1 従業員vs雇用主,という対立構造はおかしい
2 賃金,雇用の数,雇用主利益,消費者利益が自由市場メカニズムで調整される
3 自由市場メカニズムが機能する前提条件
4 思考実験1;解雇規制,最低賃金がない世界
5 思考実験2;最低価格を法律で規制,は供給者にトクなのか

1 従業員vs雇用主,という対立構造はおかしい

次の仮説が誤っていることは別に説明しました。
これをさらに具体例で説明します。

<誤っている仮説>

賃金を下げれば雇用主の利益が上がる
最低賃金の規制がないと賃金はどんどん下げられていく

<→コラム;『賃金下げるほど雇用主の利益はアップ』仮説はハズレ

賃金雇用主の利益だけが連動するわけではありません。

<連動する数量>

・賃金含むコスト
・従業員数
・販売価格
・販売数

これらの数量によって,雇用主の利益が決まります。
数量をうまく調整しないと,雇用主は利益最大化できないのです。
『兄弟でバナナを分け合う』という単純なものとは違い,関係者が多いのです。
『雇用主vs従業員』という対立構造の時点でおかしいのです。

<雇用主と従業員の関係性>

理屈や法律で対立→☓
設定を国家が強制→☓
全員の利益合計が最大な設定を見つける→◯

自由市場でうまく実現されるようになっているのです。

<2つの『自由市場』>

・商品,サービスの市場
・労働市場

2 賃金,雇用の数,雇用主利益,消費者利益が自由市場メカニズムで調整される

最適な利益分配,が実現されるメカニズムをまとめます。
ここでは,上記発想を元にして,『賃金を下げる』からスタートします。

<自由市場による利益分配最適化メカニズムby調整神>

賃金を下げる
↓※法則1
販売数1個あたりの雇用主利益アップ
↓※法則2
同業者が参入する
↓※法則3
業界全体の販売数アップ,業界全体の従業員数アップ,当該雇用主の販売数(どちらもある)
↓※法則4
賃金アップ,販売価格ダウン
↓※法則5
販売数1個あたりの雇用主利益ダウン

以下繰り返し

次に,個々の法則について説明します。

<法則1>

賃金ダウン→販売数1個あたりの雇用主利益アップ

これについてはあまり説明はいらないですね。
利益=販売価格−賃金含めたコスト

<法則2>

利益大きい→当該事業に算入者が現れる

利益を追及する,という企業や個人の意欲です。
具体例で示します。

ボロ儲けだから参入意欲爆発の例>

A県でチューリップの球根が1個100円で売っている
B県でチューリップの球根が1個1万円で売れている
輸送等のコストは球根1個あたり50円で済む
1個あたり9900円の利益だ!
1か月1000個売れれば990万円の利益だ!

A県で買ってB県で売りたい!
と誰でも思うことでしょう。

こんな努力不要のボロ儲けはコストその他の参入障壁を見落としているはずです。
誰もまだ行っていないとしたら。
詐欺に気をつけましょう。

<法則3>

供給者アップ

業界全体の販売数アップ,業界全体の従業員数アップ,当該雇用主の販売数(どちらもある)

供給する事業が拡大している状態です。
多くの事業者が算入すると,業界全体の供給数が増えます。
当然,従事する人員リソースも増えます。
個々の事業者(雇用主)の販売数が上がるか下がるかはバランス次第で一義的に決まりません。
次のステップの,販売価格が下がって,以前より多くの消費者が購入する=販売数アップ,とのバランスによって決まります。

<法則4−1>

業界全体の販売数アップ→販売価格ダウン

この部分は中学生の教科書に出ているものですね。
商品,サービス市場の需要供給の関係です。
商品が余る状態になったら,売り切るためには価格を下げることになります。
ここでは,商品の品質は変化なし,という前提にしています。

<法則4−2>

業界全体の従業員数アップ→賃金アップ

労働市場における,需要−供給vs賃金(単価),という関係です。
人手不足売手市場とか言われるものです。
100で募集しても応募がなければ110で募集します。
ここでは,労働環境など,別の要素は考えません。

<法則5>

販売価格ダウン→販売数1個あたりの雇用主利益ダウン

これも当然です。
式にするとこうなりますからね。
利益=販売価格−賃金含むコスト

<最後の繰り返し部分>

利益が少ない→供給事業者撤退
など,以上の個々の法則のが生じる

原因,効果が逆方向に生じます。

<結果的に行き着くところ>

雇用主,従業員,消費者の『取り分(実質的利益(効用))の合計』が最大化するところ

3 自由市場メカニズムが機能する前提条件

(1)この素晴らしい仕組みへのネーミング

あまりに素晴らしいので神様が調整しているんだと考えた人がいました。
アダム・スミスという方です。
このメカニズムを,調整神(ちょうせいかみ)と呼びたいです。

(2)調整神の労働条件

ただ,このメカニズム(調整神)がうまく働いてくれるには前提があるのです。
競争が公正独占がない流動性が高い情報の非対称性が少ないなど。

ポイントを1つに絞ると。

<自由市場メカニズムの前提条件>

ライバル供給者の存在事業に自由に参入できる
ライバル供給者には代替品の供給者も含みます。

独占禁止法,不正競争防止法,民法,刑法の一般的規定は,公正な競争を実現するための競争場所整備ルールなのです。
例えば,抜け駆けディスカウントを防ぐために供給者間で価格を下げないと約束することです。
価格カルテルとか言います。
中学生の教科書に出ていた事項です。
前記『法則4−1』を動かさなくする,というものですね。

(3)カルテルは新規参入者で破られるが抵抗も強い

もちろん,価格協定をしても,第三者,要するに活き活きしたベンチャーが算入することがあります。
悪しき価格協定善良なベンチャーに負けます。
1社だけより安く販売するのですから。
この1社は攻撃対象になるでしょう。
官僚を巻き込んだ大げさなことになるのも実例としてあります。

<タクシー業界に生じた新規参入,既得権益との対立>

・敢えて闘いを挑んだ例→ワンコインドリーム
・コスト,安定性,事業遂行スピードを考えて闘いを避けた例→UBER

4 思考実験1;解雇規制,最低賃金がない世界

以前から実験したいと思っていたので,思考実験してみます。

<事情設定>

・最低賃金がない
最高賃金の設定ではない→募集の際,自由に設定できる
・解雇規制がない
※雇用期間の合意を守らない,ではない→募集の際,自由に設定できる

ありがちな仮説をあてはめてみます。

<仮説>

雇用主は自分の利益を最大化させるため,賃金は時給1円,いやなら辞めてくれ!となる

誰も働かないですね。
雇用主にトク,となっていないですね。

<正解;従業員,消費者,雇用主の合計利益最大化>

雇用主は,次のような事情を考慮して暫定最適条件を設定する。
・賃金はどの程度であれば従業員を確保できるか(募集,入社してくれるか)
終身含めて雇用期間をどのように設定したら従業員を確保できるか
・賃金,雇用期間をどのような設定にしたら(生産効率−コスト)を最大化できるのか

この設定は,不確定要素をたくさん含みます。
リスク,リターンのバランスです。
業種,規模,事業の方針によって最適と考えられる設定は大きく違うでしょう。

5 思考実験2;最低価格を法律で規制,は供給者にトクなのか

<事情設定>

パンの最低価格を法律で設定,強制した
法律=パン1個の最低価格=1000円。それ以下で販売したら懲役!
※実際には単位質量あたりなどですが,簡略化します。

パン屋さんは大喜び!でしょうか。
需要供給,自由市場を理解していれば喜べません。
買ってくれるお客さんがいなくなる!と青ざめるのが普通です。
消費者は,パンをやめておにぎりを買う方向にシフトするでしょう。
代替品の供給者は喜ぶでしょう。

それでも1000円で仕方なくパンを買う人もいるでしょう。
パン屋が減るかもしれないですが,一定の数で均衡するでしょう。
ただ,パンの質は間違いなく落ちます。
競争がないからです。
いろいろな見解がありますが,世界全体で行った壮大な実証実験で証明されています。
こうして,消費者が得る利益,は激減するのです。
消費者が得る利益,というのは購入価格を引いた残りの部分のことです。

消費者の利益=商品の品質(効用)−費用(販売価格)

以上の思考実験で自由市場,自由競争のメカニズム(調整神)の動きを検証してみました。
なお,用語等については,経済学などの正確なもの(専門用語)ではありません。
あくまでも分かりやすく(思考)実験してみたものです。

条文

[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律]
第三条  事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。