競売手続において,売却許可決定がなされなかったり,代金が納付されない場合はどうなりますか。

1 売却許可決定期日は原則として開札期日から1週間以内に指定される
2 売却不許可事由に該当がなければ売却が許可される
3 代金納付が履行されないと売却許可決定は失効する
4 最高価買受人が代金を納付しなかった場合,次順位買受申出ができる
5 売却許可決定が失効した場合,再度の売却が実施される
6 入札がなかった場合は,再度の売却が実施されることになる
7 売却見込みがない場合,手続停止→手続取消となることもある
8 売却不許可の後は要因を解消するか終了のいずれかとなる
9 1回的な瑕疵による売却不許可の場合は,次順位の入札の繰り上げまたは再度の入札となる

1 売却許可決定期日は原則として開札期日から1週間以内に指定される

不動産競売のフローで,開札期日の次は売却決定期日ということになります。
裁判所が売却許可か不許可のどちらにするかを審査する日程,という趣旨です。
裁判所書記官が,開札期日から1週間以内の日を売却決定期日として指定することとされています(民事執行法64条4項)。
なお,やむを得ない事由がある場合については,この期間制限は適用されません(民事執行法規則46条)。

<やむを得ない事由の例>

・売却対象が農地であり,知事または農業委員会の審査手続が必要である場合
・売却不許可事由に該当する可能性が高いと判明している場合

2 売却不許可事由に該当がなければ売却が許可される

民事執行法上,売却不許可事由が限定的に列挙されています。
そして,それらに該当しない場合には許可決定をすることになっています(民事執行法71条)。
なお,各事由の存否の判断については,証明責任分配など,一般的な事実認定のルールが適用されます。

<売却不許可事由;民事執行法71条>

・手続の開始又は続行を妨げる事由が存在するとき(1号)
・買受け申出人に欠格事由があるとき(2号,3号)
・悪質な競売ブローカーの手続関与があるとき(4号)
・目的不動産が損傷した場合の不許可の申し出があるとき(5号)
・売却基準価額の決定又はその手続に重大な誤りがあるとき(6号)
・一括売却の決定又はその手続に重大な誤りがあるとき(6号)
・物件明細書の作成に重大な誤りがあるとき(6号)
・売却手続に重大な誤りがあるとき(7号)

3 代金納付が履行されないと売却許可決定は失効する

売却許可決定がなされた場合は,次のフローは代金納付です。
具体的には,申出額から既に納付済みの買受申出保証額を控除した残額を納付することになります。
裁判所によって定められた代金納付日までに代金納付がなされない場合,売却許可決定が失効します(民事執行法80条1項)。
この場合,自動的に失効となります。
つまり,裁判所や書記官による何らかの決定などが行われるわけではありません。

4 最高価買受人が代金を納付しなかった場合,次順位買受申出ができる

最高価買受申出人が代金納付をしない場合,次順位買受人にチャンスが回ってきます。

入札価格が2番目だった者が,次順位買受の申出をすることができるのです。
条文上,次順位買受申出の条件は最高価買受人が代金納付を履行しない場合だけが規定されています。
例えば最高価買受人につき売却不許可決定がなされた場合は対象とされていません。

次順位買受申出における買受申出額について,次の制限があります(民事執行法67条)。

<次順位買受の申出の要件>

あ 最高価買受人に生じた事情

最高価買受人が代金納付をしなかった

い 次順位買受申出における買受申出額

※いずれも

買受可能価額以上

・(最高価買受申出人の申出額 − 買受申出保証額)以上

買受可能価額は元々最低額とされているので当然です。

基準価格の8割の金額です。

そして,最高価買受人から没収されることとなった保証額を合わせて,最高価買受申出人が買ったはずの金額よりも高くないといけない,ということです。

この要件がないと↓のような不正が可能となってしまいます。

<次順位買受価格制限により防止される不正>

開札後に,1位と2位が結託して意図的に代金を納付せず→保障額没収含めて,トータルでより安く入手する

→いわば後出しじゃんけん

以上の条件をクリアした次順位買受の申出があった場合,今度は,この申出について売却許可or不許可,の審査に移ります(民事執行法80条2項)。

5 売却許可決定が失効した場合,再度の売却が実施される

結果的に,売却許可決定がなされない,とか,失効した,という場合は,通常のフローどおりに進みません。
この場合,次のフローは次のようになります。

<買受人が代金納付をしない+次順位買受申出がない,できない場合のフロー>

※いずれか

あ 売却手続を,売却方法の決定からやり直す

→代金不納付の買受人は,手続に参加できません(民事執行法71条4号ロ)。

い 特別売却を行う

→裁判所書記官の判断で行う場合があります(民事執行規則51条1項)。

う 競売手続の停止

→例外的に,売却の見込みなしという判断に至った場合に停止となる場合があります(後記『7』)。

6 入札がなかった場合は,再度の売却が実施されることになる

競売手続において,入札期間に入札がゼロだった,ということも生じます。
適法な買受申出がなされない,という場合の次のフローを説明します。
代金納付がなされたかった場合も同じフローとなります。

<適法な買受申出がなされない場合のフロー>

※いずれか

あ 売却手続を,売却方法の決定からやり直す

→代金不納付の買受人は,手続に参加できません(民事執行法71条4号ロ)。

い 特別売却を行う

→裁判所書記官の判断で行う場合があります(民事執行規則51条1項)。

う 競売手続の停止

→例外的に,売却の見込みなしという判断に至った場合に停止となる場合があります(後記『7』)。

なお,入札がない,という場合で,その後になされる手続の典型例を次に示しておきます。

<入札がなされない場合のフローの典型例>

不動産の鑑定による売却基準価格が現実的な価格よりも高めに設定されてしまった

入札がなされない

再度不動産の鑑定(評価)を行い,前回よりもディスカウントした基準価格で再度売却(入札)を行う

7 売却見込みがない場合,手続停止→手続取消となることもある

3回の売却手続を実施したが売却に至らなかった場合で,かつ,売却の見込みがないと判断した場合は,裁判所は強制競売手続を停止します(民視執行法68条の3第1項)。
逆に言えば,売却の見込みが薄いという事情があっても,最低限3回は売却を実施することになります。

停止というのは最終的な終了の1つ前の段階です。
つまり,手続の一時停止のような状態です。

手続が終了になると,差押を行った債権者としては,債権回収ができないことになります。
そこで,差押債権者は,手続停止の通知を受けてから3か月以内に売却実施の申出をすることができます。
この申出をするためには買受申出(入札)予定の者の存在が必要です(民事執行法68条の3第2項)。

手続停止の後,債権者からの売却実施の申出がない場合や,なされた場合でもその後売却完了に至らなかった場合は,強制競売手続の取消となります(民事執行法68条の3第3項)。
最終的に手続が終了する,という意味です。

8 売却不許可の後は要因を解消するか終了のいずれかとなる

裁判所が売却不許可という判断をした場合の,その後の手続について説明します。

解消可能な事由があれば,解消に向けて進み,解消不可能であれば手続を終了する,ということです。
次にまとめます。

売却不許可決定後のフロー>

あ 競売手続を続行する余地のない不許可事由

例;執行要件の欠缺,執行取消文書の提出
→競売手続の取消

い 一時的に売却を妨げる不許可事由

例;執行停止文書の提出
→その事由が解消したときから続行

う 1回的な瑕疵による不許可事由

例;無資格者による買受け
→是正するのに必要な時点に戻って売却手続をやり直す
具体的な手続については次に説明します(後記『9』)。

9 1回的な瑕疵による売却不許可の場合は,次順位の入札の繰り上げまたは再度の入札となる

1快適な瑕疵によって売却不許可となった場合,是正に必要な時点に戻る,ということになります(前記『8』)。
具体的には,次のいずれかとなります。

1回的な瑕疵による売却不許可後の手続フロー>

※いずれか

あ 『次順位』の入札者を『最高価買受人』として扱う

『次順位繰り上げ』と言うべき手法です。

い 再度の入札実施

この判断については,法律上明確な規定はありません。
裁判所の合理的な裁量が認められているということです。
『次順位』の入札者は,本来最高価買受人であり,入手の機会を獲得していたはずだと考えられます。
これを元に,『次順位繰り上げ』の方法(『あ』)を取ると,再度の入札(『い』)をしなくて済みます。
時間的にも労力的にも合理的です。
『次順位繰り上げ』の方法(『あ』)については,最高裁で認められています(後掲判例1)。

平成26年3月の朝鮮総連本部ビルについての競売事件において,東京地裁は『次順位繰り上げ』の方法を採用しました。
この方法の採用について,新たに最高裁が認めました(平成26年11月5日;執行抗告の棄却)。

<参考情報>

・民事執行実務講義案 裁判所職員総合研修所監修 司法協会
・民事執行の実務 不動産執行編 下 東京地方裁判所民事執行センター実務研究会 (著)
・民事執行法 (現代法律学全集23) 中野 貞一郎 (著)

条文

[民事執行法]
(売却の方法及び公告)
第六十四条  不動産の売却は、裁判所書記官の定める売却の方法により行う。
2  不動産の売却の方法は、入札又は競り売りのほか、最高裁判所規則で定める。
3  裁判所書記官は、入札又は競り売りの方法により売却をするときは、売却の日時及び場所を定め、執行官に売却を実施させなければならない。
4  前項の場合においては、第二十条において準用する民事訴訟法第九十三条第一項 の規定にかかわらず、売却決定期日は、裁判所書記官が、売却を実施させる旨の処分と同時に指定する。
5〜7(略)

(次順位買受けの申出)
第六十七条  最高価買受申出人に次いで高額の買受けの申出をした者は、その買受けの申出の額が、買受可能価額以上で、かつ、最高価買受申出人の申出の額から買受けの申出の保証の額を控除した額以上である場合に限り、売却の実施の終了までに、執行官に対し、最高価買受申出人に係る売却許可決定が第八十条第一項の規定により効力を失うときは、自己の買受けの申出について売却を許可すべき旨の申出(以下「次順位買受けの申出」という。)をすることができる。

(売却の見込みのない場合の措置)
第六十八条の三  執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法による売却を三回実施させても買受けの申出がなかつた場合において、不動産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは、強制競売の手続を停止することができる。この場合においては、差押債権者に対し、その旨を通知しなければならない。
2  差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から三月以内に、執行裁判所に対し、買受けの申出をしようとする者があることを理由として、売却を実施させるべき旨を申し出たときは、裁判所書記官は、第六十四条の定めるところにより売却を実施させなければならない。
3  差押債権者が前項の期間内に同項の規定による売却実施の申出をしないときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消すことができる。同項の規定により裁判所書記官が売却を実施させた場合において買受けの申出がなかつたときも、同様とする。

(売却不許可事由)
第七十一条  執行裁判所は、次に掲げる事由があると認めるときは、売却不許可決定をしなければならない。
一  強制競売の手続の開始又は続行をすべきでないこと。
二  最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格若しくは能力を有しないこと又はその代理人がその権限を有しないこと。
三  最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格を有しない者の計算において買受けの申出をした者であること。
四  最高価買受申出人、その代理人又は自己の計算において最高価買受申出人に買受けの申出をさせた者が次のいずれかに該当すること。
イ その強制競売の手続において第六十五条第一号に規定する行為をした者
ロ その強制競売の手続において、代金の納付をしなかつた者又は自己の計算においてその者に買受けの申出をさせたことがある者
ハ 第六十五条第二号又は第三号に掲げる者
五  第七十五条第一項の規定による売却の不許可の申出があること。
六  売却基準価額若しくは一括売却の決定、物件明細書の作成又はこれらの手続に重大な誤りがあること。
七  売却の手続に重大な誤りがあること。

(代金不納付の効果)
第八十条  買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定は、その効力を失う。この場合においては、買受人は、第六十六条の規定により提供した保証の返還を請求することができない。
2  前項前段の場合において、次順位買受けの申出があるときは、執行裁判所は、その申出について売却の許可又は不許可の決定をしなければならない。

[民事執行規則]
(入札期間等の指定)
第四十六条
 執行裁判所は、期間入札の方法により不動産を売却するときは、入札期間、開札期日及び売却決定期日を定めなければならない。この場合において、入札期間は、一週間以上一月以内の範囲内で定め、開札期日は、入札期間の満了後一週間以内の日とし、売却決定期日は、やむを得ない事由がある場合を除き、開札期日から一週間以内の日としなければならない。

(入札又は競り売り以外の方法による売却)
第五十一条
1 入札又は競り売りの方法により売却を実施させても適法な買受けの申出がなかつたときは、執行裁判所は、執行官に対し、他の方法により不動産の売却を実施すべき旨を命ずることができる。この場合においては、売却の実施の方法及び期限その他の条件を付することができる。
2 執行裁判所は、前項の規定により売却の実施を命じようとするときは、あらかじめ、差押債権者の意見を聴かなければならない。
3 執行裁判所は、第一項の規定により売却の実施を命ずるときは、買受けの申出の保証の額及び保証の提供は金銭又は執行裁判所が相当と認める有価証券を執行官に提出する方法によるべき旨を定めなければならない。
4 第一項の規定による決定がされたときは、裁判所書記官は、各債権者及び債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
5 執行官は、第一項の規定による決定に基づいて不動産の売却を実施した場合において、買受けの申出があつたときは、速やかに、不動産の表示、買受けの申出をした者の表示並びに買受けの申出の額及び年月日を記載した調書を作成し、保証として提出された金銭又は有価証券と共にこれを執行裁判所に提出しなければならない。
6 前項の調書が提出されたときは、執行裁判所は、遅滞なく、売却決定期日を定めなければならない。
7 前項の規定により売却決定期日が定められたときは、裁判所書記官は、第三十七条各号に掲げる者及び買受けの申出をした者に対し、その期日を開く日時及び場所を通知しなければならない。
8 第四十四条第二項の規定は、第五項の調書について準用する。

判例・参考情報

(判例1)
[平成22年 8月25日 最高裁第一小法廷 平22(許)2号 売却許可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件]
担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合,売却の手続に重大な誤りがあることは明らかである。この場合,執行裁判所は,誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とすることとなるが,その後は,改めて期間入札を実施するほかはなく,上記入札人は再び買受けの申出をすることができるにすぎないと解することは,最高価買受申出人と定められ売却許可決定を受けられるはずであった上記入札人の保護に欠けることになり,相当でない。他方,執行官による上記の誤りがあるからといって,既に行われた売却の手続全体が瑕疵を帯びると解する理由はなく,当該瑕疵が治癒されれば当初の売却の手続を続行するのに何ら支障はない。
 そうすると,上記の場合には,執行裁判所は,誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とした上で,当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日及び売却決定期日を定め,これを受けて執行官が再び開札期日を開き,最高価買受申出人を定め直すべきものと解するのが相当である。このことは,当初の開札期日において開札されないまま無効と判断された入札があるため,当該入札が最高の価額での入札である可能性を否定することができない場合についても,同様である。

(裁判官金築誠志の補足意見)
2 執行官が入札を誤って無効と判断した場合に改めて行われる売却の手続は,飽くまで当初の手続の瑕疵を治癒するために,その限度で行われるものであって,当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日を開いて最高価買受申出人を定め直すものにすぎない。そうだとすると,新たに売却実施処分(法188条,64条3項参照)を経る必要はなく,改めて開札期日及び売却決定期日が指定されれば足りると解するのが相当である。なお,通常の売却の手続においては,売却決定期日は,裁判所書記官が売却実施処分と同時に指定するものとされ(法188条,64条4項),開札期日も裁判所書記官が定めるものとされているが(規則173条1項,46条1項),これは定型的に行われる売却の手続を前提とするものである。執行官が入札を誤って無効と判断した場合に改めて行われる売却の手続は,通常の売却の手続と異なる非定型的なものであるから,売却決定期日の変更や取消しの権限が執行裁判所にあると解されているのに準じて,再度の開札期日及び売却決定期日を指定する権限は,執行裁判所にあると解するのが相当である(法20条,民訴法93条参照)。
 また,当初の開札期日の終了に伴い,買受けの申出の保証は,誤って最高価買受申出人と定められた入札人等の提供したものを除き,入札人に返還されているのが通常であろうから,執行裁判所は改めて開札期日を定めるに当たって,買受けの申出の保証を再度提供する期限を定めるのが相当である。
 3 次に,裁判所書記官は,規則37条各号に掲げる者に対し,開札期日及び売却決定期日を開く日時及び場所を通知するとともに(規則173条1項,49条,37条参照),当初の売却の手続において適法な入札をした入札人のうち,最高の価額で買受けの申出をしたもの及びこの価額を前提とすれば次順位買受けの申出をすることができる価額で買受けの申出をしたものに対しては,上記日時等に加え,買受けの申出の保証を再度提供するために必要な事項(提供の期限,方法等)を通知して,再度の売却の手続に参加する機会を与える必要があると解される。
 4 他方,執行官が入札を誤って無効と判断した場合に改めて行われる売却の手続においては,当初の入札を有効なものと扱い,新たな入札は予定されていないのであるから,公告(法188条,64条5項,規則173条1項,49条,36条1項),公示等(規則173条1項,49条,36条2項)は,いずれも不要である。
 5 執行官は,当初の入札のうち,上記2のとおり執行裁判所が定めた期限までに買受けの申出の保証を再度提供した入札人の入札を有効と扱った上で,再び開札期日を開くことになる。執行官が,開札期日において,入札の適法性を審査し,最高価買受申出人を定めなければならないこと,執行裁判所が,売却決定期日において,売却不許可事由の有無を審査し,売却の許可又は不許可を言い渡さなければならないことなどは,通常の売却の手続と異なるところはない。
 6 私の考える手続の概要は以上のとおりであるが,実務の実情に応じて柔軟な運用が行われることが望まれよう。