【ローン特約×ローン壊し|事例|融資申込|金融機関の指定・ローンの選択】
1 指定の金融機関以外への融資申込→解除NG|事例
2 『都市銀行他』にはノンバンクを含まない|事例
3 ローンの種類の選択・仲介業者の関与|事例
4 融資申込金額=全額or他物件売却代金控除|事例
5 融資申込金額=全額or援助資金控除|事例
6 物件の状況を理由とした不承認→解除OK|事例
1 指定の金融機関以外への融資申込→解除NG|事例
ローン特約では買主が不承認を招く『ローン壊し』というトラブルがあります。
本記事では『ローン壊し』のうち『融資申込』が問題となった事案を紹介します。
ローン特約では『金融機関を指定』することも多いです。
この『指定』に関して問題が生じた判例があります。
<指定の金融機関以外への融資申込→解除NG|事例>
あ 売買契約締結
売買契約が締結された
ローン特約が付いていた
い ローン特約|金融機関特定
売買契約・重要事項説明書のローン特約の記載
→金融機関を特定する記載があった
『A銀行をローン特約の対象とする』
う 融資申込
買主は『B銀行』にローンを申し込んだ
融資は承認されなかった
え 解除通知
買主はローン条項による解除を通知した
売主は『金融機関が違う』ことを理由に認めなかった
お 買主の主張
『A銀行』という特定は錯誤により無効である
仲介業者には説明義務違反があった
※東京地裁平成22年9月9日
<裁判所の判断>
対象となる金融機関が明記されていた
→錯誤は認めない
仲介業者の説明義務違反もない
※東京地裁平成22年9月9日
2 『都市銀行他』にはノンバンクを含まない|事例
ローン特約における『金融機関の指定』の内容が争われた判例です。
<『都市銀行他』にはノンバンクを含まない|事例>
あ 売買契約締結
売買契約が締結された
ローン特約が付いていた
い 融資申込
買主が銀行に融資を申し込んだ
融資は承認されなかった
買主はノンバンクにも融資を申し込んだ
金利が高いため,買主はノンバンクへの融資申込を撤回した
う 解除通知
買主はローン特約による解除を通知した
え 売主の主張
売主は『ノンバンクからは融資を受けられたはず』と主張した
※東京地裁平成16年7月30日
<裁判所の判断>
ローン条項の文言は『都市銀行他』と記載されている
→これにはノンバンクは含まれない
ローン特約による解除を有効と認めた
※東京地裁平成16年7月30日
3 ローンの種類の選択・仲介業者の関与|事例
ローン・融資にも多くの条件・種類があります。
ローン特約において,ローンの種類が問題になることも多いです。
<ローンの種類の選択・仲介業者の関与|事例>
あ 売買契約締結
売買契約が締結された
ローン特約が付いていた
い 融資申込|ローンA
買主は融資申込をした
ア 70歳の時点を最終返済に設定するイ 連帯保証人は不要
融資承認が得られなかった
い 融資申込|ローンB
別のローンもあった
ア 75歳の時点を最終返済に設定するイ 連帯保証人が必要
買主は適切な連帯保証人を確保できなかった
買主はローンBは申込をしなかった
う 解除通知
買主はローン特約による解除を通知した
売主は解除を認めなかった
え 売主の主張
買主はローンBに申し込んでいない
仲介業者に相談すれば良かった
適切なローンの種類選択をアドバイスできた
※東京地裁平成9年9月18日
<裁判所の判断>
ローン申込に仲介業者が関与することは特約に含まれない
買主は融資承認に向けた真摯な努力義務を果たした
ローンの種類の選択について買主の帰責事由はない
→ローン特約による解除を認める
※東京地裁平成9年9月18日
4 融資申込金額=全額or他物件売却代金控除|事例
融資の申込では『希望する融資金額』を明記します。
当然この金額は融資審査の結果につながります。
『融資申込金額』について問題となった事例を紹介します。
<融資申込金額=全額or他物件売却代金控除|事例>
あ 購入経緯
買主は不動産Bを所有していた
不動産Bを売却して本件不動産Aを購入する計画であった
不動産Bの売却代金では一定額が不足する状態であった
買主は,不足部分について融資を利用する予定であった
い 売買契約締結
不動産Aについて売買契約が締結された
ローン特約が付いていた
う 融資申込
買主は金融機関に融資申込をした
融資希望額は『不動産Bの売却代金』を控除しない金額とした
融資承認は得られなかった
え 解除通知
買主はローン特約による解除を通知した
売主は『不動産Bの売却代金の控除』が前提であると主張した
※東京地裁平成24年4月27日
<裁判所の判断>
『不動産Bの売却代金を控除する』という合意は認められない
『全額の融資申込が拒絶されたこと』は『ローン特約』に該当する
→ローン特約による解除を認めた
※東京地裁平成24年4月27日
5 融資申込金額=全額or援助資金控除|事例
融資申込金額について問題となった別の判例です。
『資金援助の予定』が変わってしまったという事案です。
<融資申込金額=全額or援助資金控除|事例>
あ 購入経緯
買主は親から頭金の資金を援助してもらう予定だった
資金援助では購入資金として不足していた
買主は,不足分について融資を利用する予定であった
い 売買契約締結
売買契約が締結された
ローン特約が付いていた
う 融資申込
買主は金融機関に融資を申し込んだ
税務上の不利益から『生前贈与』が実現しない方向性となった
金融機関は『頭金の調達』を前提として審査する意向であった
金融機関は『不承認の見込み』を伝えた
買主は融資申し込みを撤回した
え 解除主張
買主はローン条項による解除を主張した
※東京地裁平成23年6月22日
<裁判所の判断>
買主の資力が不足していた
これが理由となり融資が実行されなかったと言える
ローン条項による解除は有効である
※東京地裁平成23年6月22日
6 物件の状況を理由とした不承認→解除OK|事例
融資不承認の理由は借主の経済力・資力ということが多いです。
一方で,購入予定の物件が理由となることもあります。
物件が理由で不承認になったケースについての判例です。
<物件の状況を理由とした不承認→解除OK|事例>
あ 売買契約締結
売買契約が締結された
ローン特約が付いていた
い 融資申込
買主は融資申込をした
融資は不承認となった
う 不承認の理由
融資不承認の理由は『物件の物的事情』であった
内容=次の点が不明・不審である
ア 訴訟提起を原因とする予告登記・抹消登記イ 短期間に会社・個人への所有権移転が何件もなされている
移転登記は,正当な売買以外の形態が多い
え 解除通知
買主はローン条項による解除を通知した
お 売主の主張
不承認の理由は『借受人適格=返済能力など』ではない
ローン条項の対象は『人的事情=属人的要素』に限られる
※東京地裁平成8年8月23日
<裁判所の判断>
融資承認拒否の理由は金融機関の裁量・判断である
『買主=融資申請者』が関与できない
ローン特約の対象は人的/物的事情の両方が対象である
→ローン特約による解除は有効である
※東京地裁平成8年8月23日