自転車は小さく軽い乗り物なので,大きな事故にはつながらないのでしょうか。
自転車によって起こされた交通事故で,損害額が数千万円になるケースは多いです。

1 自転車の事故でも賠償額が数千万円に達することはある
2 自転車事故の特徴
3 『かもしれない運転』は自転車も同じ

1 自転車の事故でも賠償額が数千万円に達することはある

自転車は軽量で気軽な乗り物です。
しかし,事故が生じた場合の損害賠償額は大きくなることもあります。
実際に数千万円に達する賠償額が認定される裁判例もあります。

高額になるケースの大部分は,被害者が後遺症か死亡に至るというものです。
走行中の自転車が歩行者に接触し,歩行者が転倒して,その衝突の具合が悪いというものが典型です。
さらに言えば,大きな損害に至るケースでの被害者は高齢者が比較的多いです。

このように危険性は大きいのですが,軽いというイメージが強いです。
結果的に注意が不十分な運転が多い傾向があります。

2 自転車事故の特徴

自転車事故の特徴に子供が起こすものが多いということが挙げられます。
自動車の事故との違いとして言えることです。

このことから,損害賠償の面で,次のような特徴が生じます。

(1)自転車事故は低年齢層が関与することが多い

自動車のような免許制度がありません。
言うまでもなく,自転車は,小中学生・高校生の有力な移動手段です。
低年齢の子供は無茶をする傾向にあります。
自転車事故を起こす中で子供が関与することも当然多いです。

(2)子供が加害者の自転車事故では,親の責任が否定されることが多い

小中学生・高校生への責任追及では,差押対象財産がほとんどないことが多いです。
親権者への責任は理論上認められるのはかなり限定的です。
自動車の場合,自動車の保管者(運行供用者)にも責任が認められますが,自転車の場合はそのような規定(法律)はありません。
故意の犯罪(殺人等)や無免許運転(自動車・自動二輪車)であれば,親権者に監督責任が認められやすいですが,自転車の場合,乗ること自体は合法的なので,監督者責任が拡がりません。
別項目;子供による自動車事故や犯罪の場合は親の責任を拡大する解釈がなされる

(3)自転車事故では保険の適用ができないことが多い

自動車のような強制保険の制度はありません。
自転車事故を対象とする賠償保険もほとんどありません。
各種の保険のオマケとして個人賠償特約が付いている商品はありますが,あまり流行っていないようです。

(4)自転車運転に対する危険意識が低い

自動車は危険であることが当然の前提なので,一定の対策が取られています(後述)。
自転車の場合は,危険性が低いという認識の下,同様の制度はありません。

各運転者も,交通ルールが適用されている守るという認識が薄いです。
次のような非常識運転は良く見られる風景となっています。

<自転車運転者の危険の認識不足>

ア ヘッドホンで大音量でミュージックを聞きながら運転する
イ 携帯のメールを見ながら運転する
ウ スピードを出して歩道を走る
エ 手信号が流行らない

<自動車にはあるが自転車にはない制度>

ア 免許制度(点数制度などによる取消などの運用含む)
イ 取り締まり(反則金などのペナルティー)
 泥酔での自転車運転など,一定の行為に対しては罰金等が適用されます。
 <→別項目;自転車でも飲酒運転は禁止だが,罰則は酒酔いのみ
ウ 責任の拡大(運行供用者責任)
エ 強制保険制度

3 『かもしれない運転』は自転車も同じ

自動車を運転する際は,ちょっとした不注意(ミス)で大事故になるということは通常認識していると思います。
自動車教習所での『だろう運転』はダメ!『かもしれない運転』『かもしらない運転』をしましょうという教えを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。
その一方,自転車に乗る時に,かもしれない運転の標語を想定している方はあまりいないようです。

<ポイント>

高齢者が歩行すること自体は何ら責められるべきことではありません。
逆に言えば,自転車を運転する時点で,高齢者も歩いているちょっとした衝突で死亡や重大な傷害を引き起こすかもしれないと認識すべきなのです。

なお,自転車事故に関する別の項目もご参照ください。
別項目;自転車事故の過失割合;類型別