1 破産手続の流れ
2 破産管財人の役割|換価・分配・免責不許可事由の調査
3 破産管財人との打ち合わせ
4 債権者集会|よほど大規模ではない限りスムーズに進む
5 破産手続のうち本人が参加する手続|債務者審尋・免責審尋・債権者集会
6 破産手続中の『転居』→許可を取れば問題ない

1 破産手続の流れ

会社の倒産に関する手続と並行して代表者やその他の保証人などが『個人の自己破産』をすることがあります。
『個人の自己破産』についての手続の流れの概要を整理します。

<個人の自己破産手続|流れの概要>

あ 申立書提出

プラス・マイナス財産(資産と債務)を漏れなくピックアップして書面(申立書)にして裁判所に提出する

い 債務者審尋

う 破産手続開始決定

裁判所は,申立書を審査して,支払不能になっているかどうかを判断する
支払不能と判断したら『破産手続始決定』を出す

う 手続の振り分け|同時廃止or管財事件

財産の状況などによって次の2つのいずれかが選択される(後述)
ア 同時廃止
イ 管財事件

え 免責審尋

お 債権者集会

か 免責決定

以上は破産法のルールをまとめたものです。
実際には,裁判所の運用として,一部の手続を『まとめる』とか『省略する』ということもあります。
大幅に簡略化されている運用が多いです。

『同時廃止』『管財事件』のいずれかが選択されます。
それによって,予納金20万円が必要となるかどうか,財産調査の方法などが違ってきます。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|破産手続|同時廃止と少額管財・特定管財の違い・判断基準

2 破産管財人の役割|換価・分配・免責不許可事由の調査

破産管財人が選任された場合,管財人が行う業務・役割を整理します。

<破産管財人の役割|概要>

あ 財産の調査
い 換価・配当
う 免責不許可事由の調査

(1)財産の調査

破産管財人はまずプラス・マイナスの財産を調査します。
特にプラス財産は『配当』の元となるので漏れがないように把握します。

(2)換価・配当

破産手続において,一定の財産がある場合,これを現金化して配当します。
例えば不動産なら売却,保険なら解約して現金化します。
その上で債権者等に配当するのです。

(3)免責不許可事由の調査

また,一定の『違反』事項(免責不許可事由)の疑いある場合は,具体的な内容を調査します。
そして,最終的に免責という恩恵を与えても良いかどうかを判断します。
その判断結果を裁判所に意見として提出します。
実際に免責を許可するかどうかは最終的に裁判所が判断します。

3 破産管財人との打ち合わせ

管財人の業務の大きな柱の1つとして財産の調査があります。
具体的な調査の内容として『直接申立人と面会・聴取する』というものがあります。
この面会時に聴取される内容は、申立時に提出した書類(申立書等)の補足説明と,違反行為があった場合はその具体的な内容です。
通常は申立前にしっかりと代理人弁護士が事情を把握し,より分かりやすく申立書にまとめて提出してあります。
ですから,管財人との打ち合わせ内容はシンプル・スムーズになります。
換価,処分する財産があれば,これに関する事情も聴取されることになります。
例えば,自動車・不動産などについて,親族・友人などのうちで,買取候補者がいるかどうか,などです。
いずれにしても,正直に話すだけなので,変に構えたりする必要はありません。

4 債権者集会|よほど大規模ではない限りスムーズに進む

大きな会社の破産では,債権者への影響が大きく,多くの債権者が債権者集会に参加し,混乱することもあります。
もちろん,代理人弁護士が同席しますので『無秩序』となることはないです。
ドラマなどから,そのようなイメージをお持ちの方がいらっしゃいます。
なお,事業者ではない個人の破産においては状況は大きく異なります。
金融機関の債権者は債権者集会への出席すらしない,ということが多いです。

5 破産手続のうち本人が参加する手続|債務者審尋・免責審尋・債権者集会

破産手続において,申立人(債務者)本人が出席する手続を以下説明します。
なお,具体的な実施方法は,裁判所によって大きく異なることがあります。
また,いずれも,代理人弁護士も同席します。

<破産手続における『債務者本人出席』の手続|概要>

あ 債務者審尋
い 免責審尋
う 債権者集会

(1)債務者審尋

破産申立の最初の段階で,裁判官が直接本人から事情を聞くものです。
支払不能かどうかを確認します。
通常は,申立書でプラス・マイナス財産を記載しているので,支払不能であることは分かるはずです。
これに加えて,ご本人が状況をしっかりと把握しているかどうかを確認する趣旨で実施されることもあります。
次の免責審尋を兼ねることもあります。

(2)免責審尋

破産手続において重要なのは『免責』です。
債務を免除してもらうことです。
破産法上の違反事項があると免責が許可されないことになっています。
違反事項(免責不許可事由)にはいろいろありますが,代表的な例を挙げます。

<免責不許可事由の代表的な例>

あ ギャンブル
い 風俗

キャバクラなど

う 浪費
え 虚偽説明

破産手続において財産を隠した
ウソの報告をした

免責審尋でこれらの違反事項の有無を質問されるのか,というとそうではないことが多いです。
実際には,申立の最初の段階で,このような違反事項の有無は書面で提出されているからです。
むしろ,裁判所では,その後,スムーズにリスタートができるかどうかを判断したいのです。
次のような点について着目します。

<債務者本人が質問される事項|着目点>

あ 破産に至った原因を把握しているか
い 現在の収支の状況などをしっかりと理解しているか
う 以上の状況を今後の生活に活かせるようになっているかどうか

免責審尋の場では,裁判官から,この後の生活での注意点などを説明されることが多いです。
裁判所によっては,家計簿を記録することを推奨するということもあります。

(3)債権者集会

破産手続の内容について,管財人から裁判所・債権者に報告し,債権者からの意見を聴取する,という趣旨のイベントです。
個人の消費者破産(つまり事業主以外)においては,債権者は一般の金融機関がほとんどです。
その場合,特殊な事情がない限り,債権者は債権者集会には出席しないのが実情です。
つまり,裁判官・管財人・申立人・申立代理人の4名だけ,ということが大多数です。
仮に債権者から意見なり質問があったとしても,管財人が答えることが多いです。
申立人がコメントを求められることがあったとしても,申立代理人が答えれば済むことがほとんどです。
申立人は特別な準備をして臨む,という必要はありません。
免責審尋と兼ねるケースもあります。

6 破産手続中の『転居』→許可を取れば問題ない

破産手続中は,『転居』について裁判所の許可が必要とされています。
しかし,実際には許可されない,ということは通常ありません。
そもそも,転居の制限の趣旨は,連絡が付かなくなる,とか,財産を隠してしまう,ということの防止です。
特に,代理人として弁護士が付いている場合は許可されないことはほとんどありません。
代理人が財産内容を把握し,また,代理人を通して連絡が取り合えるので,弊害がないからです。