【眺望権は権利として認められない|『眺望地役権』設定は有意義】
1 『眺望権』という権利は認められていない
事例設定
近くに別の高層マンションが建築される予定になっている
眺めが悪くなるので何とか止めてもらいたい
確かにマンションは個人の貴重な財産です。
購入した時に眺望を重視していたことと思います。
しかし、眺望の権利、眺望の利益、というものは法的にはほとんど認められていません。
※最高裁平成18年3月30日
眺望権・眺望の利益が主張された裁判例はいくつかありますが、ストレートに眺望権を認めたものは皆無です。
結局眺望の悪化を理由に、別の土地の所有者を拘束・制限することは通常はできません。
なお、日照権については、実務上権利として認められています。
別項目;『日照権』は判例上権利として認められている
2 不動産売買における『眺望に関する説明』が不適切→損害賠償が認められる
事例設定
その後、高層マンションが建築されることになった
分かっていたら買っていなかった
眺望自体は法的に保護されないとしても、売買時における不当な説明への責任追及は可能です。
説明義務違反による売主や仲介業者の責任が主張された裁判例はいくつもあります。
売買における説明義務違反が判断されたケース
あ 売買契約解除が認められた事例
福岡地方裁判所平成18年2月2日
い 説明義務違反が認められなかった事例
大阪地方裁判所平成20年6月25日
責任を判断する重要な事情
眺望が阻害される可能性を説明した→責任否定方向
実際のトラブル事例では、そもそも、そのような説明・セールストークが証拠として残っているかどうかが非常に重要です。
よく登場する証拠としては、録音・メール・FAX・パンフレット、などがあります。
裏を返せば、これらがない場合は、立証の面で非常に困難が生じます。
3 広範囲の開発計画を『眺望保護』により止めることは難しい;国立マンション訴訟
事例;国立マンション訴訟
個人の住居ではなく、町並みとして、眺めの良かった場所が失われてしまうことになる
国立マンション訴訟という有名な裁判例があります。
※最高裁平成18年3月30日
建築の差止や損害賠償請求がすべて否定されています。
個人の所有住宅の場合よりも、景観・眺望の保護が低くなっていると言えます。
個人としての権利が侵害されているわけではなく、1地域全体の問題であるため、広い範囲での建築規制・開発計画という行政の判断が優先されるという考え方が取られたのです。
4 合意により眺望を確保した場合は、登記しておくと確実(眺望地役権)
(1)合意により眺望地役権を設定できる
別の土地の所有者同士で、眺望を確保する独自ルールを設定することができます(民法280条)。
これを眺望地役権と言います。
眺望地役権の設定例
(2)土地開発の際、眺望地役権が活用されることがある
一定の広さのエリアを同一業者(デベロッパー)が開発しているケースにおいて、眺望地役権が活用されることがあります。
これは、高層マンションからの眺めを確保するルールを設定(合意)する、というものです。
(3)眺望地役権を確実にするためには登記すると良い
ただ、眺望地役権の合意内容は、そのままでは、合意した者だけにしか適用されません。
つまり、デベロッパー(合意した者)からその土地を購入した者には適用されないということになります。
この点、眺望地役権の登記を行うことにより、第三者にもこのルールが適用されることになります。
※不動産登記法80条
当然ですが、このルール(地役権)があれば、これに違反する建築を差し止めることができます。
裏を返せば、このようなルールがない以上、眺望が悪くなるリスクを常に抱えている、ということです。
5 売買時のセールストーク×法的責任|眺望・日照
不動産売買の際、セールストークが過剰になる傾向があります。
セールストークとして眺望・日照などの環境が強調されることが多いです。
購入後に説明した内容と実際の状況が違うというケースもあります。
この場合の法的責任についての判例を別記事で説明しています。
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|環境保証タイプ|眺望・日照・通風・騒音
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