刑事事件について弁護士に依頼すると,どんなことをしてくれますか。
また国選弁護と私選弁護で違うのでしょうか。
主な弁護活動の目標は,不起訴処分,量刑の軽減,身柄解放ということになります。
弁護人の具体的な活動は起訴前,起訴後で異なります。
当然,個別的な事情によって最適な弁護活動は異なります。
国選弁護人は原則,起訴されてから国が選任しますが,私選弁護人は起訴される前でも選任できるため,不起訴や起訴猶予に向けて動く事ができます。

1 起訴前は,弁護人は不起訴処分身柄解放に向けた活動をする
2 起訴後は,弁護人は量刑の軽減身柄解放に向けた活動をする
3 警察が弁護人活動に否定的なことを言うこともある
4 国選弁護人と私選弁護人の違い
5 被疑者国選弁護の対象は一定の重大な類型だけ
6 国選弁護人の費用を被告人が負担することもある

1 起訴前は,弁護人は不起訴処分身柄解放に向けた活動をする

起訴前は,今後検察官が起訴するかどうかを判断するという状態です(刑事訴訟法247条,248条)。
被疑者にとって,最も有利なのは不起訴となることです。

また同時に,身柄拘束の問題もあります。
事情によっては逮捕勾留という身柄拘束を受けます。
身柄拘束から解放されるための活動も重要になります。

これらの目的のために,弁護人が活動する内容の主要なものは次のとおりです。

<起訴前の弁護人の主な活動内容>

ア 被疑者との面会
 事件詳細の聴取,今後の手続き説明,体調・精神状態の確認,激励・家族からの伝言(伝える)
イ 証拠収集
ウ 示談交渉
エ 勾留阻止に向けて交渉
オ 勾留が決定してしまったら,決定に対して不服申立
カ 勾留が取り消されない場合,勾留期間が延長されないようにする

2 起訴後は,弁護人は量刑の軽減身柄解放に向けた活動をする

起訴後は,最終的には裁判所が量刑を判断します。
これは犯行を認めている,自白事件の場合です。
否認している場合は,無罪に向けた反証活動が中心になります。

これとは別に身柄拘束されている場合は,解放の手続もあります。
主に保釈申請です。

以上のような活動をまとめます。

<起訴後の弁護人の主な活動内容>

ア 証拠収集
イ 示談交渉
ウ 勾留されている場合,保釈に向けて活動
エ 被告人と面会し,裁判の方針相談,精神状態のケア,体調確認
オ 検察が提出する証拠の精査,検察の主張に対する反論

3 警察が弁護人活動に否定的なことを言うこともある

たまに,被疑者や被告人が,警察官から誤った説明を受けることがあるようです。
『弁護士を付けると不利になるからやめといた方がよい』というような誤った説明です。
犯人(容疑者)は黙って言いなりに応じれば良い,という雑な考え方が根底にあるようです。

しかし,被疑者は,犯罪を行っていてもそうでなくても,適切な対応をする権利があります。
結果的な責任,手続きについて,不当なことがなされないようにケアする必要性があります。
弁護士(弁護人)に依頼して有利になることはあっても,不利になるということはありません。

4 国選弁護人と私選弁護人の違い

国選弁護人は,裁判所が弁護人を選任する制度です。
基本的に,起訴された後に選任されます。
この点で,弁護活動の速さ,できる活動の範囲が変わってきます(前記『1』)。
また,私選弁護の場合,当然ですが弁護士を選べるということが大きなメリットです。

ただし,対象事件によっては被疑者段階でも国選弁護人が付される事もあります。
被疑者国選と呼ばれています。

5 被疑者国選弁護の対象は一定の重大な類型だけ

被疑者段階で国選弁護人が選任される対象は決まっています。

被疑者国選の対象事件は,死刑又は無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件です。
このように,起訴前については,一定の重大な類型だけに限定されています。

6 国選弁護人の費用を被告人が負担することもある

(1)訴訟費用は被告人が負担することもある

国選弁護の場合,裁判所が選任して,政府が裁判所を通して報酬を国選弁護人に支払います。
しかし,この費用は訴訟費用の一環となります。
次に,訴訟費用を誰が負担するのかは刑事訴訟法において一定のルールが決まっています。

(2)刑事裁判→判決,となった場合は判決中で負担の有無が指定される

刑の言渡があった時は,原則として被告人負担で,例外として貧困で厳しい時は免除とされています(刑事訴訟法181条1項)。
そして,被告人に負担させる場合は,裁判をすることになっています(刑事訴訟法185条)。
具体的には,判決主文(懲役n年,など)の後に訴訟費用は被告人の負担とするとか読み上げられることになります。

(3)被疑者国選の場合でも裁判所が訴訟費用の負担を命じることがある

被疑者国選についても,その後起訴されれば,訴訟費用の一環に組み入れられます。
被疑者国選が付いて,起訴されなかった場合も,被疑者が費用を負担することがあるというのは変わりません。
検察官が裁判所に申立(請求)をすれば,裁判所が負担させるべきかどうかを判断することになっています(刑事訴訟法187条の2)。

(4)訴訟費用の内容には,国選弁護人の費用と証人の旅費,日当が含まれる

訴訟費用を被告人が負担する場合,国選弁護人の報酬だけというわけではありません。
訴訟費用には国選弁護人の報酬以外に,証人の旅費・日当なども含まれます。

訴訟費用の内容を列挙すると次のとおりです。

<訴訟費用の内容>

ア 証人の旅費,日当,宿泊料
イ 鑑定人,通訳人,翻訳人の鑑定料等
ウ 国選弁護人の旅費,日当,宿泊費,報酬

(5)訴訟費用の負担についえは執行免除申立ができる

訴訟費用の負担を命じられた場合,撤回を要求する手続があります。

まず,訴訟費用の負担の裁判自体に対しては,単独で不服申立できません。
執行免除の申立という制度はあります(刑事訴訟法500条)。

免除されるためには,貧困のため完納できないということを立証しなくてはなりません。
この申立期間は判決確定後20日以内となっています。
例えば判決確定後1か月金策を頑張ったけどダメだった,という場合は既に申立ができなくなっています。注意が必要です。

(6)国選弁護の費用負担の判断基準

裁判所が,国選弁護の費用を被告人が負担させるかどうかを判断する基準について説明します。

簡単に言うと,実情として,経済的に支払が可能かどうか,をベースにして判断されます。

さらに大雑把な傾向は次のとおりです。

<訴訟費用の負担の判断の概要>

懲役(禁固)刑で実刑 →被告人の負担なし
執行猶予 →被告人が負担する

要は,その後刑務所に行くかどうか,とリンクしている傾向にあるわけです。
社会に戻された場合は,働けるから支払える,という趣旨です。

条文

[刑事訴訟法]
第百八十一条  刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。

第百八十五条  裁判によつて訴訟手続が終了する場合において、被告人に訴訟費用を負担させるときは、職権でその裁判をしなければならない。この裁判に対しては、本案の裁判について上訴があつたときに限り、不服を申し立てることができる。

第百八十七条の二  公訴が提起されなかつた場合において、訴訟費用を負担させるときは、検察官の請求により、裁判所が決定をもつてこれを行う。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第二百四十七条  公訴は、検察官がこれを行う。
第二百四十八条  犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

第五百条  訴訟費用の負担を命ぜられた者は、貧困のためこれを完納することができないときは、裁判所の規則の定めるところにより、訴訟費用の全部又は一部について、その裁判の執行の免除の申立をすることができる。
2  前項の申立は、訴訟費用の負担を命ずる裁判が確定した後二十日以内にこれをしなければならない。