1 消費税の課税対象は『資産の譲渡等』=商品,サービスの売上
2 2年前の売上が1000万円未満の場合,消費税は免税となる
3 平成26年4月の消費税率変更の切り替えタイミングは『資産の譲渡等を行った時期』
3 弁護士業務の『着手金』における『役務の提供の時期』の解釈
4 『役務の提供』の時期が曖昧なサービスの消費税率判断基準

1 消費税の課税対象は『資産の譲渡等』=商品,サービスの売上

消費税の課税対象は,課税事業者が行った『資産の譲渡等』とされています(消費税法4条1項)。
『課税事業者』については後述します(後記『2』)。
『資産の譲渡等』の内容は次の3つとされます(消費税法2条1項8号)。

<消費税の課税対象=『資産の譲渡等』の内容>

事業として対価を得て行われる次の行為
ア 資産の譲渡
イ 資産の貸付
ウ 役務の提供

この『ア』〜『ウ』の内容について,さらに説明します。

<『資産の譲渡等』の内容の説明>

※国税庁タックスアンサーNo.6117

あ 『資産の譲渡』

定義=売買等の契約により,資産の同一性を保持しつつ,他人に移転すること
例;
・商品や製品の販売
・事業用設備を売却すること
・特許権,商標権の譲渡←無体財産権
・現物出資,負担付贈与,代物弁済

い 『資産の貸付』

定義=資産に係る権利の設定など他の者に資産を使用させる一切の行為
補足;
無体財産権の実施権や使用権等を設定する行為も資産の貸付けに含まれる

う 『役務の提供』

定義=サービスの提供
例;
・一般的サービス提供
 土木工事,修繕,運送,保管,印刷,広告,仲介,興行,宿泊,飲食,情報の提供,出演
・専門的知識、技能等に基づく役務の提供
 医師,弁護士,公認会計士,税理士の業務

以上を簡単に言うと『商品,サービスの販売の売上(対価)』ということになります。

2 2年前の売上が1000万円未満の場合,消費税は免税となる

(1)課税事業者と免税事業者

商品,サービスの売上のすべてについて,消費税を納める義務があるわけではありません。
販売等をした者が『課税事業者』の場合だけです。
『課税事業者』ではない場合,消費税を納める必要はありません。
これを『免税事業者』と言います。

『課税事業者』に該当するかどうかが重要です。

<『課税事業者』の要件>

※消費税法9条1項,9条の2第1項
前々年の課税売上高が1000万円以上である

これは個人の場合です。
法人の場合,『前々年度』となります。

これ以外にも,細かい例外的なルールはありますが,主なものはこれだけです。

例えば,現実に,ネットオークションのユーザーは要注意です。
前々年の1年間の売上合計額が1000万円に達している場合は,今年の売上について消費税の課税対象となります。
この金額に達していなかった,という場合は,今年の売上については消費税を納める必要はありません。
消費税率がアップした今,個人ネット売買は,一般の店舗よりもアドバンテージを増したと言える状態なのです。

(2)急成長のベンチャー企業でも最大2年間は『益税』となる

前々年度の売上がゼロの場合,今年の売上が多くても,消費税については免税事業者です。
売上について消費税8%を上乗せすること自体は適法です。
結局,8%分について,顧客からもらうけれど納税しない,という状態です。
制度の是非はともかく,これ自体は法律が予定していることであり,適法です。
益税と呼ばれています。

なお,これを活用して,2年毎に法人を解散→新法人設立,ということを繰り返す猛者も存在するということも聞きます。
一方租税回避目的自体は不利益を課す理由にならない,という考え方も強いです。
最終的に脱法だから違法と確定的に判断できるとは断言できません。
もちろん,取引に関しての不利益やコストなどがかかります。
お勧めしているわけではありません。

3 平成26年4月の消費税率変更の切り替えタイミングは『資産の譲渡等を行った時期』

平成26年4月に,消費税が5%から8%に変更されました。
この切り替えの時期には5%と8%のどちらを使うのかという疑問が生じることがあります。
どのタイミングで切り替わるのかどちらが適用されるのかについて説明します。

(1)『資産の譲渡等を行った時期』によって5%か8%が決まる

根本的な改正前後の税率の適用関係を最初に示しておきます。

<消費税5%か8%の適用区別>

※社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律附則2条,後掲通達1
『資産の譲渡等を行った時期』
平成26年4月1日以降→8%
平成26年3月31日以前→5%

<『資産の譲渡等を行った時期』>

・『資産の譲渡』
・『資産の貸付』
・『役務の提供』
※前記『1』の再掲

なお,『契約締結の時期』ではありません。
以上の中で『役務の提供』の時期,についてはさらに解釈が難しいので次に内容を説明します。

(2)『役務の提供の時期』の解釈

『役務の提供の時期』については,次のように解釈されます。

<『役務の提供の時期』の解釈>

※国税庁タックスアンサーNo.6141

あ 請負契約

(あ)物の引渡を要する→目的物全部の完成,引渡完了時
(い)物の引渡を要しない→役務全部の提供完了時

い 請負以外の人的役務の提供の契約→人的役務の提供完了時

※一定の例外経過措置が適用されるものもある

(3)『役務の提供の時期』の具体例

最後に,『役務の提供の時期』について,例を示しておきます。

<『役務の提供の時期』により適用される消費税率の具体例>

・建物建築請負→建物完成+引渡完了時
・仲介→紹介した時点

時点による消費税率>

4月1日以降→8%
3月31日以前→5%

3 弁護士業務の『着手金』における『役務の提供の時期』の解釈

消費税の税率の適用上,『役務の提供完了時点』が基準とされます(前記『2』)。

この点,弁護士の着手金は,これに対応する業務は交渉や訴訟を遂行する業務です。
委任契約締結着手金支払の後から提供されるサービス(役務)です。
そうすると,交渉終了(和解成立)時とか判決言渡時という発想もあります。

一方,着手金は交渉結果,判決内容が依頼者に好ましくない場合でも返還する性質のものではありません。
委任契約締結時

しかし,『役務の提供完了時点』については,所得税法の解釈が参考とされます。

<弁護士の着手金についての所得税法の解釈>

※裁判例の内容;後掲裁判例1

あ 結論

所得税法上における弁護士が収受する着手金収入金額計上時期
委任契約が成立した時点とする。

い 理由

返還義務なし,預かり金という性格はない

この所得税法上の解釈を元にして,消費税法上も同様に解釈すべきです。

つまり,消費税率の適用に関しても委任契約成立時点を基準とする,ということです。

4 『役務の提供』の時期が曖昧なサービスの消費税率判断基準

弁護士業務以外にも役務の提供の時期が曖昧となっているサービスの提供はあります。
特に,代金との対応も含めて考えると,明確にならない,ということは少なくないです。
このような場合の一般的な解釈の方向性は,前記の弁護士の着手金と同様になるでしょう。

役務の提供の時期が曖昧なサービスの消費税率適用の基準>

返還義務があるかどうか
なし→その支払(債権)が発生した契約の締結時点
あり→返還義務がないことが確定した時点

条文

[消費税法]
(課税の対象)
第四条  国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。
2〜6(略)

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一〜七(略)
八  資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。
九〜二〇(略)
2〜4(略)

(小規模事業者に係る納税義務の免除)
第九条  事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2〜9(略)

(前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例)
第九条の二  個人事業者のその年又は法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が千万円以下である場合において、当該個人事業者又は法人(前条第四項の規定による届出書の提出により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)のうち、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係る特定期間における課税売上高が千万円を超えるときは、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度における課税資産の譲渡等については、同条第一項本文の規定は、適用しない。
2〜5(略)

[社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律附則]
(消費税法の一部改正に伴う経過措置の原則)
第二条 この附則に別段の定めがあるものを除き、第二条の規定による改正後の消費税法(以下附則第十四条までにおいて「新消費税法」という。)の規定は、この法律の施行の日(以下附則第十五条までにおいて「施行日」という。)以後に国内において事業者(消費税法第二条第一項第四号に規定する事業者をいう。以下附則第十六条までにおいて同じ。)が行う資産の譲渡等(同項第八号に規定する資産の譲渡等をいう。以下この条及び附則第十五条において同じ。)及び施行日以後に国内において事業者が行う課税仕入れ(同項第十二号に規定する課税仕入れをいう。以下附則第十六条までにおいて同じ。)並びに施行日以後に保税地域(同項第二号に規定する保税地域をいう。以下附則第十六条までにおいて同じ。)から引き取られる課税貨物(同項第十一号に規定する課税貨物をいう。以下附則第十六条までにおいて同じ。)に係る消費税について適用し、施行日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等及び施行日前に国内において事業者が行った課税仕入れ並びに施行日前に保税地域から引き取った課税貨物に係る消費税については、なお従前の例による。

判例・参考情報

(判例1)
[平成20年 1月31日 東京地裁 平17(行ウ)395号 所得税決定処分取消等請求事件]
1 収入金額の計上時期の基本的考え方について
所得税法は,一暦年を単位としてその期間ごとに課税所得計算し,課税を行うこととしており,同法36条1項が,右期間中の総収入金額又は収入金額の計算について,「収入すべき金額による」と定め,「収入した金額による」としていないことからすると,同法は,現実の収入がなくても,その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,同権利発生の時期の属する年度の課税を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される。これは,所得税が,経済的な利得を対象とするものであるから,究極的には実現された収支によってもたらされる所得について課税するのが基本原則であり,ただ,その課税に当たって常に現実収入の時まで課税できないとしたのでは,納税者の恣意を許し,課税の公平を期し難いので,徴税政策上の技術的見地から,収入すべき権利の確定したときをとらえて課税することとしたものであり(最高裁判所昭和49年3月8日第二小法廷判決民集28巻2号186頁参照),ここにいう収入の原因となる権利が確定する時期はそれぞれの権利の特質を考慮し決定されるべきものである(最高裁判所昭和53年2月24日第二小法廷判決民集32巻1号43頁)。
 そして,弁護士報酬について,原告が上記(1)のとおり主張する内容をもってしては,上記の考え方を採らずに現金主義が適用されるべきであるとまではいえない。原告の当該主張するところは,具体的な検討に当たって,上記の権利が確定する時期がいつになるかという問題において検討されるべきものである。
 また,国税通則法15条2項7号は,消費税は,課税資産の譲渡等をした時に納税義務が成立する旨定めており,消費税法2条1項8号によれば,事業として対価を得て行われる役務の提供もここにいう課税資産の譲渡等に含まれるところ,この課税資産の譲渡等が行われた具体的な時期の判断についても,同様に,上記の考え方を踏まえ,課税資産の譲渡による対価や役務の提供による報酬を収受する権利が確定した時点で課税資産の譲渡等があったとすることを原則としつつ,取引の実態に応じて個別的に検討するのが相当である。
 そこで,以下,弁護士報酬等につき,原告が依頼者から受領した金員の内容に応じて検討することとする。
2 着手金について
(略)
弁護士報酬の種類としては,一般に,法律相談料,書面による鑑定料,着手金,報酬金,手数料,顧問料及び日当があること,このうち,着手金とは,事件又は法律事務(以下「事件等」という。)の性質上,委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて,その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価をいうこと,及び,着手金は,事件等の依頼を受けたときに支払を受けるものであることが認められる。このように,着手金は,ほかの種類の弁護士報酬と異なり,事件等の結果のいかんにかかわらず,委任事務処理が開始される前に支払を受けるものであり,その金額も受任時に確定されることによれば,弁護士が依頼者から事件等を受任した時点で収入の原因となる権利が確定するとみるのが自然である。
(略)
以上によれば,着手金請求権は,受任時において確定したというべきである。したがって,着手金は,事件等の処理について委任契約が締結された日の属する年の収入に計上すべきものと解するのが相当である。また,消費税についても,事件等の処理について委任契約が締結された日の属する期間に資産の譲渡等があったとみることができると解するのが相当である。
3 概算実費について
 原告は,破産免責申立事件等において,受任時に概算実費の支払を受けているところ,原告本人及び弁論の全趣旨によれば,これは,通常の郵券,交通費,送料等に充てることが想定される金員で,事件終了後清算を予定されていないものであることが認められる。
 原告は,これについても,着手金と同様に,現実の支払があった時点で収入として計上すべきである旨主張するが,同金員の支払が委任契約において合意され,かつ,事件終了後清算を予定されていないことにかんがみると,その内容は,委任契約において確定するというべきであるから,受任時に収入として計上し,また,同時点で資産の譲渡等があったと解するのが相当である。
4 報酬金について
(略)
証拠(乙1,29)及び弁論の全趣旨によれば,弁護士の報酬のうち,報酬金は事件等の性質上,委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて,その成功の程度に応じて受ける委任事務処理の対価をいい,事件等の処理が終了したときに,それぞれ支払を受けるものとされており,その額は,委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定することが原則とされていることが認められる。
 このことによれば,報酬金請求権は,委任事務処理が終了し,原告が依頼者に対し報酬金を請求した時に,権利として確定するというべきである。
(略)
以上によれば,報酬金請求権は,委任事務処理が終了した時点(委任契約に,原告が請求した時とする特約がある場合には,請求があったとき)に権利が確定するというべきであるから,当該時点の属する年の収入に計上すべきものと解するのが相当である。また,消費税に関しても,同時点の属する期間に資産等の譲渡があったと解するのが相当である。

(通達1)
[平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通達)]
(施行日前の契約に基づく取引)
2 新消費税法は、施行日以後に行われる資産の譲渡等並びに課税仕入れ及び保税地域からの課税貨物の引取り(以下「課税仕入れ等」という。)について適用されるのであるから、施行日の前日までに締結した契約に基づき行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、これらが施行日以後に行われる場合には、別段の定めがある場合を除き、当該資産の譲渡等及び課税仕入れ等について新消費税法が適用されることに留意する。

[国税庁タックスアンサーNo.6141]
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6141.htm
(3) 役務の提供
 請負による役務の提供の時期は、原則として、物の引渡しを要する請負契約にあっては目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の全部の提供を完了した日です。
 また、請負を除く人的役務の提供の時期は、原則としてその人的役務の提供を完了した日です。

[国税庁タックスアンサーNo.6117 課税の対象となる取引]
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6117.htm
 消費税の課税の対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等と外国貨物の輸入です。
1 資産の譲渡等
 「資産の譲渡等」とは、事業として有償で行われる資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供をいいます。
(1) 資産の譲渡
 「資産の譲渡」とは、売買等の契約により、資産の同一性を保持しつつ、他人に移転することをいいます。したがって、例えば、商品や製品の販売のほか、事業用設備を売却することが資産の譲渡に当たり、また、 これら有形の資産のほか、例えば、特許権や商標権などの無体財産権の譲渡も資産の譲渡に含まれます。
 さらに、現物出資、負担付贈与、代物弁済なども資産の譲渡となります。
(2) 資産の貸付け
 「資産の貸付け」とは、資産に係る権利の設定など他の者に資産を使用させる一切の行為をいいます。
 なお、無体財産権の実施権や使用権等を設定する行為も資産の貸付けに含まれます。
(3) 役務の提供
 「役務の提供」とは、例えば、土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、情報の提供、出演などのサービスを提供することをいいます。
 医師、弁護士、公認会計士、税理士などによるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供も含まれます。