【ローン特約×ローン壊し|事例|買主の対応|担保設定拒否・保証人不足・転職】

1 ローン特約×ローン壊し|買主の対応・協力不足
2 別不動産への担保設定拒否→解除NG|事例
3 買主の意向or『客観的障害』による不承認|事例
4 買主の1名が連帯保証人を拒否→解除NG|事例
5 退職・転職による不承認×経緯・理由|事例

1 ローン特約×ローン壊し|買主の対応・協力不足

不動産売買でローン特約が設定されることは多いです。
融資の審査の際にいろいろな形で『買主の協力』が必要になります。
逆に,買主の対応が良くなかったために承認が得られなくなるケースもあります。
本記事では『ローン壊し』のうち『買主の対応』が問題となった事案を紹介します。

2 別不動産への担保設定拒否→解除NG|事例

融資において不動産を担保にすることは一般的です。
『担保として提供する不動産』は,当然審査結果に影響があります。
これについて問題となったケースを紹介します。

<別不動産への担保設定拒否→解除NG|事例>

あ 購入経緯

買主は別に不動産Bを所有していた
融資を受けて収益不動産Aを購入する計画になった
不動産A・Bを共同担保にする予定であった

い 売買契約締結

収益不動産Aについて売買契約が締結された
ローン特約が付いていた
条項には『共同担保』に関する記載はなかった

う 融資申込

買主は融資申込をした
『不動産Bの共同担保』を了解しなかった
融資は不承認となった

え 解除通知

買主はローン特約による解除を通知した
※東京地裁平成26年4月18日

<裁判所の判断>

融資の申込が予め想定された条件ではなかった
→ローン特約の適用を認めない
売主からの違約金請求が認められた
※東京地裁平成26年4月18日

3 買主の意向or『客観的障害』による不承認|事例

融資が不承認となった理由が問題になるケースは多いです。
単に『買主の意向』なのか『障害』なのかが争われたケースがあります。
ここでは概要だけをまとめておきます。

<急遽の出費→資力悪化→不承認|事案概要>

急遽の出費
退職金を前借りした
担保設定は可能であった→しかししなかった

『客観的障害』とは言えない

解除を認めなかった
※水戸地裁平成7年3月14日

この判例では『仲介手数料の請求』という形式でした。
そこで別の記事にこの判例の詳しい内容を記載してあります。
(別記事『仲介業者の責任』;リンクは末尾に表示)

4 買主の1名が連帯保証人を拒否→解除NG|事例

融資の審査プロセスで『保証人』が要求されることもあります。
ここで保証人を拒否して不承認となったケースがあります。
ローン特約による解除の有効性が争われた判例です。

<買主の1名が連帯保証人を拒否→解除NG|事例>

あ 売買契約締結

売買契約が締結された
ローン条項が付いていた
買主=A・Bの2名

い 融資申込

Aが住宅ローンを申し込んだ
Bが連帯保証人となることを要請された
しかしBはこれを断った
ローンは承認されなかった

う 解除通知

A・Bはローン特約による解除を通知した
※東京地裁平成10年5月28日

<裁判所の判断>

A・Bは融資承認が実現するよう協力する義務を負う
ローン不承認は『買主の帰責事由による』ものである
ローン特約による解除は認めない
※民法1条2項
※東京地裁平成10年5月28日

5 退職・転職による不承認×経緯・理由|事例

買主の『転職』が理由で融資が不承認となることもあります。
この場合は『転職・退職』の理由・経緯によって法的扱いが違ってきます。
ストレートに該当する判例はありませんが,問題となることは多いです。

<退職・転職による不承認×経緯・理由|事例>

あ 融資審査×給与明細

住宅ローンの審査での一般的な収入の資料
現在の収入に関する『過去3か月分』の給与明細
例;フラット35

い 転職×融資審査

転職後4か月以内の場合
→『給与明細3か月分』が用意できない
→融資承認を得られない

う 転職×ローン特約

転職が『買主の要因』と評価できる場合
→『ローン特約による解除』ができないこともある
※のらえもん『本当に役立つマンション購入術』廣済堂新書p93

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