範囲=2026年9月30日現在の公表とWayback Machine

以上の記述は、各社が公表しているページと、Wayback Machine に残る過去のスナップショットで確かめた範囲のものです(2026年9月30日現在)。

手数料を公表している貸金業者がこの4社だけだ、ということではありません。公表を確かめられたのがこの4社だというだけで、公表していない事業者や、当方が見ていない公表がある可能性は残ります。金額や条件も各社の判断で変わります。実際に請求するときは、その時点の公表を確かめることになります。

8 おわりに

取引履歴の開示に手数料がかかることは、債務整理や過払金の返還請求の入口にそのまま効きます。借入先が複数あれば、社数の分だけ手数料が積み上がります。取引が見つからなかった場合も徴収するという公表があるので、調べてみて何も出てこなかったときにも費用は残ります。

そもそも貸金業者が取引履歴の開示に費用を請求できるのかは、別の記事で説明しています。

貸金業者の取引履歴の開示義務|貸金業法19条の2と最判平成17年7月19日

完済後の過払金返還請求が困難になる要因については、別の記事で説明しています。

過払金;完済後→過払金返還請求;困難性の要因

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。

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