1 破産手続では『全部の財産が取られる』わけではない
2 自由財産の範囲|裁判所によって基準が違う
3 破産により,原則として住宅は処分されるが例外もある
4 破産手続で住宅を守れた実例
5 破産の場合でも自動車が手元に残ることもある
6 破産しても家財道具・家電製品は原則として処分されない
7 破産において『退職金相当額の8分の1』が『資産』となる|退職する必要はない
8 破産手続と『名義だけ貸し借りしていた』資産(預貯金・保険)

1 破産手続では『全部の財産が取られる』わけではない

破産手続の基本的な仕組みは,財産を売却して現金化し,債権者に配当する,というものです。
しかし,全部の財産が処分されるわけではありません。
家具・家電のような生活必需品は取られません。
このような『処分』の対象にならない一定の資産を『自由財産』と呼びます。
結局,破産手続でも,本人の手元に残る財産は少なくありません。

2 自由財産の範囲|裁判所によって基準が違う

自由財産の範囲の考え方は,大きく分けると2つの考え方があります。
裁判所によって扱いが異なります。

<自由財産の範囲|裁判所による扱いの違い>

あ 東京地裁タイプ

次のような分類ごとに上限が決まっている
この範囲内であれば,原則として処分対象外となる
それ以上については原則として処分する
《自由財産の範囲》
ア 現金99万円
イ 預貯金20万円
ウ 自動車20万円
エ 生命保険20万円

い 大阪地裁タイプ

『総合計99万円相当分』以内を原則的に自由財産とする

3 破産により,原則として住宅は処分されるが例外もある

住宅は小さな財産ではないので,原則的に売却され,代金を債権者に配当することになります。
ただし,例外的に破産手続の中で処分しない場合も少なくありません。
『財団からの放棄』という手続です。

<住宅について『財団からの放棄』をする典型例|オーバーローン>

・住宅ローンなどの(根)抵当権が付いている
・その住宅の価値よりも,住宅ローンなどの残債務額の方が大きい

『財団からの放棄』,となった場合でも,住宅を失う可能性はまだ残っています。
住宅ローンの債権者(銀行、公庫、保証会社など)が単独で競売を申し立ててくることが考えられるのです。
つまり,破産手続きの中で売却は避けられたとしても,住宅ローン債権者に競売をかけられる可能性が高いということになります。
逆に言えば『破産手続きの中で売却されない+住宅ローン債権者が競売をかけない』という両方が成立すると,住宅が売却されないままになります。
これはレアケースと言えましょう。

4 破産手続で住宅を守れた実例

(1)住宅を守るためには任意整理・民事再生が良いが使えない時も多い

通常,住宅を守りながら債務整理をする方法としては,住宅ローン付き民事再生か,(住宅ローン以外についての)任意整理が標準的です。
しかし,民事再生は安定した収入がないと使えません。
任意整理は大幅な減額ができないことが多いので,収入に余裕がないと使えません。
収入がほとんどなかったため,民事再生も任意整理も到底取り得ない状況という事例もあります。
実例として,一縷の望みをかけて破産申立を行ったケースがあります。

(2)破産手続|管財人が『財産からの放棄』を行った

破産手続では,原則として不動産は売却されることになっています。
ところで,当該不動産の所在地が地方の小さな都市で,多少不便な場所にありました。
そうすると,仮に売却しても非常に低額となってしまうか,そもそも買い手がつかない可能性も十分にある,と考えられました。
そこで,破産管財人は売却しても実益がないと判断し財団からの放棄をしました。
破産手続上では売却しません,という意味です。

(3)破産手続後|金融機関が『支払期間の再設定』に応じた

次に住宅ローンの融資を行った銀行が問題となります。
通常であれば,銀行としては,返済金が滞納になっていたので,不動産を競売にかけることができる状態です。
しかし,最終的に銀行は競売を行いませんでした。
理由は,仮に競売にかけても,売却価格は非常に安くなるか,そもそも買い手が付かない,と予想されたからです。
結果的に,破産手続きが始まっているのに,管財人は売却せず,また銀行も売却(競売)しない,という結論になりました。
そして,破産手続が正式に終了した後に,銀行との間で,改めて住宅ローンの残額の支払方法について協議しました。
支払方法の再設定(リスケジュール)です。
分割返済の方法を書面にまとめて,調印しました。
その後再び住宅ローンを支払う生活になりました。

(4)最終的には『住宅ローンだけなので負担が非常に軽い』ことになった

この時は破産手続が終わっていますので,毎月返済するべきものは,この住宅ローン以外にはありません。
ご依頼者としても,支払いは以前のように困難ではなくなっていました。

5 破産の場合でも自動車が手元に残ることもある

(1)自動車ローンが残っている場合→ローン会社が引き上げる

自動車ローンが残っている場合,滞納となった時点で,自動車ローン債権者が所有権留保の実行をすることが通常です。
つまり,債権者が自動車を引き上げることになります。
要は,最初から完済するまでは自動車ローン債権者の所有物になっているという設定になっているという意味です。
参考コンテンツ|所有権留保|設定方法・実行方法・利用例

(2)自動車ローンなし(完済)+評価額20万円未満→残される

次に,自動車ローンを完済している場合は,原則として,破産手続中で自動車が売却されることになります。
しかし,評価額が20万円未満であれば自由財産として売却の対象外となります。
つまり,安いので返済のタシにはならないという趣旨です。

(3)自動車ローンなし+評価額20万円以上→どちらもある

評価額が20万円以上だとしたら原則として売却されます。
しかし,他の資産状況や,自動車の必要性が非常に高い,などの個別的事情によって例外もあります。
最終的に売却されない(手元に残る)と言うこともあり得ます。
この『例外扱い』は,正確には『自由財産拡張』という手続です。

6 破産しても家財道具・家電製品は原則として処分されない

破産手続においては,財産を換価して,債権者に配当するのが基本的な仕組みです。
しかし,基本的な『家財道具・家電製品』は『自由財産』とされています。
つまり,処分,換価の対象外,という意味です。
家に誰かが来て,取り上げていく,ということはないのです。
なお,例外的に,特殊な,高額で売却できるものがある,という場合は別です。

7 破産において『退職金相当額の8分の1』が『資産』となる|退職する必要はない

破産手続においては,『仮に今退職した場合の退職金の相当額』を申告する必要があります。
もちろん,この金額がいくらであろうと,預貯金と違って,自由に現金化できるわけではありません。
しかし,仮に退職したら現金化するという意味で資産の性格があります。
最終的には,想定される退職金額の8分の1の金額が『資産』として扱われます。
もちろん,『退職して現金化する』という必要はありません。
代わりに8分の1に相当する金額について,調達してくる必要がある,ということになります。
当然,どのように頑張っても退職金の8分の1相当額を調達できない,ということもあります。
この場合は,救済措置として調達必要額がディスカウントされることもあります。
このあたりの処理はケースバイケースです。
他の資産状況,それまでの経緯などにより判断されることになります。

8 破産手続と『名義だけ貸し借りしていた』資産(預貯金・保険)

一般的に,形式的な名義と,実質的な出費をした者が違う,ということはあります。
その典型例が,預貯金でしょう。

<預貯金の『名義のずれ』が問題となる例>

親Aが,自分の資金を『子供Bの名義』で預金しておく
子供Bが破産した

このような場合は,実際にAが負担した預金です。
実質的に『管理・保管・把握』されていた態様によって扱いが違ってきます。
管理・保管・把握していたのがAであれば,この預金はAの財産である、と解釈される可能性があります。
その場合は,この預金は破産手続からは排除されます。
しかし,一部でも,実質的にB本人が管理していたようなケースでは,Bの財産である,と解釈される可能性が高いです。
その場合,破産手続において,換価されたり,債権者に配当として分配されてしまいます。