【特区民泊|立入権限|法令との抵触・条例の有効性問題】

1 特区民泊|条例による立入調査規定|問題点
2 特区民泊|調査に関する法律の規定
3 法律×条例|同一目的|一般的・有効性判断基準|概要
4 特区民泊|条例による立入調査規定|解釈論
5 法律×条例|立入権限の規定|類似例|都市公園法
6 法律×条例|立入権限の規定|類似例|動物愛護法
7 法律×条例|立入権限の規定|類似例|墓地埋葬法

1 特区民泊|条例による立入調査規定|問題点

民泊条例では『立入調査権限』が規定されているものもあります。
法律との食い違う状態です。
この食い違いについての解釈論を説明します。
まずは問題点をまとめます。

<特区民泊|条例による立入調査規定|問題点>

あ 法律×調査権限

特定認定取消要件の判断について
→報告を求めることができる
『立入調査』の権限は規定されていない(※1)
※国家戦略特区法13条8項,13条9項3号

い 条例×調査権限

条例で『立入調査』を規定している
※大田区民泊条例3条1項

う 条例×有効性|問題点

条例『い』は法律『あ』と整合しない可能性がある
→条例が無効となる可能性がある

2 特区民泊|調査に関する法律の規定

法律での『調査』についての規定をまとめます。

<特区民泊|調査に関する法律の規定(上記※1)>

あ 行政×報告徴収権限

都道府県知事→事業者
認定事業の実施状況について報告を求めることができる
※国家戦略特区法13条8項

い 行政×認定取消権限

認定事業が要件に該当しなくなった場合
→都道府県知事は特定認定の取消ができる
※国家戦略特区法13条9項3号

3 法律×条例|同一目的|一般的・有効性判断基準|概要

法律と条例の食い違いについては一般的な有効性判断基準があります。
民泊条例の有効性に関係する基準をまとめます。

<法律×条例|同一目的|一般的・有効性判断基準|概要>

あ 前提事情

法律・条例の目的は同一である
国の法令の趣旨が次のとおりである
→条例は有効である

い 有効性判断基準|法令の趣旨

地方の実情に応じた別段の規制を容認する趣旨
※地方自治法14条1項
※最高裁昭和50年9月10日;徳島市公安条例事件
詳しくはこちら|条例による規制の限界|法律との関係・抵触|徳島市公安条例事件

4 特区民泊|条例による立入調査規定|解釈論

民泊条例の有効性については一定の公的見解があります。
この解釈論をまとめます。

<特区民泊|条例による立入調査規定|解釈論>

あ 同一目的

法律・条例のいずれも同一の目的である
目的=『特定認定取消の要件』の判断のための調査

い エリアごとの規制の容認

法律に『立入権限』が規定されていない理由
=報告徴収を『最低限の手段』としている
→これを超える手段を禁止している趣旨ではない
→自治体が条例で『立入権限』を定めることは容認されている

う 相当性|手段の強度性

規制は法律よりも強度とは言えない
規制手段は必要性に比例している
=相当なものである

え 相当性|類似条例

他にも同様の関係にある条例は存在する(※2)

お 結論

『立入権限』を規定する条例は有効である
※平成26年9月19日国土交通省・西村副大臣・回答
外部サイト|首相官邸|外国人滞在施設経営事業について|p6

5 法律×条例|立入権限の規定|類似例|都市公園法

上記の解釈論で指摘されている『類似の条例』はいくつかあります。
順に紹介します。

<法律×条例|立入権限の規定|類似例|都市公園法>

あ 法律×条例

法律→立入権限を規定していない
条例→立入権限を創設している

い 具体的法律

都市公園法
公園施設への立入権限が規定されていない

う 条例

横浜市・名古屋市の条例
→立入権限の規定がある

6 法律×条例|立入権限の規定|類似例|動物愛護法

<法律×条例|立入権限の規定|類似例|動物愛護法>

あ 法律

動物愛護法
→一定の場所への立入権限が規定されている

い 条例

北海道・東京都の条例
→法律の対象場所以外の場所への立入権限を規定している

7 法律×条例|立入権限の規定|類似例|墓地埋葬法

<法律×条例|立入権限の規定|類似例|墓地埋葬法>

あ 法律

墓地埋葬法
→一定の場所への立入権限が規定されている

い 条例

横浜市・横須賀市の条例
→法律の対象場所以外の場所への立入権限を規定している

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