【売買契約の成立時期・成立の判断基準】

1 売買契約成立の認定基準・目安
2 契約未成立と法的責任(原則)
3 重要事項説明と不動産売買の中止
4 契約交渉の破棄の責任(概要)
5 契約交渉の破棄の責任の具体例

1 売買契約成立の認定基準・目安

売買の交渉から契約成立に至るプロセスが曖昧になることがあります。
売買契約未満と言えるいろいろな書面について別に説明しています。
詳しくはこちら|買付証明書・売渡承諾書・仮契約書|記載事項・活用方法・法的意味
本記事では売買契約の『成立』の判断基準について説明します。
実務的な判断基準の目安をまとめます。

<売買契約成立の認定基準・目安>

あ 基本的事項

次のいずれかが実行された場合
→売買契約が成立したと判断される傾向がある

い 主要判断要素

ア (正式な)売買契約書の作成 次のような主要な事項がすべて含まれている
・代金支払時期
・引渡・登記移転時期
イ 相当額の手付金の授受 一定程度の金額であることが前提である
『手付金』の金額が特に低額な場合
→『優先的な交渉をする立場』を確認する趣旨と判断される

2 契約未成立と法的責任(原則)

契約が成立していない,という状況の法的な状況を整理します。

<契約未成立と法的責任(原則)>

あ 契約自由の原則

契約を締結するかしないかの判断は自由である
契約が成立していない場合
→法的責任は生じない

い 具体例

購入の意向を撤回した
→債務不履行になるわけではない
→『違約金・損害賠償責任』などは生じない

う 清算の発生

契約成立を前提とした金銭の授受があった場合
例;預り金
→交渉の中止の時点で返還義務が生じる

このように『法的に相互を拘束しない』状態となります。

3 重要事項説明と不動産売買の中止

ところで,売買契約に向けた交渉を中止させることを想定した制度があります。
不動産の売買や賃貸借の契約に宅建業者が一定の関与をした取引における重要説明です。
購入や入居を予定する者が慎重に,取引をする・しない,という判断をできるようにするための制度なのです。

<重要事項説明と不動産売買の中止>

あ 重要事項説明義務(概要)

宅建業者が不動産の取引に関与した場合
→一定の範囲で『重要事項説明』の義務がある
目的は『取引をするかどうかの判断材料の提供』である
詳しくはこちら|重要事項説明義務の基本(説明の相手方・時期・内容)

い 契約締結の断念

当事者が重要事項説明を受けた後に取引を断念することについて
例;売買契約を締結しない(断念する)
→もともと想定されている
→当然,違法ということはない

4 契約交渉の破棄の責任(概要)

以上ように,契約を締結するまでは交渉を中断・破棄しても原則的に責任は生じません。
しかし,例外もあります。
契約が成立していないのに法的責任が生じることもあるのです。
このような例外的な扱いについてまとめます。

<契約交渉の破棄の責任(概要)>

あ 基本的事項

契約締結に向けた協議が行われた
しかし契約締結には至らなかった
協議・交渉おいて特殊な事情・行為があった場合
→損害賠償責任が認められる可能性がある

い 責任の分類

『契約締結上の過失』と呼ばれる責任の1つである
詳しくはこちら|契約締結上の過失(全体)

5 契約交渉の破棄の責任の具体例

契約交渉を破棄したことで責任が生じる典型的な例を紹介します。

<契約交渉の破棄の責任の具体例>

あ 交渉プロセス

建物の売買契約に向けた協議・交渉が行われた
契約締結前に,買主候補者の意向による工事が行われた
例;外構工事や造作工事

い 具体的な工事の内容の例

ア テラスの設置工事イ 指定の色調での内装工事

う 結論・法的扱い

その後,購入しないことに決まった
→買主候補者には交渉破棄の責任が認められることがある

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