【境界確定訴訟の判決の効力(原則的に登記可能だが例外あり)】

1 境界確定訴訟の判決の効力
2 境界確定訴訟の判決の効力の基本
3 境界確定訴訟の運営の問題点と不当な認定リスク
4 不当な判決の効力の否定や制限
5 詐取判決の登記官に対する効力
6 境界の再現不能による判決の破棄

1 境界確定訴訟の判決の効力

境界のトラブルを解決する典型的な裁判は境界確定訴訟です。
詳しくはこちら|土地境界のトラブルの解決手続の種類や方法の全体像
境界確定訴訟では,最終的に裁判所が境界を特定(確定)してくれます。
これ自体は当然なのですが,実際にはその後の登記や公図の修正が行われるところまで完了しないとトラブルのリスクが残ってしまいます。
境界確定訴訟の後の登記では,原則として判決の内容どおりの登記がされます。
しかし,例外もあります。
本記事では,境界確定訴訟の判決の効力について説明します。

2 境界確定訴訟の判決の効力の基本

境界確定訴訟の判決の効力は,一般的な訴訟と違って,当事者以外の第三者にも効力を及ぼします。
登記官にも効力が及びます。
要するに,判決内容どおりの登記がなされることになります。
ただし当事者以外にも効力が及ぶというだけで,あらゆる人に効力が及ぶわけではありません。
別の境界確定訴訟の審理(裁判官)は拘束しませんし,また,一般的に既判力もないと解釈されています。

<境界確定訴訟の判決の効力の基本>

あ 判決の第三者効

公法上の境界は公的存在である
→第三者にも効力は及ぶ
※人事訴訟法24条1項類推;通説
※寳金敏明著『境界の理論と実務』日本加除出版2009年p515

い 登記への影響

原則として境界確定訴訟の判決は登記官を拘束する
例外的に登記官を拘束しないこともある(後記※1
一般的に否定する見解もある
※高知地裁昭和51年12月6日
※寳金敏明著『境界の理論と実務』日本加除出版2009年p515,516

う 別の境界確定訴訟の判断の拘束(否定)

境界確定訴訟の判決が認定した筆(地番)の位置関係について
→別の境界確定訴訟の認定判断を拘束しない
※最高裁昭和41年5月20日

3 境界確定訴訟の運営の問題点と不当な認定リスク

一般的な民事訴訟は効力が及ぶ,つまり利害関係を持つのは当事者に限定されます。
そこで,当事者の主張が最大限尊重されます(処分権主義・当事者主義)。
この点,境界確定訴訟の判決は登記官を含めた第三者にも効力が及びます(前記)。
そのため,当事者の主張や利害だけで判断することはできません。
理論的にはこのようになっているのですが,実際の境界確定訴訟の運営はこの理論とずれていると指摘されています。

<境界確定訴訟の運営の問題点と不当な認定リスク>

あ 境界確定訴訟の実情・問題点

現実には裁判官は,境界確定訴訟が第三者効まで有するという意識が極めて薄い
訴訟運営も所有権確認訴訟(などの一般の民事訴訟)と大差ない
当事者の主張・立証を尊重した認定をする傾向がある

い 馴れ合い訴訟による認定リスク

当事者全員の意図した境界が判決で認定(確定)される可能性がある
※寳金敏明著『境界の理論と実務』日本加除出版2009年p516

4 不当な判決の効力の否定や制限

境界確定訴訟では,当事者全員が物理的な状況と違う内容を主張すると,その主張どおりの判決がなされることもあります(前記)。
このような判決は,公法上の境界の特定としては不当といえます。
これに関して,不当な判決の一般論として,判決自体が無効となるとか,判決は適法であるが効力が制限(一部否定)されるということがあり得ます。

<不当な判決の効力の否定や制限(※1)

あ 詐取した判決自体の無効化

公序良俗に反する行為によって詐欺的に取得された判決について
判決自体が無効となることがある
※最高裁昭和43年2月27日;虚偽主張による公示送達

い 不当な判決の効力の制限

判決としては適法として
一方で,判決本来の効力を否定することもある
※最高裁昭和31年2月7日

5 詐取判決の登記官に対する効力

境界確定訴訟の判決が不当である場合,例外的に,判決内容どおりの登記がなされないこともあります。

<詐取判決の登記官に対する効力>

あ 登記官を拘束しない状況

(前記※1)のいずれかに該当する場合
→境界確定訴訟の判決は登記官を拘束しない

い 登記官の具体的対応

判決内容どおりの公図訂正・地積更正などの申請を却下できる
※寳金敏明著『境界の理論と実務』日本加除出版2009年p517

6 境界の再現不能による判決の破棄

境界の特定に不備があったという判決も実際にあります。
境界が現地で再現できなければ,トラブルは解決されません。当然,判決として意味をなしていません。
違法な判決として控訴や上告によって破棄されるものとなります。

<境界の再現不能による判決の破棄>

あ 再現不能の判決

判決内容の境界が現地に再現できない
主文不明確の違法となる
→判決自体は破棄されるものとなる

い 再現不能の具体例

主文には基点を用いて境界が表示されている
基点が現地のいずれの地点にあるか特定できない
※最高裁昭和35年6月14日

本記事では,境界確定訴訟の判決の効力について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に土地の境界(筆界)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の 弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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