【借地契約終了の障壁!更新拒絶の条件を解説】

1 借地契約法定更新の基本:何故更新が難しいのか

借地契約は、そう簡単には終了しないことになっています。つまり、土地の所有者(地主)は借地人から土地を返してもらう(明渡請求をする)ことはとても難しいのです。その理由は、借地期間が満了しても、原則として法定更新となってしまうからです。法定更新を止める更新拒絶という対抗措置がありますが、更新拒絶が認められるためには一定のハードルがあるのです。
本記事では、なぜ借地契約の法定更新をとめる(更新拒絶)が難しいのかということの要点を説明します。

(1)法定更新の原則

借地契約の期間が終了したとき、特段の事情がない限り、この契約は自動的に更新されます。これを「法定更新」と言います。地主が更新を拒否したい場合には、法律で定められた「正当な事由」が必要となります。

(2)借地契約の特別性

借地契約は、土地という非常に特別な資産を取り扱う契約です。土地は動かせない、そして取り替えのきかない存在であり、特に都市部では土地の価値は非常に高いです。このため、借地人の権利を守るためのルールが厳格になっています。

(3)更新拒否のハードル

地主が更新を拒否するには、明確な「正当な事由」が必要とされます。この正当な事由とは、例えば、地主自らが土地を使用する必要が生じた場合や、借地人が契約の義務を果たしていない場合などが考えられます。ただ、これらの事由も明確な基準があり、容易に更新拒否が認められるものではありません。

以上の点から、借地契約の更新は、他の契約と比べて特別なルールが存在するため、その更新が難しいと言われる背景があります。地主も借地人も、契約の更新に関しては、十分な理解と準備が必要です。
詳しくはこちら|借地契約の更新の基本(法定更新・更新拒絶(異議)・更新請求)

2 更新拒絶の正当事由とは:具体的な判断基準を解説

借地契約の更新について話す上で避けては通れないのが「更新拒絶の正当事由」です。この正当事由がなければ、地主は借地契約の更新を拒否することはできません。それでは、具体的にどのような事情や条件が正当事由として認められるのか、その判断基準について解説します。

(1)地主の土地使用の必要性

地主自身やその家族が住居や事業のために土地を必要とする場合、これは正当事由として認められます。例えば、自宅を建てるためや新しい店舗を開業するためなどが考えられます。

(2)借地人の契約違反

借地人が契約内容に違反している場合は、それだけで解除が認められることがあります。たとえば、土地を適切に管理しない、違法な行為を行っている、または賃料の未払いが続いている場合などが該当します。
ただ、状況によっては解除は認められません。解除が認められないとしても、更新拒絶の正当事由としては認められることもあります。

(3)土地の利用状況

地域の都市計画や利用状況が大きく変わった場合、更新拒絶の正当事由として考慮されることがあります。新しい交通インフラの整備や大型商業施設の建設など、大きな変動がある場合は該当する可能性が高まります。

(4)立退料(明渡料)の額

地主が借地人に支払うべき立退料の額が、適切でないと判断される場合、これも正当事由の一つとして考えられます。具体的な金額の基準は固定されていませんが、双方の交渉や市場価格などを基に判断されます。

これらの正当事由に関する判断は、総合的に行われます。一つの事由だけで更新拒絶が認められるわけではなく、全体的な状況や背景を踏まえた上での判断となります。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理

3 地主の土地使用必要性:更新拒絶の大きな要因

土地を所有している地主が、その土地を自ら使用する必要が生じた場合、これは借地契約の更新拒絶の正当事由として非常に強い要因となります。では、具体的にどのような場面や状況が地主の土地使用の必要性として認められるのか、その詳細について深堀りしていきましょう。

(1)自己の住宅建設

地主や地主の家族が新たに住宅を建設する計画がある場合、これは明確な土地使用の必要性として認識されます。新しい家族の誕生や家族構成の変化など、さまざまな背景が考えられます。

(2)事業拡大や新規開業

地主が事業者であり、その事業の拡大や新規開業のために土地を使用する必要が生じた場合も、強力な正当事由として認められるケースが多いです。

(3)土地の再開発や都市計画の変更

都市の成長や地域の再開発に伴い、地主が土地を有効活用するチャンスが訪れた場合、これも土地使用の必要性として評価されることがあります。

(4)土地の継承や相続

地主が変わる場合、新しい地主の計画や意向に合わせて、土地の使用方針が変わることも考えられます。このような状況でも、土地使用の必要性は認められる可能性があります。

それぞれのケースにおいて、地主の土地使用の必要性は明確な証拠や根拠とともに裁判所や関連機関に示される必要があります。単なる主観や希望だけでは、更新拒絶の正当事由として認められることは難しい点を理解しておくことが重要です。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理

4 借地人の土地利用状況:更新を巡る影響要因

借地契約の更新を巡る際、地主だけでなく、借地人の土地の利用状況も非常に重要な要因として考慮されます。実際に土地をどのように使用しているか、その使い方が適切であるかなど、借地人の土地利用の実態は、契約更新の是非に大きく影響を与える要素となり得ます。

(1)土地の維持管理状況

借地人が土地を適切に維持・管理しているかは、更新の際の大きなポイントとなります。荒廃させている、または公序良俗に反する使用をしている場合、更新拒絶の理由となる可能性が高まります。

(2)土地の使用目的の変更

借地契約の際に定められた使用目的と異なる使い方をしている場合、これも更新の障壁となり得ます。例えば、住宅用地として借りた土地を商業目的で使用しているなど、契約内容との乖離があると問題となることが多いです。

(3)借地契約の履行状況

土地賃料の支払い遅延や未払い、その他の契約内容の違反がある場合、それは更新を拒絶する正当事由として評価されることがあります。

(4)土地の利用頻度や期間

長期間放置されている、またはほとんど使用されていない土地の場合、借地人の利用状況として更新に不利な要因となる可能性があります。

これらの要因を踏まえて、地主と借地人との間での契約更新の交渉や裁判が行われる場合、各事実の確認や証拠の収集が重要となります。適切な土地利用とその証明は、借地人にとって更新のカギとなる要素の一つであることを理解しておくべきです。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理

5 立退料(明渡料)の額とその決定要因:正当事由との関連性

立退料とは、借地契約の終了や建物の解体など、借地人が土地から立ち退く際に、地主から借地人へ支払われる補償金のことを指します。この立退料の額は、借地契約の更新拒絶の正当事由の判断にも関わる要素となるため、その詳細や決定要因について理解しておくことが大切です。

(1)立退料の基本的な考え方

立退料は、地主の土地を返還する際に、借地人が土地上に建てた建物や施設の価値を補償するためのものです。この価値は、建物の経年劣化や市場価値、施設の特殊性などを踏まえて決定されます。

(2)土地の使用状況と立退料

借地人の土地の使用状況や管理の仕方、土地の利用目的の変更などが、立退料の額に影響を与えることがあります。例えば、土地を適切に利用・管理している場合、立退料の額が上がる可能性が考えられます。

(3)正当事由と立退料の関連性

立退料の額やその決定要因は、更新拒絶の正当事由の判断に関連しています。高額な立退料が必要とされる場合、地主にとっては更新拒絶の正当事由として評価されることが多いです。

(4)地域や市場状況による影響

土地や建物の所在地、その地域の不動産市場の動向なども、立退料の額を決定する際の要因となります。特に、不動産価格が高騰しているエリアでは、立退料も相対的に高額となることが考えられます。

立退料の額やその決定要因を知ることは、地主と借地人双方にとって、借地契約の更新や終了時の交渉材料として活用できます。適切な立退料の額を事前に理解しておくことで、双方が納得のいく合意を形成する手助けとなるでしょう。
詳しくはこちら|借地の明渡料の相場|訴訟と交渉の違い|借地権価格・正当事由充足割合
詳しくはこちら|土地の有効活用・高度利用のための借地明渡|正当事由・明渡料

本記事では、なぜ借地契約の法定更新をとめる(更新拒絶)が難しいのかということの要点を説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地契約の終了、更新(明渡請求)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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