【シェアリング×会員制・組合方式|法規制の対象・該当性|基準=独立性】

1 シェアリングサービス|会員制・組合方式→法規制対象外となることも
2 シェアリング|法規制の対象行為×独立性|基本構造
3 シェアリング|独立性なし・典型例=『共有』だと『貸し借り』に該当しない
4 シェアリング|『共有』でも業法の規制対象になることもある|Hiltonタイムシェア
5 シェアリング|法規制の対象行為×『実質的』独立性|判断基準概要
6 契約・組織形態による『資金負担形態・財産の帰属』|まとめ
7 契約・組織形態×『形式的』独立性→『賃貸借』以外は『独立性否定』方向
8 シェアリング|法規制の対象行為×実質的独立性|判断の方向性

1 シェアリングサービス|会員制・組合方式→法規制対象外となることも

いろいろなモノの貸し借り・共同使用が拡がりつつあります。
いわゆるシェアリング・マッチングと言われるサービスが普及してきています。
このようなサービスについては法規制の対象となることもあります。
サービスの内容によっては『法規制の対象外』となることもあります。
具体的には『会員制・組合方式』などです。
本記事ではシェアリング・マッチングサービス全般の『形態による法規制の限界』を説明します。

2 シェアリング|法規制の対象行為×独立性|基本構造

一般的なシェアリングサービスの法規制の対象行為の『形態』をまとめます。

<シェアリング|法規制の対象行為×独立性|基本構造>

あ 規制の対象行為

『サービスの提供』
例;宿泊・運送・貸し渡し

い 根本的な構造

『サービス提供者』と『サービスの受領者(ユーザー)』が別個・独立している

う 当事者の独立性|基本形態

ア 事業者 =財産の所有者=サービス提供者
イ 利用者(ユーザー) =所有者ではない=使用の量に応じた費用を負担する

え 独立性のある契約形態の典型

『賃貸借』

要するに『貸し借り』は基本的な規制対象になっている,ということです。
ある意味当たり前です。
次に『似ているけど貸し借りではない』というものを説明します。

3 シェアリング|独立性なし・典型例=『共有』だと『貸し借り』に該当しない

『貸し借りではない』例の典型は『共有』です。

<シェアリング|法規制の対象外・典型=『共有』>

あ 具体例

A・B・Cで資金を平等に出し合って自動車を1台購入した
A・B・Cが自動車を使用する頻度に違いがある
『使用頻度の違いの解消』が必要だと考えた
次のような『調整金支払いルール』を決めた

い 調整金支払いルール

使用した人が使用時間に応じて,他の2人にその都度『調整金』を支払う
※民法;使用方法の意思決定
詳しくはこちら|使用方法の意思決定プロセス|具体例|通知書サンプル・トラブル予防

<シェアリング×『共有』>

共有者間の使用方法の決定内容
→『貸し借り』に該当しない
『貸し借り』の例;『宿泊させる・運送・貸し渡し』

4 シェアリング|『共有』でも業法の規制対象になることもある|Hiltonタイムシェア

前述のように,シェアリングが各種業法の規制対象になるかどうかは『契約形態』が重要です。
しかし『契約形態・所有形態』だけで決まるわけではありません。
形式的に『民法上の共有』でも,実質的に『貸し借り』→法規制の対象,ということもあります。

<『民法上の共有』だけど『ホテル営業』|例>

あ サービス|具体例

『ヒルトン・グランド・バケーションズ』の『タイムシェア』

い ホスピタリティの実体

客室の清掃などの管理を事業者側でしっかりと行っている
実体として『ホテル』と同様

う 法的な扱い

『ホテル営業(旅館業)』として扱われている
外部サイト|Hilton|タイムシェア

このように『サービスの消費』の法律的な形式・契約形態にはバラエティがあるのです。
そして『賃貸借以外は規制対象外』とは限りません。
実質的な『独立性』で判断することになります。
次に説明を続けます。

5 シェアリング|法規制の対象行為×『実質的』独立性|判断基準概要

シェアリング・マッチングの法規制の対象行為と独立性の関係の概要をまとめます。

<シェアリング|法規制の対象行為×実質的独立性|判断基準概要>

サービス提供/受領者(利用者)の独立性により『規制対象』が否かが判断される

独立性の程度 『サービスの提供』該当可能性 法規制の対象
高い 高い 規制対象となる方向性
低い 低い 規制対象にならない方向性

当事者の『独立性』の判断は単純ではありません。
具体的形態のバリエーションについて,次に説明します。

6 契約・組織形態による『資金負担形態・財産の帰属』|まとめ

以上の契約や組織(法人)の形態による資金負担・財産の帰属についてまとめます。

<契約・組織形態による『資金負担形態・財産の帰属』>

契約形態 利用者=資金負担者の立場 対象財産の帰属=所有者
賃貸借 賃借人 元々の所有者(変更なし)
共有 共有者(の1人) 出資者全員の共有
組合 組合の出資者(組合員) 組合員全体での合有(※1)
法人(株式会社) 株主 法人
信託契約 受益者 受託者

『契約・組織の形態』の内容については別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|シェアリングの契約形態バラエティ|賃貸借・組合・共済会・法人方式
以上の『資金負担形態・財産の帰属』が,当事者の『独立性』の評価に影響します。
結局『法規制の対象』になるかどうか,という判断につながります。

7 契約・組織形態×『形式的』独立性→『賃貸借』以外は『独立性否定』方向

上記の契約形態の形式面では『賃貸借』以外は『利用者が財産保有のための資金』を負担しています。
対象財産について『共同所有(共有)』または『財産を所有する法人を所有』という形式になります。
『利用者』が『サービス提供者』に含まれる,ということです。
形式的には『サービス提供者と利用者の独立性』が不完全,と言えます。
しかし,このような形式論だけで判断されるわけではありません。
次に『法規制の対象行為』の判断の方向性を整理します。

8 シェアリング|法規制の対象行為×実質的独立性|判断の方向性

当事者の『独立性』についての大まかな判断の方向性をまとめます。

<当事者の独立性|大まかな判断の方向性>

あ 大まかな判断の方向性

サービス提供者・利用者の『独立性』を『実質面』で判断する

い 大まかな判断基準

ア 利用者が負担する金銭と『利用(量)』との相関関係 サービス利用の量と負担が比例=相関関係大
→『独立性』高い
イ 利用しなくても生じる負担 サービス利用がなくても負担あり
→『独立性』低い
ウ 組織結成の目的 『当該利用』以外のサービス・活動の内容・価値が大きい
→『独立性』低い

う 判断要素(実質的事情)

ア 財産を拠出・負担した者イ 利用する者ウ 利用の対価・設定内容エ 組織結成の目的・他の活動内容

過去に,いくつものチャレンジャー事業が遂行され,刑事裁判で公的判断が示されています。
詳しくはこちら|会員制・組合方式運送サービス×タクシー業該当性|判断基準=実質的独立性
また現在,多くのベンチャー事業者がシェアリング・マッチングサービスの提供を進めています。
適法性の確保については創意工夫が続出しています。
詳しくはこちら|シェアリング|リアルサービス|適法性の確保方法|利用規約・説明文

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